アミスタッド

劇場公開日:

解説

19世紀半ばに実際に起こった事件をもとに、アメリカの奴隷制度にあらがった勇気ある人々の闘いを、重厚な映像で描き出した歴史ドラマ。監督は「ロスト・ワールド ジュラシック・パーク」のスティーヴン・スピルバーグで、彼が設立したスタジオドリームワークスでの自身の第1回監督作品。製作総指揮は同社の社長でもある「メン・イン・ブラック」のウォルター・パークスとローリー・マクドナルド。「ファミリー・タイズ」などのTVシリーズを手がける製作のデビー・アレンが、10年以上も温めていた企画をスピルバーグのもとに持ち込んで実現した。脚本は『虚偽 シチズン・コーン』(V)のデイヴィッド・フランゾーニ。製作のコリン・ウィルソン、撮影のヤヌス・カミンスキー、音楽のジョン・ウィリアムス、美術のリック・カーターは、「ロスト・ワールド」に続いての参加。衣裳は「マルコムX」のルース・E・カーター。出演は「サバイビング ピカソ」のアンソニー・ホプキンス、「コンタクト」のマシュー・マコナヘイ、「セブン」のモーガン・フリーマン、「英国万歳!」のナイジェル・ホーソーン、「スターゲイト」のジャイモン・ハンスウ、「ブラス!」のピート・ポスルスウェイト、「ゲット・ショーティ」のデイヴィッド・ペイマー、「グッド・ウィル・ハンティング」のステラン・スカルスゲールド、「ピアノ・レッスン」のアンナ・パキンほか。

1997年製作/155分/アメリカ
原題または英題:Amistad
配給:UIP映画
劇場公開日:1998年2月28日

ストーリー

19世紀半ば。屈強な男シンケ(ジャイモン・ハンスウ)は、ライオンを倒したその時から村では英雄となった。しかし彼は間もなく拉致され、奴隷船テコラ号でハバナに運ばれる。スペイン人のルイズ(ジェノ・シルバ)とモンテス(ジョン・オーティス)に買われ、53人の仲間と共に鎖に繋がれ、プエルト・プリンシペ行きのアミスタッド号に乗せられた。長い航海で彼らは飢え、白人たちに殴打され、食糧が不足しそうだとわかって虐殺される者まであった。港を出て3日目、キューバ沖で荒れ狂う嵐に翻弄される船の底で、シンケはついに鉄の首枷を外すことに成功する。鎖から放たれ、武器を手にした彼らは、自分たちを苦しめてきた乗務員を次々に惨殺した。だが船を乗っ取って2ヶ月後、着いたところは故郷ではなくアメリカだった。舵取り役として生かしておいたルイズとモンテスに騙されたのだ。シンケと生き残った仲間39人は、コネティカット州ニューヘヴンで投獄され、海賊行為と謀殺の容疑で裁判にかけられた。しかし、スペイン船籍であるアミスタッド号の「積み荷」の返還を求めるスペイン女王(アンナ・パキン)、自分たちが買った奴隷に対する所有権を主張するルイズとモンテス、船を拿捕したことに対する謝礼としての所有権を主張するアメリカ人将校など、さまざまな横槍が入り、裁判は中断してしまった。一方、シンケたちの苦境を救おうとする者も現れた。奴隷解放論者の富豪・タパン(ステラン・スカルスゲールド)と、タパンの資本で新聞を発行する黒人・ジョッドソン(モーガン・フリーマン)である。ふたりは元大統領のジョン・クインシー・アダムズ(アンソニー・ホプキンス)に助力を求めるが拒否され、仕方なく法廷で会った若い弁護士ボールドウィン(マシュー・マコナヘイ)を雇った。裁判が再開され、検事ホラバート(ピート・ポスルスウェイト)は船から押収した武器を証拠として突きつけた。ボールドウィンの論点はただひとつ、シンケたちがどこで生まれたのかという点だけだった。法律では、奴隷の子として生まれた者のみ売買が許可される。もし彼らがアフリカで生まれたことが証明できれば、彼らは非合法に拉致されたことになり、船での殺戮行為は不問になる。ボールドウィンはルイズたちが船に隠しておいた積み荷記録を見つけ出し、法廷に提出した。それはテコラ号が、奴隷所有の禁止されている英国領・西アフリカでシンケたちを不法に売買した動かぬ証拠だった。だが、彼らを有罪にできなければ目前に迫った大統領選挙で奴隷解放論者と見なされ、大票田である南部の支持を得られなくなると恐れた現役大統領ヴァン・ビューレン(ナイジェル・ホーソーン)は、自分の息のかかった新しい裁判官を送り込んだ。ジョッドソンとボールドウィンはアフリカの言葉を話せる人間を探し歩き、ついにアフリカ生まれの英国軍人コヴィ(キウェテル・イジョフォー)を探し当てる。通訳を得て、ふたりは彼らがここに至るまでの悲惨な航海の日々を知り、またシンケの知性と望郷の念に心打たれる。その後も長い長い審理が続いた。Give us free!(俺たちに自由を!)。その悲痛な叫びは、シンケが初めて覚えた英語だった。だが判事はついに彼らに無罪を言い渡した。シンケたちは篝火を焚き、歌を歌って勝ち取った自由を祝ったが、喜びの時は短かった。大統領が最高裁判所に上告したのだ。そんな中、ついにアダムズが重い腰を上げる。アダムズは幾度もシンケと対話を繰り返し、ふたりの間の理解は深まっていった。法廷でのアダムズの論点は「過去からの声に耳を傾けよ」ということだけだった。自由の国・アメリカを築いた先人たち、この法廷にもその胸像が並んでいる建国の始祖たちの、自由を求めた闘いを決して忘れてはならないと。結果、裁判はシンケたちの無罪に終わり、彼らは故郷へ送り返されることになった。シンケが新たに得た自由、そしてアダムズらとの深い心の交流。だがシンケが長い船旅を経てたどり着いた故郷にはすでに彼の村はなく、彼の家族も消えていたのだった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第55回 ゴールデングローブ賞(1998年)

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀主演男優賞(ドラマ) ジャイモン・フンスー
最優秀助演男優賞 アンソニー・ホプキンス
最優秀監督賞 スティーブン・スピルバーグ
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映画レビュー

3.0力強く感動的な歴史ドラマだ。

2024年11月16日
PCから投稿

奴隷輸送船アミスタッド号で、反乱を起こした黒人奴隷たちが、殺人罪で訴追される。船はスペイン船籍のため、女王イザベル2世が奴隷の所有を主張。また、白人乗組員の生存者モンテスとルイス、船を捕獲した米国海軍の船長まで、奴隷の所有を主張する、、、。

騙されて連行された奴隷たちによる、血みどろの恐ろしい事件を契機に、国際問題に発展し、米国の司法制度が問われたアミスタッド号事件(1839年)を描く一大歴史ドラマだ。

台詞で語らせ過ぎとか、より短くスマートに描けたらと思った人がいたかも。良い映画だが、上映時間が長い(154分)。背景知識を知ったほうが、理解しやすい映画とも思う。

後の奴隷廃止運動の拡大をもたらした、歴史上の一大事を、ドラマティックに描き出す。舞台的な雰囲気があるし、人間味にあふれた、力強く感動的な映画であることは間違いない。

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瀬戸口仁

3.0奴隷貿易の衝撃的な映像化

2024年7月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

それでもだいぶマイルドにしてるはずだが、そういう意味では非常に価値ある映画。

序盤から中盤にかけて、やや大袈裟な演出が気になるが、そこはスピルバーグだけに目をつぶれる範疇で、重厚感がありながらも分かりやすくて良作感に胸膨らんだ。そして衝撃的な真実が明かされるのだが、そこまでがピーク。

後半の畳み掛けは、とにかく鼻につくほどスピルバーグ節に拍車がかかる。最後は実話調に締めくくるが、押し付けがましいヒロイック展開にうんざり。盛り上げに失敗してるように感じた。

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マルボロマン

3.0脚色過多で結構捻じ曲げられてるんだよね

2023年11月24日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
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つとみ

3.5この演説は自己満足

2023年11月8日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

1800年代。奴隷船で暴動を起こしたアフリカ系奴隷と、彼等を救おうとする人々の奮闘と友情を描いた物語。

スティーブン・スピルバーグが監督を務める、史実に基づいた作品です。
西洋でアフリカ系奴隷が過酷な運命を強いられたことは、一般的な知識として理解はしていましたが、細かい事柄迄知っていなかったことを痛感しました。
国による方針の違い、出自による権利の違い、そして南北問題。

物語は、それらに翻弄されながらも繰り広げられる法廷闘争を軸に、文化も言語も違う二人の青年・・・・弁護士とアフリカ系奴隷のリーダー・・・二人の友情を描きます。
現代の人権意識を映画に反映させず、その時代の価値観を軸にしたことは好印象でした。
また、エピローグのもの悲しさも秀逸。人種差別問題はここから100年以上深刻に続き、今でも根深く残っているのですから、ハッピーエンドの描き方の方が違和感を感じるところです。

ただ、アンソニーホプキンス演じるジョン・クィンシー・アダムズの演説は、強烈な蛇足でした。演説開始当初はどんな素晴らしい演説をするのか・・・と字幕に釘付けでしたが、徐々に飽きを感じ、最後は早送りをしたい衝動を抑えるのに必死でした。内容に乏しいうえ、余りにも長すぎて映画全体の私的評価を下げざるを得ませんでした。
史実ですから仕方ありませんが、一審でFIXすればとても良い終わり方だったように感じます。

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よし