カラマゾフの兄弟(1957)
解説
ドフトエフスキー最後の作品である同名原作を、「真昼の暴動」の脚本、「黒い牙」の監督を担当したリチャード・ブルックスが、シナリオ化し監督する大作。「八月十五夜の茶屋」のジョン・アルトンが撮影、「Z旗あげて」のプラニスラウ・ケイパーが音楽を各々担当。「追想」のユル・ブリンナー、「白夜」のマリア・シェル、「リチャード三世」のクレア・ブルーム、「崖」のリチャード・ベースハート等の異色のキャストを揃えている。
1957年製作/アメリカ
原題または英題:The Brothers Karamazov
ストーリー
向こう見ずで激しい性格のドリトミイ・カラマゾフ(ユル・ブリンナー)は、自分の所属する連隊長の娘カーチャ(クレア・ブルーム)を前々から狙っていた。カーチャは5000ルーブルで買える。というのは連隊長が連隊の帳簿に5000ルーブルの穴をあけ発見されれば牢獄入りが確実、カーチャは父を救おうと決心したのだ。彼女は魅力的な姿をドミトリイの前に現わした。が、激しい情熱の持主で衝動的なドミトリイは、カーチャに5000ルーブルを渡したまま女には手をかけず帰した。そのため彼は債務不履行者として牢に入れられた。男の寛容さはカーチャを動かした。監房にドミトリイを訪れた彼女は恋に燃えていた。そのうえカーチャの祖母の遺産80000ルーブルが入り、2人は救われた。ドミトリイの父、フョードル(L・J・コップ)は肉欲的で地墜落な男。ドミトリイからも、その弟の知的なアヴァン(リチャード・ベースハート)からも嫌われていた。彼はドミトリイがカーチャと結婚すると聞いて喜んだ。それには理由があったが、こんな筋書きである。フョードルは欲情的なグルシェンカ(マリア・シェル)という女をつけ狙っていたが、彼女はドミトリイに気があった。ドミトリイがカーチャと結婚すれば、打算的なグルシェンカはカーチャと張り合ってドミトリイの負債を買い集め、それをカーチャに売って決済させるに違いない。そうなればグルシェンカは、その交渉に度々家を訪れてくるだろう、というわけだ。が、この企みはドミトリイに感づかれた。グルシェンカが計画に加担していると知ったドミトリイは急に乱暴な男となった。彼は怒りに燃えてグルシェンカに当たったが、逆に彼は女の虜となった。必ず戻ってくるだろうという確信をもつカーチャをよそに、ドミトリイはグルシェンカと結婚しようと考えた。しかし、この時グルシェンカにフョードルが求婚したことを聞いたドミトリイは、嫉妬に狂ってカラマゾフ家に駈けつけた。グルシェンカがいたらフョードルを殺すつもりで、彼は窓から家の中を覗いた。グルシェンカはいなく、フョードルは、ほっとして去ろうとしたが、その後から「親殺し」という叫び声が聞え、さらに去ろうとする彼をカラマゾフ家の召使スメルジャーコフが捉えた。ドミトリイは彼の腕をふりほどいて去りグルシェンカの許に帰った。グルシェンカは初めて愛の告白をし、2人の間に爆発的な情熱が燃え上がった。が、そこへ2人の警官が踏込んできた。フョードルが殺されスメルジャーコフの証言で犯人はドミトリイだというのだ。しかし真の犯人は、スメルジャーコフで、彼はフョードルが乞食に生ませた私生児で、自分の生を呪う余り父親を殺したのであった。ドミトリイの裁判が開かれた。見せかけだけの証拠と、女心の微妙さで今や愛情を憎悪に変えたカーチャの決定的な証言で、ドミトリイは有罪と宣告され、彼はシベリア追放と決まった。真相を知る者は幾人かあった。が、彼らは、ドミトリイとグルシェンカが、現在の受難をもって過去を贖罪し、幸福な未来を得るものと信じていた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- リチャード・ブルックス
- 脚本
- リチャード・ブルックス
- 原作
- ドストエフスキー
- 製作
- パンドロ・S・バーマン
- 撮影
- ジョン・アルトン
- 音楽
- ブロニスロー・ケイパー
受賞歴
第31回 アカデミー賞(1959年)
ノミネート
助演男優賞 | リー・J・コッブ |
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第11回 カンヌ国際映画祭(1958年)
出品
出品作品 | リチャード・ブルックス |
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