暗戀桃花源
劇場公開日:1995年7月22日
解説
同じ舞台で繰り広げられる羽目になった悲劇と喜劇が、やがていつの間にか交じり合い、調和し、様相を変えていくさまを描く寓意的な物語。86年に台北で初演されて以来、各国で好評を博した同名舞台を、その作・演出を手掛け、台湾演劇界のリーダー的存在である頼聲川が自ら脚色・初監督して映画化。製作は頼聲川が主宰する劇団表演工作坊のマネージング・ディレクターであり、私生活でも彼のパートナーである丁乃竺。撮影と照明は「欲望の翼」「恋する惑星 CHUNGKING EXPRESS」の杜可風、美術と衣裳は「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の張叔平が担当。音楽は日本のジャズ・ミュージシャンで「十九才の地図」の板橋文夫と「新・悲しきヒットマン」の梅津和時が参加している。主演は「恋する惑星 CHUNGKING EXPRESS」の林青霞、「エドワード・ヤンの恋愛時代」の金士傑、「恐怖分子」の李立羣と顧寶明ほか。92年台湾金馬奨最優秀脚色・助演男優賞他、各国の映画祭で数々の賞を受賞。
1992年製作/台湾
原題または英題:The Peach Blossom Land 暗戀桃花源
配給:キノ・キネマ
劇場公開日:1995年7月22日
ストーリー
現代の台北の劇場。ある劇団が『暗戀(秘めたる恋)』という芝居の稽古を始める。49年の内戦による混乱の中、上海で離れ離れになった男・江濱柳(金士傑)が、恋人の雲之凡(林青霞)と40数年の歳月を経て台北の病院で再会するというメロドラマだ。どうやら、この悲劇は演出家自信の物語らしい。彼は失われた夢を再建しようとするが、役者の演技に不満でイライラしている。ところが、リハーサルの最中、別の劇団が『桃花源』という喜劇の舞台稽古にやって来た。5世紀の詩人・陶淵明のユートピア寓話を基に、春花(丁乃筝)と愛人・袁老板(顧寶明)の不義を知り、それに悩む漁師の老陶(李立羣)が、桃の花の咲き乱れる美しい土地に紛れ込むという物語である。彼らは劇場側の手違いか、舞台を借りる予約が重なってしまっていた。両者は互いに譲らず、同じ舞台を半分ずつ使って競うように二つの劇を演じ始める。やがて悲劇と喜劇が混じり合い、正反対のように見えたテーマとスタイルが、不思議な調和を見せ始める。そして、人々の過去・現在・未来に横たわる中国大陸と台湾の微妙な関係が芝居の向こうに見え隠れする。そんな時、1人の若い女がどこからともなく現れ、存在の定かでない男・劉子驥(リュウ・ツチ=『桃花源』の登場人物で、ユートピアを探そうとしたが果たせずに病死してしまう)を捜して、舞台裏をさまよい始める……。