めし

劇場公開日:

解説

製作は「哀愁の夜(1951)」の藤本真澄。朝日新聞連載中絶筆となった林芙美子の原作から「哀愁の夜(1951)」の井手俊郎と「少年期」の田中澄江とが共同で脚本を執筆、「舞姫(1951)」の成瀬巳喜男が監督に当っている。撮影は「武蔵野夫人」の玉井正夫である。出演者は、「死の断崖」の上原謙と島崎雪子、「麦秋」の原節子と杉村春子、二本柳寛、「赤道祭」の杉葉子と山根壽子、「平手造酒(1951)」の山村聡、花井蘭子などの他に、進藤英太郎、大泉滉、風見章子、中北千枝子、小林桂樹などである。

1951年製作/97分/日本
原題:A Married Life
配給:東宝

ストーリー

恋愛結婚をした岡本初之輔と三千代の夫婦も、大阪天神の森のささやかな横町につつましいサラリーマンの生活に明け暮れしている間に、いつしか新婚の夢もあせ果て、わずかなことでいさかりを繰りかえすようにさえなった。そこへ姪の里子が家出して東京からやって来て、その華やいだ奔放な態度で家庭の空気を一そうにかきみだすのであった。三千代が同窓会で家をあけた日、初之輔と里子が家にいるにもかかわらず、階下の入口にあった新調の靴がぬすまれたり、二人がいたという二階には里子がねていたらしい毛布が敷かれていたりして、三千代の心にいまわしい想像をさえかき立てるのであった。そして里子が出入りの谷口のおばさんの息子芳太郎と遊びまわっていることを三千代はつい強く叱責したりもするのだった。家庭内のこうした重苦しい空気に堪えられず、三千代は里子を連れて東京へ立った。三千代は再び初之輔の許へは帰らぬつもりで、職業を探す気にもなっていたが、従兄の竹中一夫からそれとなく箱根へさそわれると、かえって初之輔の面影が強く思い出されたりするのだった。その一夫と里子が親しく交際をはじめたことを知ったとき、三千代は自分の身を置くところが初之輔の傍でしかないことを改めて悟った。その折も折、初之輔は三千代を迎えに東京へ出て来た。平凡だが心安らかな生活が天神の森で再びはじめられた。

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映画レビュー

3.5成瀬巳喜男&林芙美子。主演・上原謙&原節子

2022年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

1951年。成瀬巳喜男監督作品。原作:林芙美子の絶筆で未完。
結末は脚本の田中澄江と井出俊朗により独自に考えられた。
林芙美子ならどんな結末になったことだろう?

1951年(昭和26年)とは、敗戦後6年のまだ混乱期だった筈だが、
日本人は貧しいながらも堅実に暮らしている。

映画は大恋愛で結婚した初之輔(上原謙)と三千代(原節子)夫妻が5年の結婚生活で、
三千代は所帯やつれし、倦怠期の真っ只中にいる。
そんな貧しい夫婦の生活に初之輔の姪の里子(島崎雪子)が、家出をして大阪にやって来て、
しばらく同居することになる。

今で言えば「新人類」みたいな雪子は、思ったことをズバリとクチにするし、
遠慮というものがない。
しかも初之輔に妙に馴れ馴れしいのだ。
里子の存在が、三千代の心に波風を立てる。

ただただ貧しい暮らしに、3食のメシの支度・・・こうして20年もあと30年も、
こんな詰まらない暮らしを続けて、ただ老いて死んでいくのか?
三千代の心に隙間風が吹く。

何のことはない、「82年生まれ、キム・ジヨン」の悩みと大差ない。

70年を経ても女の悩みは、あいも変わらず《自立》なのだから、ちょっと悲しいし、笑いたくもなる。

この映画は三千代の日常をスター女優の原節子の《所帯やつれ演技》が上手くて、
……履いていたスカートを脱いでアイロンを掛けるシーンなど、ビックリするほど、
昭和26年当時の、貧しさと家事の律儀さに溢れている。
女は結婚して家庭に入ったら、
「釣った魚に餌はやらない」
の男の言葉通り、たまのご褒美しか貰えないのだ。

来る日も来る日も掃除・洗濯・おさんどん!!

しかしこの映画は実に楽しい。
天下の二枚目と歌われた上原謙もタダの株屋の社員で稼ぎも少なく、
面白みもない上に妻の顔を見れば、
「腹減ったなぁ」が常套句なのだから笑わせる。

夫婦の倦怠期で97分、目一杯楽しめるのだから・・・素晴らしい演出術である。
(演じるのが、二杯目スター・上原謙と“永遠の処女”原節子・・・
・・この配役だけで、そのインパクトが恐ろしい程だ!!)

成瀬巳喜男監督のことを、ヤルセナキオ・・・とか書いてらっしゃるフレーズを
どなたかのレビューで読みました。
…………やるせ無き男……
…………やるせ泣き男……

言い得て妙である。

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琥珀糖

4.0【原作者の林芙美子は、原節子の起用に対し”美しすぎる。全く原作のイメージと異なる・・”と反対したが、”遣る瀬泣き男”じゃなかった、成瀬己喜男が主役に起用し、原節子の第二期黄金時代を彩った作品。】

2021年3月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■感想

・確かに、林芙美子の懸念は分かる。
が、それ以上に、
 ”一年365日、同じ朝、夜が来る・・”
 と呟く、三千代(原節子)の積り積もった専業主婦の鬱積した気持ちと、奔放な従妹の里子(島崎雪子)の姿との生き方との対比が、鑑賞側に伝わってくる。
 三千代の夫、岡本初之輔(上原謙)は、証券会社で働く実直な男なのであるが、三千代への言葉は、”おい、めしまだか・・””腹が減った・・”である。
ー 時代的に、当時の男は、そんなことは言わないのであろうが、
 ”もうちょっと妻に対する感謝の言葉を言えよ!”
 と昭和後期生まれの男は思ってしまったのである。ー

・そして、不満が募った三千代は、里子とともに東京の実家に暫く戻るのであるが・・。
里子に対して、正しき言葉を投げつける信三(小林桂樹!)の姿が小気味よく・・。

・けれど、一人の生活になり、初めて妻の有難さに気付いた岡本は、出張と称して三千代を迎えに来る。
ー 二人で、カフェに入った際に、最初に妻のグラスにビールを注ぐ岡本の姿が印象的である。-

◆そして、原節子さんは今作と「麦秋」により、昭和24年に続いて、昭和26年に2度目の毎日映画コンクール女優演技賞を受賞した。
 キネマ旬報のベストテンで、「麦秋」が一位、今作が二位を獲得した。
 「麦秋」を観たいものである。

<暫く前に、石井妙子著の「原節子の真実」というドキュメンタリー作品を読んだ。
 それまで、私は原節子さんと言えば、小津安二郎監督作の、数作しか鑑賞していなかった。
 これから、機会があればこの大女優さんの他の監督作品を少しづつ、観たいと思っている。>

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NOBU

4.0・上原謙は腹減った、眠いしか言わないけどなぜか憎めない。最後のシー...

2020年11月29日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

・上原謙は腹減った、眠いしか言わないけどなぜか憎めない。最後のシーンでも下駄履いてフラフラしてビールがうまいとか言ってて笑った。
・原節子が女の幸せについて答えを得てハッピーエンドみたいになってたけど、現代の人からしたら?な終わり方だと思う。
・靴を盗まれたり、服を誂えたりする時代。
・浦辺粂子の存在感がよい。

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K

4.0リアル

2020年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 戦後混乱期を経て、給料は安いながらもつつましく生活。しかし、そろそろ倦怠期。里子という住人が増えただけで食事の心配やつきっきりで看病する夫にやきもきする妻。

 東京へ里子を送りに行ったり、実家に帰ったり、同級生に会ったりして、現在の夫婦生活を考える三千代だったが、最終的には妥協だったのかな?夫の優しさか・・・小悪魔的存在の島崎雪子がとてもいい演技だけど、原節子はプンプンしてばかりでこちらも嫌な役だったろうな。

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kossy
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