大いなる西部

劇場公開日:

解説

「友情ある説得」のウィリアム・ワイラー監督が、「西部の男」以来18年ぶりで監督した西部劇。サタディ・アヴニング・ポストに連載されたドナルド・ハミルトンの原作をジェームズ・R・ウェッブとサイ・バーレット、ロバート・ワイルダーの3人が共同で脚本化。撮影監督は「誇りと情熱」のフランツ・プラナー。カリフォルニア州ストクトン附近のドレイス牧場一帯と、モジャヴ砂漠がロケ地に選ばれ、広大な野外シーンが常に心してとり入れられている。音楽はジェローム・モロス。タイトル・デザインを「八十日間世界一周」「めまい」のソール・バスが受けもっている。出演者はワイラーと共にプロデュースもしている「無頼の群」のグレゴリー・ペックに、「ベビイドール」のキャロル・ベイカー、「黒い罠」のチャールトン・ヘストン、「野郎どもと女たち」のジーン・シモンズ、「楡の木陰の欲望」のバール・アイヴス、「軍法会議(1956)」のチャールズ・ビックフォード、チャック・コナーズ、メキシコ俳優アルフォンソ・ベザヤ等。製作ウィリアム・ワイラーとグレゴリー・ペック。

1958年製作/165分/アメリカ
原題:The Big Country
配給:松竹=ユナイテッド・アーチスツ
劇場公開日:1958年12月25日

ストーリー

1870年代のテキサス州サンラファエルに、東部から1人の紳士ジェームズ・マッケイ(グレゴリー・ペック)が、有力者テリル少佐の1人娘パット(キャロル・ベイカー)と結婚するためにやってきた。出迎えた牧童頭のスチーヴ・リーチ(チャールトン・ヘストン)は彼に何となく敵意を示した。スチーヴは主人の娘を恋していたのだ。途中まで許婚者を迎えたパットは、スチーヴを先に帰してジェームズと父の牧場に向かったが、途中で酒に酔ったハナシー家の息子パックたちに、悪戯をうけた。しかしジェームズは彼らを相手にしなかった。パットの父テリル少佐は大地主ルファス・ハナシーとこの地の勢力を二分し、争っていた。2人が共に目をつけている水源のある土地ビッグ・マディを、町の学校教師でパットの親友ジュリー・マラゴン(ジーン・シモンズ)が所有していた。彼女は一方が水源を独占すれば必ず争いが起こるところから、どちらにも土地を売ろうとしなかった。少佐は娘の婿にされた乱暴に対して、ハナシーの集落を襲い、息子たちにリンチを加えて復讐した。そんな少佐の態度にジェームズは相いれないものを感じた。彼は争いの元になっている土地ビッグ・マディを見て、女主人ジュリーに会い、中立の立場で誰にでも水を与え、自分でこの地に牧場を経営したいと申し出て彼女と売約契約をかわした。一方血気にはやるパットと父の大佐には、慎重なジェームズの態度が不満だった。水源地ビッグ・マディを手に入れて大佐に対抗するため、ハナシーはジュリーを監禁する挙に出た。ジェームズはメキシコ人牧童の案内で単身本拠にのりこみ、水源は自由にすると明言してジュリーを助け出そうとした。ハナシーの息子バックは、ジュリーに対する横恋慕からジェームズと決闘したが、卑怯な振舞いから父に射殺された。少佐とスチーヴの一隊がのりこんできて乱戦が始まった。そして、1対1で対決した大佐とハナシーは、相撃ちで共に死んだ。憎悪による対立と暴力の時代は終わった。今はジュリーの腕をとって、ジェームズは新しい我が家ビッグ・マディに、新生活を始めるため馬首を進めた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第31回 アカデミー賞(1959年)

受賞

助演男優賞 バール・アイブス

ノミネート

作曲賞(ドラマ/コメディ) ジェローム・モロス
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映画レビュー

4.0貴重な水源 ビッグ・マディ

2024年7月20日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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こころ

4.5ヘネシー親父が、主役を食ってるね。

2024年6月16日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

いい映画を観ると、エンディングで背中がゾクっとする。

本作もそうだった。東部男のマッコイが、西部の荒くれ者の中で、

自らの信念を、かなりの度胸で貫き通す。

二つのシーンが印象に残った。

テリル一派の部下たちが、ヘネシー一派との争いを無用な争いとし、

一度はボイコットするが、1人でも闘う姿勢の親分に結局は従う。

理屈よりも心で感じる、男たちを見た。

もう一つは、丸腰で直談判に来たマッコイを意気に感じる一方、

我が息子の不甲斐なさ情けなさから、息子を銃殺しながらもその息子を抱くシーン。

65年前の作品のようだが、カメラアングルや、音楽など、古さを全く感じないし、

男は、勇敢であれ、優しくあれ、公正であれ、とのメッセージが

伝わってきた。

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藤崎敬太

4.0正統派

2021年5月7日
スマートフォンから投稿

こういうてらいのない真正面の映画って最近ないですね。
ヤクザレ一家のお父さん、最後カッコいいです。
オスカー助演だと、納得。

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越後屋

4.0新時代のテキサスの夜明けを、対比する相関図で描いた濃密な人間ドラマ

2020年9月26日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、TV地上波

舞台は、南北戦争後の1870年代のテキサス州サンラファエル。アメリカ横断鉄道が開通した頃でもまだ近代化される前の古い西部の因習が強く、ジェームズ・ディーン主演の「ジャイアンツ」にある石油ブームの30~40年前になると見られる。東部から元船長のグレゴリー・ペックが婚約者のキャロル・ベイカーに会いに遥々訪ねることから物語が始まる。ペックの暴力否定の価値観が終始一貫した主題だが、拳闘の男の対決や旧時代の紳士の決闘のシーンも組み込まれた、見応えのある西部劇になっている。また、すべての登場人物の交錯した対比の相関図を展開させる、予想困難な面白さがある。東部と西部の物事の解決法の違いの非暴力と暴力。ベイカーを挟んだペックと牧童頭チャールトン・ヘストンの恋敵。水源のある土地ビッグ・マディの利権争いで睨み合うレリル家とヘネシー家。両家の親子関係にある世代対比。特にヘネシー家の父バール・アイブスと息子チャック・コナーズの愛憎劇が深く悲しい。そして、婚約者ペックに不信感を募らせるベイカーと徐々にペックの信念に共鳴し親愛の情に変わるジーン・シモンズの女性の比較。5名の脚本家によって練られた、それら登場人物の心境の変化が見事に描かれている。悠々としたワイラー監督の演出で描かれた広大なテキサスの大地を舞台に、濃密な人間ドラマが繰り広げられる。カメラワークやカメラアングルの無駄の無さや表現の深さ、カット繋ぎの自然さと緊迫感のメリハリ、そしてユーモアとシリアスのバランス。名匠ワイラーの演出美が素晴らしい。演技面では、アカデミー助演男優賞のバール・アイブスが抜きんでた存在感と演技力。ペックもシモンズもヘストンもコナーズもそれぞれに良い。ヘネシー家と比較して悪役に回るテリル家のチャールズ・ビックフォードとキャロル・ベイカーは少し損な役柄であった。
ラストのクライマックスの、一人谷に馬を進めるビックフォードを捉えたシーンでは、岩陰からヘストンが現れ、続いて数人の牧童の集団が追い掛けてくるのをワンカットで撮る。その緊張感を生む演出がいい。そして旧世代の対決の結末を俯瞰で捉えてアップカットを挟まない客観的な視点が、時代の終わりを冷静に印象づける。3時間に及ぶ長尺の大作だが、ワイラー監督の演出を堪能していれば、ダレルことなく観終えてしまう名作である。

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Gustav