噂の二人

劇場公開日:

解説

ウィリアム・ワイラーが「ベン・ハー(1959)」以来、2年ぶりに製作・監督した作品。リリアン・ヘルマンの「子供の時間」は同じワイラーの監督で戦前、「この三人」として映画化されている。脚色は「青春物語り」のジョン・マイケル・ヘイズ、撮影は「許されざる者(1960)」のフランツ・プラナー、音楽は「荒馬と女」のアレックス・ノースが担当。出演者はオードリー・ヘップバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームズ・ガーナー、ミリアム・ホプキンスなど。

1961年製作/アメリカ
原題:The Children's Hour
配給:ユナイテッド・アーチスツ
劇場公開日:1962年4月21日

ストーリー

カレン・ライト(オードリー・ヘップバーン)とマーサ・ドビー(シャーリー・マクレーン)は学生時代からの親友であり、共同で寄宿学校を経営していた。父兄からの信望も厚く、カレンの2年越しの恋人はこの地方の有力者ティルフォード夫人の甥である医者のジョー・カーディン(ジェームズ・ガーナー)だった。しかしカレンが婚約に踏み切った時、なぜかマーサは重い微笑で答えただけだった。ティルフォード夫人の孫娘メリーは病的なほどのわがまま娘で、学校でのしくじりに家へ逃げ帰り、そのまま学校へ戻りたくないばかりに祖母に訴えた。「カレンとマーサは同性愛なの!」と。噂はたちまち広まり、驚いた父兄たちは子供を引き取ってしまった。カレンとマーサはティルフォード夫人を訪問し名誉棄損で訴えたが潔白を証明することができないばかりか、かえって2人は町中の噂と嘲笑の中に身をさらさなければならなくなった。噂の2人は無人の学校にひっそりと暮らしていたが、ジョーですらかすかな疑いを持っていることを知ったカレンは婚約を解消してしまった。マーサはそれを知って心が激しく揺れるのを覚えるのだった。やがて孫娘メリーの嘘を知ったティルフォード夫人が謝罪に来た。カレンは久しぶりに空の青さをしみじみとした思いで仰いだが、ふとそこにいないマーサに気づき不安にかられて名を呼んだ。2階にかけ上がったカレンが見たのは、暗く閉ざされた部屋の中で自らの生命を絶ったマーサの姿だった。カレンはただ1人で野辺の送りを済ませ、今はもう見知らぬ人ばかりの町ででもあるかのように、後もふり向かずに去って行くのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第34回 アカデミー賞(1962年)

ノミネート

助演女優賞 フェイ・ベインター
撮影賞(白黒) フランツ・プラナー
衣装デザイン賞(白黒) ドロシー・ジーキンズ
美術賞(白黒)  
音響賞  

第19回 ゴールデングローブ賞(1962年)

ノミネート

最優秀主演女優賞(ドラマ) シャーリー・マクレーン
最優秀助演女優賞 フェイ・ベインター
最優秀監督賞 ウィリアム・ワイラー
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映画レビュー

4.0深い内容に再鑑賞が楽しみな作品の一つに…

2024年2月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

アメリカ文学と映画の関係を解説する書籍で
この作品が採り上げられおり、
鑑賞の切っ掛けに。

なにせ、監督があの「ローマの休日」や
「ベンハー」の巨匠ウィリアム・ワイラー
だったにも関わらず、恥ずかしながら
これまで認識外の作品だった。
しかし、キネマ旬報で第9位との高評価、
更には、なんと、原作の脚本が
「ジュリア」のリリアン・ヘルマン
と知って、ますます期待が高まる中での
初鑑賞となった。

事前の情報を読まなければ、
女同士の関係はビジネス上、
あるいは深い友情くらいにしか
感じなかったであろうとの前半。
しかし、後半になって、程度は別にして
同性愛的要素もあったことが匂わされ、
その結果として世間の糾弾を受け、
二人は社会的地位も失ってしまう
展開になって、更なる悲劇が。

ワイラー監督の2度目の映画化とのこの作品、
1作目では当時の社会的な制約で
二人のレズビアニズムを表現出来ず、
マーサは自殺もせず、
カレンはジョーとの結婚を匂わすとの
ハッピーエンドに満足しなかったための
再映画化だったとのこと。
ところが、2作目の上映時には
時代的にインパクト性を失っており
評価が芳しくなかった皮肉な結果に、
と冒頭の書籍にあった。

しかし、私には意味ある鑑賞となった。
カレンが一人で歩み始めるラストシーンは、
彼女がLGBTQ差別撤廃運動等、
社会運動のリーダーの象徴として
容易に想像出来たので。

前記の書籍では、
“モラル”と
“生物学的再生産性を目的とした…
人間関係から解放された「個人」という属性”
についての作品とあって、
まだまだ深い内容が織り込まれている
ようなので、
再鑑賞が楽しみな作品の一つとなった。

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KENZO一級建築士事務所

4.0【”人間の悪性から惹き起こされた負の連鎖。”同性愛者と誤解された二人の女性の姿を通し、社会のモラルを問うハードビターな物語。ラスト、一人毅然と上を向き歩くオードリー・ヘプバーンの表情に救われる作品。】

2023年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

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共感した! 2件)
NOBU

3.5まさか、こんなにビターな映画だとは!!

2022年8月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1961年(アメリカ)監督:ウイリアム・ワイラー。
原作はリリアン・ヘルマンの戯曲「子供の時間」

親友同士の若い女性マーサ(シャーリー・マクレーン)とカレン(オードリー・ヘップバーン)は、
夢だった女子寄宿学校を経営していた。
経営も軌道に乗り、わずかばかりの黒字が出た、そんな矢先。
手に負えない邪悪な生徒メアリーの聞きかじりの嘘。
その嘘を祖母に告げ口したことから、生徒が全員退学する事態に陥る。

舞台劇が原作らしい「会話劇」です。
緊迫感と先の読めない展開にドキドキしました。

マーサとカレンは名誉毀損で裁判で闘うことに。
裁判シーンはありません。
その結果を告げられるだけです。

更に深刻なのはマーサのカレンへの本心。
この事件をキッカケに、マーサみずからパンドラの蓋を開けてしまうのです。

玉虫色の決着も、無かったことにすることもしない2人。
マーサもカレンも、まったく自分を偽りません。

同性愛が罪だった時代。
マーサの決断。
30年後か?40年後だったなら?
時代の不寛容が悲しいです。

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琥珀糖

4.0大女優二人の舞台劇

2021年9月21日
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越後屋
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