劇場公開日 2003年6月28日

トーク・トゥ・ハー : 映画評論・批評

2003年6月16日更新

2003年6月28日より銀座テアトルシネマほかにてロードショー

この「濃さ」が眠っているエモーションを呼び覚ます

濃い。とっくり濃い。アルモドバルは顔も濃ければ映画も濃いが、近作はとみに醸造の度が増して、今回の濃度もすごい。でも底流に漂う空気は、しんしんと寒い。登場人物や仕掛けがカラフルな分、それぞれの孤独が深く見える。

ピナ・バウシュのダンス公演で偶然、隣り合わせた男2人は、愛する女性が共に事故で昏睡状態となり、同じ病院で再会する。看護士の男は、ジャーナリストの男に言う。「トーク・トゥ・ハー(彼女に話しかけて)。女性の脳は神秘的だから」。だがやがて、看護士の愛するバレリーナは植物状態であるにもかかわらず妊娠。事態は思わぬ方向へうねり出す。

語らず、答えず、眠りつづける女たち。バレリーナにしてはずしりと重量感のある体と、女闘牛士の筋肉質の体。それらを前にした男たちの、なんと無力で危ういこと。しかも彼らはよく泣く。前作「オール・アバウト・マイ・マザー」の“母は強し”に対して、こちらは“男は弱し”? 無償の愛から逸脱してしまう看護士の行為も、おぞましくも弱く悲しい。ダンス公演に始まり終わるこの物語は、それ自体が輪舞のようにあなたを誘い、日ごろ眠っているエモーションを呼び覚ましてくれるだろう。

(田畑裕美)

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