村の写真集
劇場公開日:2005年4月23日
解説
美しい自然が今なお豊かに残る徳島県の山間部を舞台に、一軒の古い写真屋の家族を通して、人と人との絆を描く感動の物語。監督は、脚本も手がけた三原光尋。頑固一徹の写真屋である高橋研一役に、「愛のコリーダ」の名優・藤竜也、孝役には「海猿」の海東健が起用され、反発し合う父子の微妙な関係を演じ合う。さらに徳島出身の俳優・大杉漣らを迎え、複雑に交錯する人の思いを豊かに表現。写真は、徳島県出身の写真家、立木義浩が監修している。
2003年製作/111分/日本
配給:ビデオプランニング
劇場公開日:2005年4月23日
ストーリー
近い将来、ダムの底に沈むことになった徳島県・花谷村。その村に、開店休業状態の古い写真店があった。店主の研一(藤竜也)は、昔気質の頑固者。妻はすでに亡くなり、次女の香夏(宮地真緒)とふたりで暮らしていた。長男の孝(海東健)は研一に反発し、東京で見習いカメラマンとして一人暮らし。長女の紀子(原田知世)もまた、数年前に家を出たまま長く消息がなかった。ある日、孝のアパートの留守番電話に残されたメッセージ、それが物語の始まりだった。消えていく村の美しさを、永遠に残したい。そう考えた村役場の野原が、孝と研一に、村のすべての家族写真を撮影し、「村の写真集」をつくることを依頼したのだ。恋人・リン(ペース・ウー)の勧めもあり、孝はしぶしぶ誘いを受ける。大自然の懐に抱かれた村を、父子は一軒一軒自らの足だけで回り、撮影をこなしていく。しかし、そこにはやはり深い溝があり、歩くふたりの影が重なることはなかった。緑濃き山間の険しい道を、黙々と歩く父。その背中を追う息子。父子の葛藤…、その中で撮影は続く。戦争で息子を失い、ひとり山に住む老婆。過疎の村で明るくたくましく働く人々。美しい山や川を生命力いっぱいに駆け回る子供たち。孝は村のさまざまな風景や人々、幼少期を共に過ごした旧友たちと出逢いながら、しだいに何かに気づき始めていた。そんなとき、研一が病に倒れる。体調が悪いことを隠して、撮影を続けていたのだ。孝は、研一が余命いくばくもないことを告げられる。臥した父に代わり、残された写真を撮る決意をする孝。しかし、どれほどシャッターを押しても、父のような生き生きとした写真はどうしても撮ることができない。落胆する孝に、研一の友人・進(大杉漣)が語りかける。「あいつは、東京に出ていったお前のことをごっつう喜んどったで。すごいやっちゃと。ほんなあいつに写真を教えたんは、この俺やと自慢しとった」。頑固な父の愛に気づき、孝は涙が止まらない。孝は最後の写真を、やはり父に撮らせようと研一を背負い、山道を一歩一歩と登り始める。