カストラート
劇場公開日:1995年6月24日
解説
18世紀のヨーロッパで、ボーイソプラノを維持するために去勢された歌手=カストラートの中でも伝説的な人物ファリネッリの生涯を、バロック調の荘厳な絵巻に仕立てた人間ドラマ。監督はベルギーのテレビで音楽関係の番組を手掛け、劇映画でも「仮面の中のアリア」「めざめの時」と、一貫して音楽を主題とした作品を発表しているジェラール・コルビオ。彼とアンドレ・コルビオの共同脚本を、マルセル・ボーリューが加わって脚色。製作はヴェラ・ベルモント、撮影は「仮面の中のアリア」「無伴奏『シャコンヌ』」のワルテル・ヴァンデン・エンデ、音楽監督・指揮・編曲は、古楽アンサンブル“レ・ラタン・リリック”を率いて世界的に高く評価されているクリストフ・ルセ。衣装は「可愛いだけじゃダメかしら」のオルガ・ベルルーティ。出演は本作で初の本格的主演を果したステファノ・ディオニジ、「小さな旅人」のエンリコ・ロ・ヴェルソ、「ミナ」のエルザ・ジルベルシュタイン、「愛と死と」のカロリーヌ・セリエ、「逃亡者」のジェローン・クラッペほか。
1994年製作/フランス・イタリア・ベルギー合作
原題または英題:Farinelli il Castrato
配給:ユーロスペース
劇場公開日:1995年6月24日
ストーリー
カルロ・ブロスキ(ステファノ・ディオニジ)は10歳の時に落馬事故で去勢された。8歳年上の兄リカルド(エンリコ・ロ・ヴェルソ)は弟の優れた音楽の才能に驚き、以来、兄が曲を書いて弟が歌うという関係が続いていた。英国宮廷の作曲家ヘンデル(ジェローン・クラッペ)はナポリの街頭で歌うカルロの声を聴いて驚嘆し、ロンドンに来るよう誘う。だが兄も一緒にという申し出は聞き入れられず、リカルドは契約を結ばせなかった。12年後、30歳となりファリネッリと名乗ったカルロはあらゆる場所で歌い、その超絶的な声の魅力は女たちを熱狂的させた。演奏旅行では弟が誘惑し悦びを与え、兄が種をまいて、2人で女を抱いた。ドレスデンでファリネッリは、アレクサンドラ(エルザ・ジルベルシュタイン)という若い女から、貴族オペラ座の窮状を救ってほしいと依頼され、兄とともにロンドンへ向かう。貴族オペラ座では、数ヶ月前からファリネッリの師であるポルポラ(オメロ・アントヌッティ)が、対立するコヴェント・ガーデン劇場の音楽監督を務めるヘンデルと競い合っていた。ファリネッリは貴族オペラの有力なメセナ(庇護者)であるマーガレット・ハンター(カロリーヌ・セリエ)と出会い、彼女の姪であるアレクサンドラに情熱的な愛を注ぐ。聴衆はファリネッリの声に熱狂し、貴族オペラ座の盛況ぶりとは裏腹に、コヴェント・ガーデン劇場は閑古鳥が鳴いた。だが、一方では兄の書いた凡庸なオペラでは弟は満足しなくなっていた。そのジレンマを感じ取ったアレクサンドラはヘンデルの楽譜を盗み出し、ファリネッリはそのアリアを歌うことを決意した。それは長年の兄弟の関係の終焉でもあった。リカルドは弟の心と自分のプライドを取り戻すため、未完のオペラの完成を決心する。貴族オペラの初日、ヘンデルは盗まれた楽譜を間違いなく歌えるものかとファリネッリを挑発し、さらに彼を動揺させるため、彼の去勢が事故ではなく兄の策略だったことを告げた。しかしファリネッリは絶望の淵から見事に歌いこなした。ヘンデルもその衝撃的な感動に浸って自身の負けを悟る。彼は2度とオペラを書くことはなく、ファリネッリも二度と舞台に立たなかった。3年後、スペイン国王フェリペ5世のためだけに歌うことを決意したファリネッリは、少しずつ心の安らぎを見いだしていた。そこへリカルドがついに書き上げたオペラ『オルフェオ』を携えて現れた。だが、弟は兄を許すことができず、リカルドは自殺を図った。アレクサンドラの愛が兄弟愛を蘇らせた。彼らはかつてのように、ひとりの女性を愛し合った。数カ月後、リカルドは弟と最後の共作の成果=アレクサンドラの身籠もった子供を残して宮廷を去った。
スタッフ・キャスト
- 監督
- ジェラール・コルビオ
- 脚本
- アンドレ・コルビオ
- ジェラール・コルビオ
- 脚色
- マルセル・ボーリュー
- 製作
- ベラ・ベルモン
- 撮影
- ウォルター・ヴァンデン・エンデ
- 美術
- ジャンニ・クァランタ
- 音楽監督
- クリストフ・ルセ
- 編集
- ジョエル・アッシュ
- 衣装デザイン
- オルガ・ベルルーティ
- 字幕
- 寺尾次郎
- 字幕監修
- 吉岡芳子
受賞歴
第67回 アカデミー賞(1995年)
ノミネート
外国語映画賞 |
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第52回 ゴールデングローブ賞(1995年)
受賞
最優秀外国語映画賞 |
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