過去を持つ愛情
劇場公開日:1956年11月14日
解説
暗い過去のため、愛し合いつつも結ばれずに別れ去った若き男女の悲恋物語。仏の現代作家ジョゼフ・ケッセルの小説から、「夜は我がもの」のマルセル・リヴェが翻案、「女性の敵」のジャック・コンパネーズが脚色、「ヘッドライト」のアンリ・ヴェルヌイユが監督を夫々担当。台詞はマルク・ジルベール・ソーヴァジョン。撮影は「他国者は殺せ」のロジェ、ユベール、音楽はミシェル・ルグラン。出演者は「ヘッドライト」のフランソワーズ・アルヌール、「巴里野郎」のダニエル・ジェラン、「太陽に向って走れ」のトレヴァー・ハワード、他にマルセル・ダリオ、子役のジャック・ムウリエール(首輪のない犬)など。オリジナル版は123分。
1954年製作/114分/フランス
原題または英題:Les Amants du Tage
配給:東和
劇場公開日:1956年11月14日
ストーリー
ピエール(ダニエル・ジェラン)は銃を肩に帰宅したパリ解放の日妻の不義を目撃し反射的に発砲、裁判で無罪となったものの自分で自分を許せず過去を忘れようとリスボンに流れ、運転手生活をし乍ら南米行きの機会を狙っていた。或る日、彼は自分の車にのせたことからカスリーン(フランソワーズ・アルヌール)を知る。彼女はもとパリの香水売り子、英国の貴族に見染められ、その夫人になったが、夫を自動車事故で失い孤独を旅にまぎらわせているという。一日、二人はナザレの浜に遊んだが、今でこそ貴婦人と運転手とはいえ、元は同じパリに住み、今また共に結婚生活に破れ孤独をかこつ身。二つの魂は互に相寄り、ロンドン警視庁のルイス(トレヴァー・ハワード)が彼女を追って現れなかったら二人は新しい未来を夢見つつ南米への恋の航路をたどっていたかも知れぬ。ルイスはカスリーンの夫の死は彼女の仕掛けたものと信じていたが証拠はなく、キメ手は彼女の自供だけだ。ルイスは彼とピエールの仲を知り、ピエールに近づき、彼女の過去の一切をアバいた。ピエールは動揺、彼女の本心を疑い、憤然として彼は一人で南米へ旅立つ決心をする。一方カスリーンは警察に出頭を命じられたが、どんな尋問にも負けなかった--彼に対する火のような恋がそうさせたのだ。だがピエールの心を知って、出航の前夜彼へのはなむけに真実を告白した。玉の輿にのり貴族の仲間入りしたものの周囲の冷い眼にたえかね離婚を申出たが、それには財産分与の撤回という条件。今更貧乏生活に戻ることも苦痛、夫の自動車の心棒が折れるように仕掛けたのだった。愛すればこその告白にピエールの心は変った。二人で出発しようと。彼女は喜んだ。だが当日、ルイスはピエールに彼女への疑いの心をかりたてた。ピエールがいまだ過去にこだわっているのを知ったカスリーンは遂に同航を断念、秘かに船を降りた。ルイスに附き添われて波止場を去るカスリーン。気づいたピエールは狂気のように呼んだが、今はむなしかった。
スタッフ・キャスト
- 監督
- アンリ・ベルヌイユ
- 脚本
- マルセル・リベ
- 脚色
- ジャック・コンパネーズ
- 原作
- ジョセフ・ケッセル
- 台詞
- マルク・ジルベール・ソーヴァジョン
- 撮影
- ロジェ・ユベール
- 音楽
- ミシェル・ルグラン