愛・アマチュア

劇場公開日:

解説・あらすじ

「シンプルメン」などで知られるニューヨーク・インディペンデント映画界の気鋭ハル・ハートリー監督が、フランスの人気女優イザベル・ユペールを主演に迎えて撮りあげた作品。ニューヨークの路上でひとりの男が倒れている。近くにいた女性ソフィアは、男の様子を見てその場から逃げ出す。記憶を失ったその男トーマスは、カフェで出会った元尼僧のポルノ作家イザベルに助けられる。一方、記憶を失う前のトーマスに酷い仕打ちを受けていたソフィアは、彼を殺したと思い込んでいた。犯罪組織の一員だったトーマスがある秘密を握っていたことから、今度はソフィアが命を狙われてしまい……。1994年、日本初公開(フランス映画社配給)。2014年、ハートリー監督作品4本を集めた特集上映で再公開。

1994年製作/106分/アメリカ・イギリス・フランス合作
原題または英題:Amateur
配給:ジェイ・ブイ・ディー
劇場公開日:2014年1月18日

その他の公開日:1994年12月23日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

5.0ここは何処? わたしは誰? 自分がだれなのか分からなくなった私たち=大都会の人々へのラブレター 倒れていた男と 謎の人々の物語

2025年4月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

·
《記憶喪失》の人に会った事がありますか ?

うちの弟、
自転車で転んで一時的に記憶喪失になった 希有な体験を持つ。
「自分が誰か」―というさいごの砦 は大丈夫であったが、その時は「自分がいま何故ここにいるのか」が本当にわからなかったのだと本人の弁。
彼は東北の山奥に山村留学をしていて、誰も通らない林道のつづら折り。コンクリートの道路で、そこで自転車で転倒。
「自分が何処にいるのか」が本当にわからなかくて
「物凄く怖かったのだ」と。

・・・・・・・・・・・・・・

本作、
倒れていた男 のみならず、出てくるみんなが何者なのか、いろいろ伏せられていて、正体が不明。
記憶とか、自己認識とか、
そして自分の存在証明って一体何なんだろう?って観ているこちらも思い始めてしまう仕組みなのだ。

イザベル・ユペールが、まだずいぶんと若くて。娘時代の出で立ちで可愛らしいのです。
官能小説に挑戦する 元修道女。水色の地味なワンピースを着ていて、設定がはっちゃけていますが、うぶな彼女を見るのは僕は初めてです。

そしてそんな彼女を励ますポルノ雑誌の編集長は、今でこそ三文雑誌を作っているが、実は社会派のジャーナリスト志望の硬派。
変な人たちはもっと出てくる、
カフエのヒステリー店員、
どうかしている婦人警官、
闇の税理士や修道院のシスターたち。

そして主人公となるのがポルノ女優のソフィアを追うマフィアのトーマスだ。
彼は頭を打って、目の前にいる女たちが自分の消すべき標的なのだとは認識出来ない。
《記憶喪失》とはいえ、自分を狙う殺し屋と暮らすのは、周囲にとっては とんでもないスリルだ。

・この人に目覚めてもらっては困る、
・この人の過去の記憶が甦ってくれては困る。
そう思いながら、遠ざけるべき男と一緒に居るわけだ。

・・・・・・・・・・・・

映画のコトバ
私と寝る?
名前も知らない俺と寝るのか
あなたも自分の名前を知らないじゃない
(バスルームで)。

謝るよ。
私に何を誤るの?わかってるの?
いや。分からないんだ。
何を謝りたいのか・・。でも謝る。
・・何か意味がある筈だろ?
昔の僕がどうあれ、これが今の僕だ。

↑↑この玄関の石段に座るイザベルと、そこに背を向けて腰をおろしている唐変木トーマスとの会話。
この雰囲気が大好きで何度もDVDを巻き戻した。

トーマスは全て忘れているが、トーマスの周りの人間はトーマスを知っているのがキモだ。

・・・・・・・・・・・

実際ね、僕たちは皆、故意であろうと無意識的であろうと《記憶喪失者》なのだと思う。
いっぱい忘れているだろう、
あれもこれも。
具体的に手を出さなかったにせよ
追われていたことも、人を追っていたことも。
大に小に、傷付けたことも、傷付けられたことも。
殺そうとしたことも、殺されそうになったことも。
恥を晒したことも有れば、他人の恥を見知ってしまったこともあった。

忘れてしまった過去と、忘れようとして記憶の底に深く沈めたしまった過去と。
そうなのだ、本作の《記憶喪失》の人間模様は、特異な設定ではあるが、《覚えている人との同居》の、いつもの私たちの毎日でもあるのだ。

ああ! この居心地の惡さ。
僕の恥ずかしい過去を知っている人たちと同じ世界に生きている事の、この辛さw

でも、自分でも分からない自分のことを「ええ、私はこの人のことをよく知っていますから」と答えてくれるイザベルや、誰かの口添えによって
僕たち、この殺風景な世界にやっぱり存在していた事になるのだな。

監督ハル・ハートリーによる
ニュヨークインディペンデントムービーでした。

イザベル・ユペール、
白い壁、水色のカップ、水色の瞳。ふわふわの金糸のような髪と細い首。
バイオレンスとセックスと人間喪失の大都会に、ダ・ビンチのルネサンスから現れたかのような神々しさ。

コメントする 3件)
共感した! 1件)
きりん

4.0シンプルな原題をアレンジした独自の邦題が味わい深い一作

2024年2月10日
PCから投稿

ケリー・ライカート監督の最新作『ファースト・カウ』の公開など、近年再び注目度が高まっているアメリカのインディペンデント映画群ですが、本作はその代名詞ともいえるハル・ハートリー監督の代表作の一つです。『トラスト・ミー』(1990)や『シンプルメン』(1992)でハートリー監督はすでにその実力を証明済みでしたが、これらの作品に強い感銘を受けたフランスの俳優、イザベル・ユペールが出演を熱望して本作の制作が実現しただけに、本作のユペールの存在感は尋常ではなく、ハートリー監督がユペールの姿をどのようにフィルムに焼き付けるべきか、膨大な試行錯誤を重ねたことが映像からもひしひしと伝わってきます。

本作を評価するうえでユペールの容貌のみに着目することは適切とは言えないと承知しつつも、それでもやはり、時にニューヨークの雰囲気から遊離してしまうような衣装の着こなしもこなすユペールの印象は、強烈と言わざるを得ません。

物語は、記憶喪失の男(マーティン・ドノバン)を、とある思惑でかくまった小説家(イザベル・ユペール)の視点で展開します。この二人を含めどの登場人物も、サスペンス映画の登場人物にしてはちょっと癖が強すぎたり、予期していなかった過去を引きずっていたりと、巨大な謎の解明というよりも(もちろんその要素もあるんだけど)、彼らの来歴が少しずつ明らかになる過程に緊迫感がこもっています。

現代は、単に『アマチュア(Amateur)』なんですが、そこに「愛」を加えた邦題は、内容のスリリングさを伝えているか、というとちょっと微妙ではあるんですが、ある意味内容をちゃんと踏まえた題名になっています。

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yui

4.0タイトルなし(ネタバレ)

2023年9月12日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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マサシ

3.5で?だれやねん

2021年7月13日
iPhoneアプリから投稿

思わず突っ込んでしまうが、女に対して身に覚えのない罪の多い男はいる訳で、そういうメタファーなのか。イザベルの妖艶さがとにかく際立つ。修道女という殻を脱ぎ捨てて、性に対してニュートラルなスタンスを取る。片手には電気ドリルで「いかしている」。エリナ・レーベンソンもシンプルメン同様、カッコよい。
コメディ要素があちこちにばら撒かれているが、こめられた笑いの量が脈絡なく、ここでそんな笑いいるか?などと見てること自体が楽しい。

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Kj