めし

劇場公開日:

解説

製作は「哀愁の夜(1951)」の藤本真澄。朝日新聞連載中絶筆となった林芙美子の原作から「哀愁の夜(1951)」の井手俊郎と「少年期」の田中澄江とが共同で脚本を執筆、「舞姫(1951)」の成瀬巳喜男が監督に当っている。撮影は「武蔵野夫人」の玉井正夫である。出演者は、「死の断崖」の上原謙と島崎雪子、「麦秋」の原節子と杉村春子、二本柳寛、「赤道祭」の杉葉子と山根壽子、「平手造酒(1951)」の山村聡、花井蘭子などの他に、進藤英太郎、大泉滉、風見章子、中北千枝子、小林桂樹などである。

1951年製作/97分/日本
原題または英題:A Married Life
配給:東宝
劇場公開日:1951年11月23日

ストーリー

恋愛結婚をした岡本初之輔と三千代の夫婦も、大阪天神の森のささやかな横町につつましいサラリーマンの生活に明け暮れしている間に、いつしか新婚の夢もあせ果て、わずかなことでいさかりを繰りかえすようにさえなった。そこへ姪の里子が家出して東京からやって来て、その華やいだ奔放な態度で家庭の空気を一そうにかきみだすのであった。三千代が同窓会で家をあけた日、初之輔と里子が家にいるにもかかわらず、階下の入口にあった新調の靴がぬすまれたり、二人がいたという二階には里子がねていたらしい毛布が敷かれていたりして、三千代の心にいまわしい想像をさえかき立てるのであった。そして里子が出入りの谷口のおばさんの息子芳太郎と遊びまわっていることを三千代はつい強く叱責したりもするのだった。家庭内のこうした重苦しい空気に堪えられず、三千代は里子を連れて東京へ立った。三千代は再び初之輔の許へは帰らぬつもりで、職業を探す気にもなっていたが、従兄の竹中一夫からそれとなく箱根へさそわれると、かえって初之輔の面影が強く思い出されたりするのだった。その一夫と里子が親しく交際をはじめたことを知ったとき、三千代は自分の身を置くところが初之輔の傍でしかないことを改めて悟った。その折も折、初之輔は三千代を迎えに東京へ出て来た。平凡だが心安らかな生活が天神の森で再びはじめられた。

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映画レビュー

0.5成瀬巳喜男って初めて見るかなぁ? 亡父はこの監督をおまり好んでいな...

2023年12月16日
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マサシ

5.0原節子

2023年11月14日
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人間が生活していくという事の実相が基本的かつ普遍的なレベルで感情をベタつかせる事なく、丁寧に描かれていた。

妹夫婦の旦那さん(小林桂樹)の「泊まりたい人は自分で布団を敷くことです」という一声からのショットがたまらない。
障子のガラスの向こうからのアングルで、障子の竪子が画面を真っ二つにして、両脇には襖、正面は障子、下は畳という全てが四角形で構成された窮屈さを感じさせる画面の中で女達がバタバタと動く様は圧巻だった。

しかし、そうした見事なカメラや細やかな演出や作品のテーマやなんかを全て飲み込んでしまう程に原節子の存在感が凄い。声を出して笑うシーンには思わず背筋が寒くなりゾッとした。

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抹茶

4.0諦めに近い男女間・夫婦間の機微が細やかに…

2023年8月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

ここのところ、
少しまとめて溝口映画を観ていたところ、
ある方から、
「俺に出来ないシャシンは溝口の祇園の姉妹と
成瀬の浮雲だ」との小津監督の言葉を
教えて頂いたことから、「浮雲」を含む
成瀬巳喜男作品の幾つかを観ることにした。

この作品、まだまだ封建的な、男は仕事、
女は家事との認識が支配する時代の話で、
基本的には良くあるホームドラマの延長線
にあるかの内容だ。
妻の日常など理解するすべのない夫が、
先ずは、彼女の上京を機に、
彼女の不在による日常生活の労苦を
思い知らされる展開なども描かれる。

その後、実家の母親からの
「あなたの夫は、頼もしい、大人しい、堅い」
との発言や、
また、路上で仕事をせざるを得ない
戦争で夫を亡くした子連れの友人を
目撃したことも描かれたので、
次第に二人はお互いの理解が進み、
よりを戻すことになるのだろうとの結末は
容易に想像させられた。

それでも、
二人のお互いの無理解は
その後も繰り返すであろうことも想像出来、
決して肯定的ではない諦めに近い
男女というか夫婦間の機微を
細やかに描いたこの作品、
身につまされるようでもあり、
己への心配がつのった。

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KENZO一級建築士事務所

3.5成瀬巳喜男&林芙美子。主演・上原謙&原節子

2022年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1951年。成瀬巳喜男監督作品。原作:林芙美子の絶筆で未完。
結末は脚本の田中澄江と井出俊朗により独自に考えられた。
林芙美子ならどんな結末になったことだろう?

1951年(昭和26年)とは、敗戦後6年のまだ混乱期だった筈だが、
日本人は貧しいながらも堅実に暮らしている。

映画は大恋愛で結婚した初之輔(上原謙)と三千代(原節子)夫妻が5年の結婚生活で、
三千代は所帯やつれし、倦怠期の真っ只中にいる。
そんな貧しい夫婦の生活に初之輔の姪の里子(島崎雪子)が、家出をして大阪にやって来て、
しばらく同居することになる。

今で言えば「新人類」みたいな雪子は、思ったことをズバリとクチにするし、
遠慮というものがない。
しかも初之輔に妙に馴れ馴れしいのだ。
里子の存在が、三千代の心に波風を立てる。

ただただ貧しい暮らしに、3食のメシの支度・・・こうして20年もあと30年も、
こんな詰まらない暮らしを続けて、ただ老いて死んでいくのか?
三千代の心に隙間風が吹く。

何のことはない、「82年生まれ、キム・ジヨン」の悩みと大差ない。

70年を経ても女の悩みは、あいも変わらず《自立》なのだから、ちょっと悲しいし、笑いたくもなる。

この映画は三千代の日常をスター女優の原節子の《所帯やつれ演技》が上手くて、
……履いていたスカートを脱いでアイロンを掛けるシーンなど、ビックリするほど、
昭和26年当時の、貧しさと家事の律儀さに溢れている。
女は結婚して家庭に入ったら、
「釣った魚に餌はやらない」
の男の言葉通り、たまのご褒美しか貰えないのだ。

来る日も来る日も掃除・洗濯・おさんどん!!

しかしこの映画は実に楽しい。
天下の二枚目と歌われた上原謙もタダの株屋の社員で稼ぎも少なく、
面白みもない上に妻の顔を見れば、
「腹減ったなぁ」が常套句なのだから笑わせる。

夫婦の倦怠期で97分、目一杯楽しめるのだから・・・素晴らしい演出術である。
(演じるのが、二杯目スター・上原謙と“永遠の処女”原節子・・・
・・この配役だけで、そのインパクトが恐ろしい程だ!!)

成瀬巳喜男監督のことを、ヤルセナキオ・・・とか書いてらっしゃるフレーズを
どなたかのレビューで読みました。
…………やるせ無き男……
…………やるせ泣き男……

言い得て妙である。

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琥珀糖