アトランティック・シティ

劇場公開日:

解説

ニュージャージー州のカジノの街“アトランティック・シティ”を舞台に、盗まれた麻薬がひきおこす犯罪に巻き込まれた初老の男とひとりの女の出会いと夢を描く。製作はデニス・エロー、監督は「さよなら子供たち」のルイ・マル、脚本はジョン・グアーレ、撮影はリチャード・シュプカ、音楽はミシェル・ルグランが担当。出演は「ローカル・ヒーロー 夢に生きた男」のバート・ランカスター、「さよならゲーム」のスーザン・サランドンほか。

1980年製作/フランス・カナダ合作
原題または英題:Atlantic City, U.S.A.
配給:シネセゾン
劇場公開日:1989年5月27日

ストーリー

禁酒法の下、闇取引きと不正賭博で繁栄したアメリカ、ニュージャージー州、東海岸沿いのカジノの街“アトランティック・シティ”にも近代化の波は押し寄せ、古き良き時代は過去のものとなりつつある。カジノのバーで働きながらジョゼフ(ミシェル・ピッコリ)の指導のもとでディーラーになる勉強をしているサリー(スーザン・サランドン)は、かつて故郷で結婚していたが、夫デイヴ(ロバート・ジョイ)が妹クリッシー(ホーリス・マクラーレン)と駆け落ちしてしまい、今は独り暮らし。ところがその二人がフィラデルフィアでくすねた麻薬を売りさばくため彼女のもとにやってきた。サリーは妊娠中の妹を野宿させるわけにもゆかず、渋々彼女のみ同居を許した。サリーの隣人で数字賭博の仲介を生活の糧にしている男ルー(バート・ランカスター)は、この街で40年間独り暮らしをしていた。彼は階下に住む関節炎で寝たきりの生活を送っているガールフレンドのグレース(ケイト・レイド)の世話をしていたが、秘かにサリーに好意を寄せていた。デイヴは街のデパートで、ルーが昔数字賭博を仕切っていたことを知り、地元のヤクザとの仲介を頼むため、自分の若い頃を美化する空いばりの小心者の彼をおだてあげ納得させる。しかし麻薬を現金にかえヤクザの事務所から出てきたルーが見たものは、何者かに殺されたデイヴの姿だった。大金を手にしたルーは戦慄すると同時に胸がときめくのを感じていた。彼は突然の夫の死に当惑するサリーを折りにつけ親身に世話をし、二人は次第に親しさを増してゆく。それまでサリーは隣にどんな人物が住んでいるのかさえ知らなかった。ディーラーの試験まで3週間というある日、デイヴがくすねた麻薬の本来の持ち主であるフィラデルフィアのヤクザがサリーとルーを襲い、サリーはバーをクビになる。そしてサリーを守ろうとしたルーは、そのヤクザ二人組を拳銃で射殺するのだった。自分の人生にとって最大の事件に遭遇した喜びに有頂天のルーにサリーは麻薬で儲けた金を盗み取り彼のもとを去る。ルーは彼女の行動を悟りつつもサリーを自由にし、彼は残りの麻薬を売りさばきグレースのもとに戻った。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第39回 ゴールデングローブ賞(1982年)

ノミネート

最優秀主演男優賞(ドラマ) バート・ランカスター
最優秀監督賞 ルイ・マル
最優秀外国語映画賞  
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映画レビュー

3.5パリのChampoで鑑賞

2023年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

狭い通りに日本で言うミニ・シアターが3軒並ぶ、パリでも屈指の(他の人は、そう思っていないかも)5区の映画街。それぞれの劇場がプログラムに趣向をこらし、金曜の夕方7時半になってもまだ明るい通りには人が溢れていた。
フランスを代表する監督の一人、ルイ・マルの回顧上映の第3期(アメリカ時代)の一本。
映画評論家による事前のプレゼンあり。
フランス人の視点から1980年のアメリカを見た、カナダとフランスの出資による映画。
1951年にアメリカ人がパリを描いた時「巴里のアメリカ人」には、憧憬に満ちていたのとは対照的に、シニカルな犯罪映画。但し、配役が秀逸!ルー・パスカルに扮するバート・ランカスターとサリー・マシューズを演ずるスーザン・サランドンが光る。
1980年のアメリカと言えば、国の勢いとしたら、一番落ち込んでいた時期では。大都市には犯罪が蔓延り、多くの市民は中心街から消えていた。大西洋に面したリゾート地であるアトランティック・シティもその例外ではなく、カジノに救いを求めようとする。モナコへ渡ることを夢見てディーラーの研修を受けるサリーと彼女を隣室から覗いていた老ギャングのルー。サリーと疎遠だった夫、デイヴが、駆け落ちして妊娠させてしまったサリーの妹クリッシーを連れて転がり込んで来たことで、物語が動き始める。しかも、フィラデルフィアでくすねた大量のコカインを手にしていた。当然、ヴィニーら組織に追われることになる。
コカインの換金の過程で、老いたルーが活躍し、元締めのフレッドの理解を得て、闇のバーを経営している馴染みの売人アルフィーにコカインを売りさばく。バート・ランカスターは、胸板が厚く、白いスーツがお似合いで、動作に品がある。あの「家族の肖像」の老教授が思い出される。サリーは美しい。スーザン・サランドンの演技は、バート・ランカスターに引けを取らない。撮影当時、特にルイ・マルと交際していたことが関係するのだろうか。
一方で、ルーは階下に住む足の悪い老女グレイスの介護をしている。その関係は、2014年に製作されたアメリカ映画「グランド・ブダペスト・ホテル」に出てきたコンシェルジュとマダムたちの関係と同じ。デイブが連れてきたクリッシーは足のマッサージができたことで、グレイスと仲良くなってゆく。これがいわば、裏のストーリー。
この映画には、アメリカがあの苦境から立ち上がって、現在の繁栄につながるようなシーンはあったろうか。中心街の大きなホテルを破壊撤去し(跡地には、新しいカジノができてゆく)、荒れ果てた中型アパートをリノベーションする。サリーがディーラーの仲間達と古い家を買い取り、修復しようとする場面もあった。
それにしても、ルイ・マルがアメリカをどのように捉えていたのか考えるには、前後の映画をもう少し見ないとわからないと思った。
この映画は、ベネチア国際映画祭の金獅子賞に輝いただけでなく、作品、監督、脚本、主演男優・女優の各分野で、アカデミー賞のノミネートを受けている。海を渡ってきたルイ・マルに対するアメリカ映画界の敬意の現れなのだろうか。

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