オーソン・ウェルズ イッツ・オール・トゥルー

劇場公開日:

解説

オーソン・ウェルズが42年に南米で撮りかけたまま未完に終わった半ドキュメンタリーのオムニバス映画を、撮影後40年後に発見された撮影フィルム(大部分は第三の挿話として構想されていた「筏の四人」)を基に再構成、その前後にこれ以外のフィルム断片と、ことの顛末を説明したドキュメンタリー部分が付け加えられている。再現とドキュメンタリー部分の監督にあたったのはマーキュリー劇団設立からRKO時代にかけてウェルズの助手だったリチャード・ウィルソン、批評家、弁護士で映画史関係のドキュメンタリーの専門家マイロン・マイゼル、批評家のビル・クローン。製作はフランス資本のレ・フィルム・バランシアガで、レジーヌ・コンキエと「中国、わがいたみ」のジャン・リュック・オルミエールが担当。ドキュメンタリー部分の新撮影はゲイリー・グレーヴァー。編集はデジタル編集システムのアヴィッド・メディア・コンポーザーを使用、同システムの開発を手掛けたエド・マークスが担当。音楽はチリ出身でラウル・ルイス監督作品などを手掛けるホルヘ・アリアガータ。42年のウェルズ撮影時のスタッフは撮影がテクニカラー社のウィリアム・ハワード・グリーン、のちにロバート・アルドリッチ監督とのコンビで知られるジョセフ・バイロック、「タブウ」でアカデミー賞受賞のフロイド・クロスビー、アレックス・フィリップス、「筏の四人」のパートを撮影したジョン・ファント。挿話のひとつ「わが友ボニート」は「極北のナヌーク」のロバート・フラハティの原案で、「恐怖への旅」のノーマン・フォスターが監督。製作はウェルズとウィルソン。

1993年製作/86分/アメリカ・フランス・アメリカ合作
原題または英題:It's All True: based on an unfinished film by Orson Welles
配給:松竹富士
劇場公開日:1995年8月11日

ストーリー

オーソン・ウェルズは、第二作「偉大なるアンバーソン家の人々」の撮影終了直後にブラジルに飛んだ。ブラジルでウェルズはリオのカーニヴァルの撮影に熱中、そのエネルギーの源流である貧民街ファヴェラを撮影しようとしてブラジルの独裁政権と衝突する。彼がブラジルに行く以前からメキシコでノーマン・フォスターに撮影させていた「我が友ボニート」は中断していた。ウェルズは第3の挿話「筏の四人」を撮りはじめるが、この貧民の英雄達を取り上げたことで政府との衝突は決定的になる。さらに筏のシーン撮影中に、自分たち自身の役で出演中の彼らのリーダー、マヌエル・“ジャッカル”・オリンピオ・メイラが鮫に喰われて死亡。ウェルズはそれでも最小限の機材で撮影を続行した。RKOでは首脳部が交替し、映画の中止が決定される。撮影フィルムは行方不明に。そして85年、このフィルムが再発見され、ほとんどの素材が残っていた「筏の四人」を中心に失われた映画の再現が始まった。「筏の四人」は『タイム』誌に載った実話に基づく。その日暮らしの漁師たちの暮らしは貧しい。ひとりの漁師が事故死し、家族は路頭に迷う。仲間たちは大統領に自分たちの窮状を訴えるべく海を渡って首都のリオデジャネイロを目指す。コンパスも発動機もない質素な筏で61日間をかけた決死の冒険、そして彼らはついにリオに到着し、英雄として迎えられた。「筏の四人」は50年の歳月を越えて甦ったが、他の二つの挿話のうち「ボニート」は未完、テクニカラーで撮影された「カーニヴァル」のフィルムはほとんど残っていない。映画はウェルズのこの失敗を教訓に少しは行動に気をつけないと、という言葉で終わる。

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