トーク・トゥ・ハー

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

前作「オール・アバウト・マイ・マザー」でアカデミー外国語映画賞を受賞したアルモドバル監督、3年振りの新作。ドイツの舞踏家ピナ・バウシュの「カフェ・ミュラー」「炎のバズルカ」の舞台が登場、また、彼女と交際中のブラジルを代表するミュージシャン、カエターノ・ベローゾが歌う場面もある。劇中に登場する昔のサイレント映画「縮みゆく恋人」は、ムルナウ監督の「サンライズ」(27)を意識してアルモドバル監督が撮ったもの。

2002年製作/113分/スペイン
原題:Talk to Her
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
劇場公開日:2003年6月28日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第60回 ゴールデングローブ賞(2003年)

受賞

最優秀外国語映画賞  
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映画評論

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映画レビュー

4.0愛に定義はない

2023年7月26日
iPhoneアプリから投稿

いい映画でした。
さまざまな表現で人生や愛を語る。容易く言い表せないような文学の世界に迷い込んでしまいそうでした。

冒頭はピナ・バウシュの「カフェ・ミュラー」の舞台背景。女性が踊り進む中、テーブルやら椅子を男性が、女性が渡っていきやすいように、移動させるシーン。

それを観て涙するマルコを隣に座るベニグノが微笑ましそうに見つめる。

映画を最後まで見ると冒頭のシーンは暗喩的でもあります。

物語は、女闘牛士リディアとマルコの出逢いとアリシアとベニグノの交流が並行して進みますが、リディアは雄牛に突撃され植物状態に。アリシアは4年前に交通事故で昏睡状態に。互いのパートナーを見守るベニグノとマルコの間に友情も芽生えます。

ラストはアイロニーに満ちて、哀しくもあるのですが、アリシアとマルコの出逢いのスタートも感じさせます。

サイレン映画の「縮みゆく男」も秀逸。女性のヴァギナに埋没した男はベニグノの象徴だったのかも。

リディアが闘牛の試合に出る前の、衣装の着用が印象的。身体にぴっちり纏う姿はいくさに出陣する戦国武将のようでした。

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mitty

3.0達成されることのない営み

2023年6月18日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

それぞれ、こん睡状態に陥っている恋人(片方は?だけど)を持つ男性ふたりの物語。

エーリッヒ・フロムという思想家は「愛するということ」という著作の中で、
「愛」とは孤立の克服であり他者との合一を目的とする、と述べている。
そして、その営みは永遠に達成されることはないが、
だからと言って停止することもない、とも述べている。

本作では、この達成されることのない営みが、
孤独に悲嘆し畏怖する主人公と、倒錯的で偏狭的な看護人との対比で、
情感的に描かれている。

「オール・アバウト~」に続き、本作でも劇中劇が多用されているが、
特に印象的なのが、縮む男のサイレント映画。
本筋の孤立の克服をシニカルだが深刻に表現している。

ペドロ・アルモドバル監督作品はふたつめ。
なんというか、言語化できない、スレスレのところを突いてくる演出が真骨頂なのか、
観終った後の、良い意味での後味の悪さは独特。

本作のタイトルから、その辺への監督の拘りは伝わってくるし、
ラストシーン、バレー教師と主人公の会話なんかは、実に象徴的。

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えすけん

4.0アルモドバルの感性が光る

2023年4月25日
iPhoneアプリから投稿

とんでもないやばい作品でした

アルモドバル、恐ろしや…
ただ同時に、好きになりそうでもある

かなり一方的な映画ではあるのだが、
そこの気持ち悪さを見事に描きつつ、
微妙な機微も表現している。

もちろん、絶対に駄目なんだけど、
それを描くのが映画であり芸術であり。
それを分かりきった作家の渾身の一作って感じがしました。

これ、アルモドバル沼に落ちそうでやばい。

サイレント映画「縮みゆく女」
こちらのクオリティも半端じゃないです
こんなの挿入するとかありかよ。

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JYARI

4.5アイノカタチ

2023年2月7日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

はっきり言って、ベニグノは変態男だ。相手は承諾も拒否もできないのに、自分の気持ちだけで暴走する。ただ、彼の献身的な看護で、アリシアは目覚められたとも言える。彼女が自分の身に起こったことを、知っているのか、知ったとしてどう受け止めたのか、そこは描かれていないが、同性としては寒気がする。ベニグノくん、アリシアは人形ではありません。いくら愛してても、対等でなければダメなのですよ。

しかし、マルコがいることで、ベニグノの異常さが美化されているところがある。舞台を観て泣いてしまう、繊細な感性のマルコ。彼は決してベニグノを否定しない。それに、ベニグノが清潔で、ソフトで、知的に表現されていて、観ていて拒否反応が起こらない。一見普通の人だし、同僚からすれば、快く夜勤を代わってくれる、優しい人だっただろう。

闘牛士に女性がいるとは、初めて知った。リディアねえさん、めっちゃかっこいいやないかー。そして、闘牛場へ向かう前の支度がすごい。体にピッタリ合ってて、飾りがたくさん付いた、凝った衣装。死ぬかもしれない危険な仕事に臨む人を、華々しく包む。これはまさに死装束。とても美しかった。しかし、牛を殺す人が蛇を殺せないとは、解せませぬな。

ピナ・バウシュのダンスと、彼女と付き合ってたらしいブラジルのシンガー、カエターノ・ヴェローゾの歌が良かった。

歪んだ愛情でも、実らなくても、愛することは自分で止められない。愛にはいくつもの形がある、というメッセージだと思った。

BS松竹東急の放送を鑑賞。

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ぷにゃぷにゃ
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