野性の証明

劇場公開日:

解説

国家権力によって比類ない殺人技術を叩きこまれた男が、一人少女のなかに、自らの人間性の回復を託そうとする男の姿を描く森村誠一原作の映画化。角川映画第三弾。脚本は「日本の首領 完結篇」の高田宏治、監督は「人間の証明 Proof of the Man」の佐藤純彌、撮影は「順子わななく」の姫田真佐久がそれぞれ担当。

1978年製作/143分/日本
配給:日本へラルド映画=東映
劇場公開日:1978年10月7日

あらすじ

一九八〇年。過激派の人質となった米国大使を自衛隊特殊工作隊が救った。味沢岳史はその中でも抜きん出た優秀な隊員だった。味沢が東北山中の単独踏破訓練中、飢えと疲労の極限で、越智美佐子に出会った。彼女は獣のような味沢の惨状を見て、救助を求めて集落へおりて行った。その時、大量虐殺事件が発生した。五戸十二名が惨殺され、その中には彼女の死体もあった。駈けつけた北野刑事は、ハイキング中に凶行の巻添えにあったと断定した。集落唯一の生存者は、十三歳になる長井頼子という少女だけだったが、彼女は恐怖のあまり記憶喪失になっており、「青い服を着た男の人……」と呟くだけだった。月日が流れた。味沢は、事件後、除隊して羽代市で保険外交員をしていた。そして、記憶を失った少女、長井頼子を養女にして暮らしていた。羽代新報の記者、越智朋子は交通事故の現場にいた。沼底から引き上げた車の中に同僚の立山の死体があった。警察はホステスの明美と同乗していた立川の酒酔運転による事故として処理した。明美の死体は見つからなかった。朋子は事故とは思わなかった。この羽代市は大場総業会長大場一成に支配されており、立川はその不正を暴露するメモを持っていたからである。明美には六千万円の保険がかけられており、味沢はその夫、井崎と一週間前に保険の契約を済したばかりだった。井崎は大場の忠臣と言われる中戸組の幹部であった。事故現場で越智朋子を見た味沢はショックを受けた。彼女は美佐子に瓜二つの妹だった。保険金の支払いの責任を負わされた味沢は事件の調査を始めた。数日後、味沢は暴走族に襲われていた朋子を救い、二人の仲は接近する。暴走族のボスは大場の長男、成明である。警察に保存されていた事故車から提防のコンクリート片を見つけた味沢は、中戸組の提防工事現場で明美の死体を見つける。しかし明美の死体発見も、大場の圧力で井崎の単独犯行となった。一方、北野刑事は、大量殺人の犯人は軟腐病に犯され狂った頼子の父の犯行との結論に納得せず、必要に味沢を追った。その頃、不思議な予知能力を発揮し始めた頼子を専門医に診せたところ、その底に潜むものが、自分への憎しみであることを知らされた味沢は、来るべき時が来たのを感じ、頼子を事件のあった村に連れて行った。頼子は少しずつ記憶を取り戻したが、自分の家の前に来ると激しく拒絶反応を示した。その夜、味沢は朋子にすべてを語った。都落にたどりついた時、美佐子の死体を見て逆上した味沢は、自分の娘を殺そうとしている長井孫市を反射的に殺してしまったのだ。ある晩、「姉ちゃんが殺される」と頼子が予知して叫んだ。そして朋子の部屋に駈けつけると、そこには彼女の暴行された末に殺された無惨な姿があった。そして町を出ようとした味沢と頼子に大場の部下が襲いかかった。超人的な力で相手を倒す味沢を見て頼子は「お父さんを殺したのはこの人!」と叫んだ。その時、味沢の手首に手錠が食い込んだ。北野刑事だ。北野は二人を護送すべく、車で出発すると、味沢を監視していた特殊自衛隊員・渡会が立ちはだかった。三人を自衛隊の演習にまぎれて消そうとする計画だった。凄絶な死闘が繰り返され、頼子は味沢の胸の中で「……お父さん」といって息たえた。北野刑事は狂ったようにトラックを戦車に走らせ、自爆した。味沢は頼子を背負って、戦車の群に向かって進むのだった……。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

監督
脚本
高田宏治
原作
森村誠一
製作
角川春樹
坂上順
遠藤雅也
サイモン・ツェー
松田文夫
撮影
姫田真佐久
美術
徳田博
音楽監督
姫田真佐久
録音
紅谷愃一
照明
熊谷秀夫
編集
鍋島惇
作曲
大野雄二
製作担当
栗原啓祐
助監督
葛井克亮
記録
小山三樹子
スチール
遠藤努
池田岳史
テクニカルアドバイザー
四方義朗
全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

詳細情報を表示

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

  • 画像1
  • 画像2
  • 画像3

(C)KADOKAWA 1978

映画レビュー

3.0薬師丸ひろ子の可憐な存在感

2017年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

高倉健や松方弘樹など、名だたる大スター出演で、海外ロケで大規模なアクションも敢行した、角川映画の意欲作。薬師丸ひろ子のデビュー作で、骨太な男たちの中で可憐な存在感が光る。
元自衛隊の特殊部隊が殺人事件に巻き込まれた少女を引き取り育てるのだが、そのうち不穏な事件の影が忍び寄る。
脚本は荒っぽい部分もあるが、角川映画らしい迫力があって見応えはある。大野雄二の音楽も効いている。自衛隊、ミステリー、超能力要素といろいろ詰め込んで荒唐無稽の感はあるが、なぜか目が離せないエネルギーがある。
ヘリや戦車を動員したクライマックスの撮影は、カリフォルニアで行われたそうで、当時の日本映画としては破格のスケール。自衛隊の実機とは違うモデルではあるがその辺はご愛嬌。
主題歌の戦士の休息の痛切なメロディーが泣ける。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
杉本穂高

5.0本作がデビュー作とは思えない薬師丸ひろ子氏の演技力と人を惹きつける瞳の輝きの美しさ、透明な存在感はまさに奇跡的なキャスティング。

2025年4月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

新文芸坐さんにて「完全版 最後の角川春樹」出版記念『日本映画変革の時代・スペクタクル』(2025年4月14日~24日)と題した特集上映。本日2本目は『野性の証明』。

『野性の証明』(1978/143分)
前年の『人間の証明』(1977)をさらに上回る超スペクタクル大作。
血縁のない父娘の親子愛を主軸に前半は集落の集団殺人事件と地方都市を支配するコングロマリットの巨悪な不正を暴く社会派ミステリー、そして後半は自衛隊の特殊部隊や戦車部隊に立ち向かう一大スペクタクルアクションに広がる壮大なストーリーが実に1本で3本分ぐらいの贅沢な内容。

中野良子氏、夏木勲氏、三國連太郎氏、松方弘樹氏、丹波哲郎氏、ハナ肇氏、梅宮辰夫氏と主役級の豪華キャスティングも見どころですが、歴代最高の自衛隊特殊工作隊員という難役を圧倒的なスターの輝きと鍛え抜かれた体躯とキレのある動きで観客を納得させる高倉健氏、そして本作がデビュー作とは思えない薬師丸ひろ子氏の演技力と人を惹きつける瞳の輝きの美しさ、透明な存在感はまさに奇跡的なキャスティング。公開から50年近く経過しても彼女の衝撃的なデビューに匹敵する女優さんは思い当たりませんね。

前半の社会派ミステリーだけでも十分お釣りが来る内容ですが、後半の特殊レンジャー部隊の精鋭22名との死闘、カルフォルニアで撮影された実際の戦車やヘリコプターに立ち向かう味沢岳史(演:高倉健氏)はまさに時代を先取りした『ランボー』、画面に映し出される戦車、ヘリコプターも実物でミニチュア感はまるでなくハリウッド超大作と遜色がない大迫力ですね。

養娘・長井頼子(演:薬師丸ひろ子氏)の死の悲しみを抱きつつ、彼女を抱え数百の敵兵、戦車部隊に単身ピストル一丁で立ち向かうシーンで終わり、味沢の結末を描かないラストは高倉健氏の放つ存在感も相まって実に痺れます。
『プライベート・ライアン』(1998)のトム・ハンクス演じるジョン・H・ミラー大尉のラストも単身ドイツ軍の戦車にピストル一丁で立ち向かいグッときましたね。

またラストシーンに流れる町田義人氏の『戦士の休息』も実に心に響く、これ以上ない名曲。
『人間の証明』同様、初期の角川映画は音楽の使い方が実に効果的で相乗効果を産んでいますね。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
矢萩久登

1.5健さんと自衛隊との戦闘場面は無理がある

2025年4月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

カワイイ

ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
ねこたま

2.0ワイルドな角川映画

2024年11月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

今から46年前の作品で、最近BSで放送されたものを録画していたので、日本語字幕を付けて視聴しました。

終始シリアスな作品です。
主演は高倉健さん。不思議な能力がある少女を薬師丸ひろ子さんが演じました。他にも有名な俳優が沢山出演していました。
雑な出血シーンが多いのですが、戦車も登場してスケールは大きめです。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
どん・Giovanni