青の塔
劇場公開日:2004年7月24日
解説
少年犯罪の加害者家族の贖罪というテーマに挑んだ「カタルシス」で注目を浴びた坂口香津美の、幻の監督デビュー作。ひきこもり青年の内面世界と自立へのめざめが、生々しい描写で展開する。実際にひきこもり経験を持つ青年を主役に起用し、その母親役を、息子がひきこもりだったという女性が演じる。
2000年製作/146分/日本
配給:アルゴ・ピクチャーズ
劇場公開日:2004年7月24日
ストーリー
運河と化学工場のある街で、19歳の青年・透(中村佑介)は、マッサージの仕事をする母親(さわ雅子)と一軒家でふたり暮らししている。少年の頃、森の渓谷で起きた崖からの転落事故によって最愛の妹・小夜子(大塩晴香)を失った透は、青年となった現在でも、妹を助けられなかった呵責に苦しむ。そんな心の傷を抱えた透のナイーヴで繊細な心を、母は理解できない。母もまた愛する娘を喪失し、夫と離婚し、残された唯一の家族である息子との断絶に苦しんでいた。夕方、二人分の食事を作り、透の分をラップして居間のテーブルに置いて、母は仕事に行く。夜のマッサージの仕事は重労働で、過酷なものだった。母の無言の圧力に押しつぶされるように透は自分の部屋に「鍵」をかけ、昼夜逆転の孤独な「ひきこもり」生活を続けていた。母を含め、他者との接触を一切絶ち切り、母の作った食事を自分の部屋でとる。社会から認知されていない自分自身へのいらだち、将来への不安や葛藤…、孤独な日々からの逃げ場は唯一、亡き妹との幸福な記憶だけだった。他者からの侵入を拒み、いつ果てるとも知れない終わりのない日常。希望のない生活への閉塞感を、透は「翼の記録」と題したノートに書きつづる。「答」の出ない問いかけを延々と記録し、自分だけの世界に透は突入していく。ある冬の夜、透は無人の運河の船の中で倒れていた少女(前沢美沙)を見つけ、家に運ぶ。少女もまた、家庭や学校に自分の居場所を見つけられず、「性」を売ることでかろうじて生きる実感を得ていた。少女の持つ深い傷を、透は知ってしまう。透と少女、ふたつの孤独な魂が、真冬の運河で交錯する。
スタッフ・キャスト
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透中村佑介
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母・昌子さわ雅子
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少女・緑前沢美沙
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昌子の弟・健弦間和男
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小夜子大塩晴香
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昌子のマッサージの仕事仲間梅原愛
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昌子のマッサージの仕事仲間新井美沙子
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昌子のマッサージの仕事仲間杉山春江