動くな、死ね、甦れ!

劇場公開日:2025年8月23日

解説・あらすじ

旧ソ連出身のビターリー・カネフスキー監督が、自身の少年時代の記憶をもとに描いた青春ドラマ。収容所地帯の町で暮らす少年少女の過酷な運命を鮮烈かつ叙情あふれるタッチで描き、カネフスキーが当時54歳にして第43回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞した。

第2次世界大戦直後のソ連。強制収容所地帯となった極東の小さな炭鉱町スーチャンに暮らす12歳の少年ワレルカは、シングルマザーの母親に反発し、悪戯ばかり繰り返していた。同じ年の少女ガリーヤはいつもワレルカのことを気にかけており、彼が窮地に立たされると守護天使のように現れて助けてくれる。そんなある日、度を越した悪戯で機関車を転覆させてしまったワレルカは、逮捕を恐れてひとり町を飛び出す。

2017年、世界の名作を上映する企画「the アートシアター」の第2弾作品としてリバイバル公開。2025年、特集上映「ヴィターリー・カネフスキー トリロジー」にてリバイバル公開。

1989年製作/105分/ソ連
原題または英題:Zamri, umri, voskresni!
配給:gnome
劇場公開日:2025年8月23日

その他の公開日:1995年3月18日(日本初公開)、2017年10月7日

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

未評価 冷えた鉄と石で撮った映画

2025年9月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 頭でっかちの中二病のマニアが撮ったお芸術映画のタイトルに感じ、気おくれして、当初は観る気がありませんでした。しかし、ザラザラした肌触りのモノクロ予告編が強く印象に残ったので、恐る恐る映画館に足を運びました。

 終戦後間もないと思えるソ連極東の寒村が舞台です。抑留された日本兵や、スターリンの粛清にあった知識人らが集められた極貧の炭鉱の毎日を描いています。彼らが、今日一日を生きるためにのたうち回っている姿が続きます。それは、監督が幼い頃に見た光景なのだそうで、また、無実の罪で獄に8年間繋がれていたと云われる監督の沈潜した思いの詰まった日常なのです。

 主役を演じ、尋常ならざる眼光の少年は、ストリート・チルドレンとして暮らしているところをスカウトされたのだそうです。少年でありながら、我々に不快感と共に強い魅力を感じさせるのも、その生い立ちがあればこそなのでしょう。

 この少年だけでなく、映画そのものが乱暴で粗野で投げやりです。泥を丸めた団子を作って「さあ、食え」と突き出された様な思いがします。或いは、鉄と石で映画を作ったらこんなのが出来ましたと云えばよいでしょうか。遣り場のないエネルギーに溢れているのに、なぜかちっとも熱くなく、「冷えた灼熱の炎」とすら感じます。

 その一方で、「この監督はこの様にしか撮れなかったんだろう」と云う事が深く納得できます。それがよかったのかどうかは分かりません。ただ、僕なんかがどう評そうが、唾を引っ掛けられるだけ・・ そんな風な映画でした。これは参ったな。

  2017/11月 鑑賞

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La Strada

3.5 モノクロだからこそ見えてくる色がある

2025年9月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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LukeRacewalker

4.5 第二次世界大戦終戦直後のロシア極東の強制収容所と炭鉱の町に漂う場末感 そこに生まれた無鉄砲な悪ガキ少年とその幼なじみの少女の物語

2025年8月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

🎵土佐の高知のはりまや橋で坊さんかんざし買うを見た よさこい よさこい (『よさこい節』)

🎵月が出た出た 月が出た ア ヨイ ヨイ 三池炭鉱の上に出た (『炭坑節』)

🎵おどまぼんぎり 盆ぎり 盆からさきゃ おらんと ぼんが早よくりゃ 早よもどる (『五木の子守唄』)

この1989年ソ連映画(ロシア映画ではありません。ベルリンの壁が崩壊した年だけど、まだソ連は続いていたんですね)は第二次世界大戦終戦直後のロシア極東の強制収容所のある町を舞台にしているのですが、そこにいる旧日本兵の捕虜たちが劇中で上のような日本の民謡を歌います。おそらくは辛い作業をしながら、望郷の念にかられて歌っているのでしょう。日本民謡をこんなにもフィーチャーした外国映画は観たことがなかったのでとても新鮮に感じられました。

物語は炭鉱と強制収容所があるスーチャンという町を舞台に展開します。スーチャンは漢字で書くと蘇城で中国語を語源とする地名です。1970年代に現在のロシア語の地名 パルチザンスクに改称されたようです。この地名の推移でわかるように元々は中国の影響下にあることが多かった現ロシアの極東沿海地域でしたが、19世紀の中国清朝の衰亡期にロシア-清間で結ばれた北京条約で清からロシアに割譲され、その流れで現在まで来ているようです。現在のパルチザンスクはかなり小さい町のようで、私の持っている世界地図帳のロシア全体の地図では確認できず、中国東北部の地図で右端(すなわち東端)にようやく確認できました。ウラジオストクから東へ約170km、ナホトカから北へ約70km、その頃スターリンが君臨していたモスクワから見たら、ロシアの最果ての地だったことでしょう。ちなみにそこからだと、モスクワよりも東京のほうがはるかに近いです。近隣国の首都までの直線距離で比較すると、いちばん近いのは北朝鮮のピョンヤン、次に韓国のソウル、そして、東京、北京の順になります。ということで、スーチャンは東アジアの町ということになりますが、緑豊かで自然に恵まれているということもなく、この映画が全篇モノクロということもあり、映画内では荒涼とした無国籍風の風景が広がっているという感じでした。その無国籍風な風景に最初にあげた日本民謡がうまくフィットしたわけです。Wikipedia のパルチザンスクの項で出身有名人を見ると、この映画の監督のヴィターリー•カネフスキーの名前が唯一あがっていて、この映画に出てくる風景はカネフスキー監督自身の心象風景なのかもしれません。また、日本民謡はこの物語の主人公ワレルカ(演: パーベル•ナザーロフ)と同じように、監督自身が子供の頃に聞いていたのかもしれません。ワレルカは終戦直後に日本流にいうと小学校5〜6年生の感じでしたが、カネフスキー監督が1935年生まれであることと附合し、この作品には監督の半自伝的要素もあるかもしれません。

でも、まあこのワレルカというのはかなりの悪ガキです。母親も少しいかがわしい感じで父親はいません。で、絵に描いたように貧乏です。貧乏に関して言えばスーチャン全体がどうしようもなく貧乏で、強制収容所が域内にあるわけですが、町全体が強制収容所みたいで、そんな土地の風土病みたいな狂気も描かれています。

ワレルカにはガリーヤ(演: ディナーラ•ドルカーロワ)という幼なじみの女の子がいます。このふたりの交流がなかなかいいです。恋というには淡く幼い感じなのですが。

スーチャンにはシベリア鉄道の支線が走っていたようで、この作品ではそれが効果的に使われます。古今東西の映画内では列車にタダ乗りするシーンが何回も描かれてきたのですが、この作品にももちろん登場します。私はワレルカとガリーヤが並んで線路伝いに歩くシーンが好きです。

ということで、貧乏から卑屈になりながらも強がりを言って悪さを繰り返す少年とその少年をいつも気にかけていてピンチになると助けてくれるけなげな少女。ふたり並んで歩いた線路の先には……

リバイバル上映でしたが、私は初見でした。期待より、ずっとよかったです。この作品はヴィターリー•カネフスキー•トリロジーの3部作の最初の作品で、今回は3作品、一挙上映とのこと。続篇も観てみようと思いました。

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Freddie3v

4.5 生きるとは卑屈に陥りやすい

2024年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

貧しい中でもたくましくと言えば美談だが、ほとんどの人間が貧しさゆえに卑屈を抱えて生きている。
その苦しみこそが生の輝きの一部であるからこそ、救いなくどこまでも悲しい。

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ドラゴンミズホ

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