恐怖の逢びき

劇場公開日:

解説

姦通を通じて男女の偽善と恐怖を追求した、スペインの新鋭監督ファン・アントニオ・バルデムの作品。一九五五年カンヌ映画祭で批評大賞を得ている。脚本はルイス・F・デ・イゴア、台詞はバルデム自身が担当した。撮影はアルフレド・フライレ、音楽はイシドロ・B・マイツェギイ。主な出演者は「オリーヴの下に平和はない」のイタリア女優ルチア・ボゼー、スペイン映画、演劇界で著名なアルベルト・クロサス他、オテロ・トソ、カルロス・カサラヴィリア、ブルナ・コラなど。

1954年製作/スペイン
原題または英題:Muerte de un Ciclista
配給:新東宝=新外映
劇場公開日:1956年2月15日

ストーリー

マドリッド郊外の路上を疾走していた自動車が自転車に乗った男をひいた。車には密会を終えたジョゼ・マリ(ルチア・ボゼー)とピエール(アルベルト・クロサス)が乗っており、帰りを急いだため、誤って起した事故だった。ピエールはまだ生きていた男を助けようとしたが、ジョゼ・マリは目撃者がないのを知ると、瀕死の男を見捨てて、そのまま立ち去ってしまった。その夜、ジョゼ・マリの邸宅ではパーティが開かれた。彼女は夫のミシェル(オテロ・トソ)から素晴らしい腕環をプレゼントされた。その時友人のラファ(カルロス・カサラヴィリア)が、ジョゼ・マリがピエールとドライヴしているのを見たと言い出した。翌日の新聞に事故死が報ぜられた。ピエールは大学の助教授で、丁度試験の最中だったが、心の動揺から女生徒マチルド(ブルナ・コラ)をつい怒鳴りつけた。ピエールの神経的発作の為に落第したマチルドは卒直な勇気のある娘だった。彼女はピエールをエゴイストと攻撃したが、その言葉は彼には痛烈な響きで迫った。ジョゼ・マリはラファの執拗な目にいたたまれず夫に旅に出ることをせがんだ。一方マチルドの非難を聞いて良心の苛責に苦しむピエールは死んだ男の家を訪れた。残された家族は何も知らず、警察も犯人を追求していないことを知ると内心安堵の胸を撫でおろしながらも、一層自責の念に苦しめられだ。こうした二人の逢びきには恋の感覚も失われ、ただ暗い非難の言葉が互いの口から出るだけだった。ある日、宴会でジョゼ・マリはラファからすべての秘密を聞き出そうとしてピエールを呼んだ。酒に酔ったラファはミシェルに近づき彼の耳に何事か囁いた。そこへ警官がピエールを尋ねてきた。警官が来たのは、マチルドの事件から学生達がピエールの辞職を要求して騒ぎ出し、暴動鎮圧のためピエールを呼びにきたのであった。結局ラファは二人の関係以外のことは何も知らなかった。ピエールはジョゼ・マリと教会で会い自分は自首して法の裁きを受け、新しい人生に再出発しようと語った。彼はマチルドに既に辞表を托していた。ピエールとジョゼ・マリは自首する決意で、惨劇の場所に自動車でたちよった。突然ジョゼ・マリは、安楽な生活を失いたくない気持に襲われ、道端にたたずんでいたピエールの上に車を突進させた。暗い道をジョゼ・マリは夢中で車を走らせた。遠くに小さな光が見え忽ち近づいてきた。自転車だった。彼女はハンドルを反対に切ったため橋の欄干を破って車は河底に落ちた。滅茶滅茶になった自動車の中で、ジョゼ・マリは目を開いたまま死んでいた。

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