家庭教師(1974)
解説
水の都として有名なヴェニス(ヴェネチア)を舞台に、結ばれぬ男女の悲恋を描く。製作はジョヴァンニ・ベルトルッチ、監督はアルド・ラド、ジュゼッペ・ベルトの原作をベルト自身とアルド・ラドが脚本化。撮影はジュゼッペ・ランチ、音楽はエンニオ・モリコーネが各々担当。出演はジャンニ・モランディ、オッタヴィア・ピッコロ、アンジェラ・グッドウィン、ドミニク・ダレルなど。
1974年製作/イタリア・フランス合作
原題または英題:La Cosa Buffa
ストーリー
念願の大学へは入学したものの、生活するためにアルバイトに精を出さなければならず留年ばかりしているアントニオ(ジャンニ・モランディ)は、悪友のベニーといつも金のないことを嘆き、恋人がいないことを悲しんでいた。そんなある日、河の上のレストランで休んでいたアントニオは可愛い娘を見かけて胸をときめかせた。勇をふるって声をかけたのが相手に通じたのか、娘はやさしい微笑を返してくれた。彼女はマリア(オッタヴィア・ピッコロ)といった。あまりの可愛いさに、アントニオはもう一度会いたいと頼んだ。約束の日は雨だった。どしゃぶりの雨の中、アントニオはマリアを待った。あきらめて帰ろうとしたとき、ズブ濡れになりながらマリアがやってきた。家が厳しい彼女は図書館へ行くと嘘をついて、アントニオとの約束を守ってくれたのだ。わずか数分のデートだったが、別れ際アントニオは傘の中にマリアを引き寄せ、くちびるを重ねた。マリアの親には内緒で二人はたびたびデートを重ねたが、アントニオはマリアが大富豪の令嬢だと知って、自分の身とくらべてあまりの大きな差に、それ以上の発展にためらいを感じた。ある日、二人が逢っているのをマリアの父親に目撃されてしまい、以後マリアは母親(アンジェラ・グッドウィン)に外出を禁止されてしまう。二人が逢うためにはマリアの母親の監視つきでアントニオが彼女の家を訪れるしかなかった。マリアの家に出かけたアントニオは、母親に冷たく迎えられた。貧乏な男が金目当てで娘に近づいているという警戒心がありありとうかがえる応対だった。アントニオはこの恋をあきらめようとするが、マリアの励ましでせめて彼女の恋人としてふさわしい人間でありたいと、アルバイトを投げ出して再び大学に戻り、マリアの家と大学の中間にあるアパートに移った。数日後、マリアはアントニオの新しい部屋を訪れた。久しぶりの二人だけの逢いびきにかたく抱き合いマリアは全裸でベッドに横たわった。だが、アントニオはどうしてもマリアのすべてを奪うことができなかった。次の逢いびきのときも同じだった。一方、マリアはいつまでもおずおずしているアントニオの態度に不満を抱き、その日、お互い気まずい気持を抱きながら、二人は別れた。翌日、愛に悩むアントニオは、町で会ったハンガリー生まれの娘マリカ(D・ダレル)と知りあい一緒に遊び廻った。そのことで気が晴れたアントニオはマリアに詫びの電話を入れ、今度こそ大人のセックスをしようと約束した。そしていつものように二人はベッドに向かいあった。彼がマリアを抱き寄せると、彼女は少しずつ体を開いていった。そのとき、マリアの母親がドアをたたき、散々アントニオをののしると、マリアを連れ去った。そんなことがあった数日後、マリアはアパートを訪ねたが、アントニオはすでに部屋を引き払い、自宅に帰ったあとだった。一方、アントニオはマリアを忘れようとしていたとき、町中でばったりマリカと再会した。彼は誘われるまま、ホテルにいき、自然に彼女を抱いた。翌日、皮肉にもマリアから手紙が届いた。アントニオと別れるくらいなら死んだ方がましだという。彼はマリアの父に会いにいったが、百万リラやるから娘と別れるように、そして娘を本当に愛しているのなら君が消えるのが一番いいと冷たく突き離されてしまう。その帰り道、アントニオは小切手をちぎり捨てながらマリアとの恋が終わったことを悟った。そして自暴自棄になった彼は全財産をつぎ込んで指輪を買い、マリカに結婚を申し込んだが、断わられた。すべてが終わった。愛の希望に燃えた青春の中に、わずかな経験を通して傷つき疲れ果てたアントニオは、ようやく大人への道を歩き始めていた。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アルド・ラド
- 脚本
- アルド・ラド
- ジュゼッペ・ベルト
- 原作
- ジュゼッペ・ベルト
- 製作
- ジョバンニ・ベルトルッチ
- 撮影
- ジュゼッペ・ランチ
- 音楽
- エンニオ・モリコーネ
- 字幕監修
- 岡枝慎二