酔っぱらい天国
劇場公開日:1962年2月4日
解説
「二人の息子」の松山善三のオリジナル・シナリオを「好人好日」の渋谷実が監督した社会風刺ドラマ。撮影も「好人好日」のコンビ長岡博之。
1962年製作/93分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1962年2月4日
ストーリー
日本鋼材の会計課長渥美耕三は十年前に妻を亡くし、一人息子の史郎との二人暮し。二人とも大変な大酒のみである。耕三は近所に住む長谷川きみが、夫の清の酒のことで相談にくると、「酒は静かにのむべきだ」と説教するが、彼自身はのむとがらりと人が変ってしまう。先日も、のみ友達であるトップ屋くずれの小池と二人で泥酔、酔っぱらい保護センターに保護される仕末だ。ある日、史郎は突然結婚すると言い出した。相手は看護婦をしている桜井規子だと言う。史郎はどうしても結婚したいため赤ん坊ができていると嘘まで言った。その一言に耕三は渋々、規子に会った。喜んだ史郎は友人の森山とのみ歩いた。森山はバー、ベンハーの女給節子に惚れていた。然し、節子はたまたまのみに来ていた東京ファイターズのエース片岡の側を離れない。面白くない森山は、些細なことから片岡と喧嘩を始めた。とめに入った史郎は、片岡のバットに撲られて病院にかつぎこまれた。耕三は片岡を告訴しようと考えるが、ファイターズの監督が耕三の会社の専務と友人である関係上、専務を通じて示談にされてしまった。史郎はその晩死んでしまった。悲しみのどん底に突き落された耕三は史郎の愛した規子を引取り、いずれ生れてくるであろう孫を中心に静かに余生を送ろうと考えていた。一方、片岡は史上八人目の完全試合を完成、球界の英雄と騒がれていた。規子は片岡に復讐を決意、片岡が自動車に乗る時、その右腕をドアーにはさもうとした。然しそれは失敗に終った。片岡は規子をナイトクラブに誘い、自分も悩んでいるのだと言った。それから片岡と規子は度々逢うようになった。規子は或る夜、片岡と一夜を共にした。耕三はそれを知り、また規子の妊娠も嘘だと知らされて全てに絶望。泥酔は毎夜のようになった、会社も休み、家の中にとじこもり史郎の写真を前に、毎日が酒びたりだ。史郎の写真に生ける者のように声をかけ笑った。そんな処に清が飛びこんできた。今では女房のきみが清の分まで酒をのみだし飲んで清にくってかかるのだ。完全なアルコール中毒になったというのだ。だが、耕三のこの有様をみては文句どころか逃げだしてしまった。小池は耕三に、泥酔して意識不明で行った犯罪は無罪になると、暗に、投手の生命である片岡の右手を傷つけるよう唆かした。耕三はナイフを買い、泥酔したあげくに片岡の右手を切ろうとして過って他人の手を切ってしまった。耕三と小池は警察にあげられた、あらかじめ耕三がナイフを買ったことが判り、殺人未遂で起訴されることになった。