マルタイの女

劇場公開日:

解説

殺人事件の現場を目撃してしまった女優が、身辺保護の刑事に守られながら困難を乗り越え、裁判で証言台に立つまでの姿を描いた社会派コメディ。監督・脚本は「スーパーの女」の伊丹十三で、これが監督としての第10作目だったが、映画が公開された後の97年12月20日に突然の飛び降り自殺をしてこの世を去ったため、同時に遺作ともなった。撮影は「スーパーの女」の前田米造が担当している。主演は伊丹映画全作品に出演している「スーパーの女」の宮本信子。共演に「瀬戸内ムーンライト・セレナーデ」の西村雅彦、「さすらいのトラブル・バスター」の村田雄浩ほか。「ラヂオの時間」と併せて西村が本作でキネマ旬報助演男優賞を受賞した。タイトルにもなっているマルタイとは、警察用語で身辺保護の対象者を意味し、92年の「ミンボーの女」の公開直後に伊丹が暴力団の男たちに斬りつけられた事件が起きた際に、伊丹自身と夫人の宮本信子が、実際にマルタイとなった経験をもとに本作が作り上げられた。

1997年製作/131分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1997年9月27日

あらすじ

わがままで有名な女優の磯野ビワコは、ふとしたことから弁護士夫婦が殺害される現場を目撃してしまい、それに気づいた犯人に殺されそうになったが、危ういところで助けられた。逃走した犯人は殺された弁護士と対立していたカルト宗教集団真理の羊の一員らしく、警察の事情聴取を受けたビワコは、殺到したマスコミを相手に会見を行い、裁判で証言台に立つことを約束する。重要証人となったビワコの身を守るため、警察は彼女をマルタイと呼ばれる身辺保護対象者とし、立花と近松のふたりの刑事をガードに送り込んだ。ふたりの刑事はビワコのマンション、仕事場、小唄や踊りの稽古場はもちろん、移動中の車にも必ず片方が同乗し、ショッピングなどのプライベートにまでもぴったりと張り付いて彼女の身辺を保護する。彼らはあくまで私生活には干渉しないが、ビワコは愛人関係にあるテレビの編成局長・真行寺との不倫の現場にまでもついてこようとするふたりの刑事に、落ち着かない生活を強いられた。一方、ふたりの刑事の方も、昔からビワコのファンでミーハーぶりを隠せないでいる近松に対し、ひたすら職務を全うしようとする堅物の立花は、傍若無人なビワコの振る舞いにいらだちを覚える。しばらくして、教団幹部の命令で身を隠していた犯人の大木が逮捕された。すぐに面通しが行われ、ビワコは記憶をたどりながら彼が犯人だと証言する。大木が犯行を自白し、ビワコの証言がより重要性を持つようになってくると、教団は顧問弁護士の二本松を通じてビワコに証言をやめさせるよう、なりふり構わぬ脅しを始めた。愛犬を殺された上、真行寺との不倫をマスコミにバラされたビワコは、精神的に大きなダメージを受け、証言をためらうようになってしまう。ふたりの刑事は勇気を持つようビワコを励ますが、スキャンダルが原因で舞台を降板させられた彼女は、舞台衣裳のまま楽屋から姿を消した。もともと彼女の想い出の場所であった目撃現場で教団の実行部隊に襲われたビワコは、駆け付けた立花に危ういところを救われる。さらにビワコを乗せて裁判所へ向かう途中の車を襲った教団に対しても、命がけで立ち向かっていく立花たちの姿に、ビワコはどんなことがあっても証言をするという覚悟を決めて、裁判所に入っていった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

監督
脚本
伊丹十三
企画協力
三谷幸喜
細越省吾
製作
玉置泰
プロデューサー
川崎隆
撮影
前田米造
美術
川口直次
装飾
佐藤結樹
音楽
本多俊之
音楽プロデューサー
立川直樹
梶原浩史
録音
小野寺修
桜井敬悟
照明
加藤松作
編集
鈴木晄
衣裳
岩崎文男
熊谷友江
助監督
中嶋竹彦
スクリプター
松澤一美
デジタル合成
島村達雄
特機
落合保雄
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受賞歴

第21回 日本アカデミー賞(1998年)

受賞

助演男優賞 西村雅彦

ノミネート

主演女優賞 宮本信子
音楽賞 本多俊之
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映画レビュー

4.0伊丹十三監督遺作

2025年6月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

ドキドキ

1997年公開作品

過去数回鑑賞

監督と脚本は『お葬式』『タンポポ』『あげまん』『ミンボーの女』『スーパーの女』の伊丹十三

粗筋
殺人現場を目撃してしまった女優磯野ビワコは証人として警察に協力する事に
しかしその殺人犯大木珠男は宗教団体の信者であり殺人は教団による組織的犯行であった
裁判で大木の有罪が確定する事になれば教団の存続は危うくなる
なんとしてでも証言を阻止しようと教団はビワコを脅迫してくる
ビワコを守る警察側と教団の対立

社会派サスペンスだと期待したレビュアーには不評だが三谷幸喜が関わっている時点でこれはコメディー
三谷作品ではお馴染みの俳優も出演している
伊丹らしくないと感じた人もいるようだがその理由はそれだろう

『スーパーの女』では鮮魚部門のサブリーダーを演じたが今回は地方の刑事役を演じた伊集院光の血まみれ泥まみれの熱演が光る

伊丹作品では常連になっていたオッパイ担当の朝岡実嶺
今回はオッパイだけじゃなく山本太郎のイチモツもしっかりと掴んでいる
山本太郎議員も出ていたんだなあ

娯楽映画としては悪くない
むしろ面白い
コメディー映画として佳作
細かい粗探しはやめようや
そんな映画鑑賞はつまらんよ

配役
女優の磯野ビワコに宮本信子
マネージャーの小清水に近藤芳正
お手伝いの三輪にあき竹城
劇場プロデューサーに三谷昇
劇団プロデューサーに加藤善博
夫役の俳優に小日向文世
医師役の俳優に河東燈士
看護婦役の俳優に小島聖
取材記者に津村鷹志
取材記者に堀勉
付人のミッチャンに楠木涼香
映画監督に小林克也
映画は『ウエスト・サイド物語』以来観ていない刑事の立花に西村雅彦
磯野ビワコ主演映画はすべて観ている刑事の近松に村田雄浩
泣き落としの管理官に波多野に名古屋章
検事に益岡徹
警視総監に宝田明
短気な刑事の稲村に六平直政
留置場の係官に矢野宣
刑事課の係長に松井範雄
刑事に大久保運
刑事に佐藤信一
刑事に菅原大吉
刑事に野口雅弘
刑事に長谷川恒之
モンタージュの係官に赤堀二英
裁判所の係官に本間進
裁判所の係官に中島けんじ
検察事務官に市川勉
検察事務官に桜井勝
検察事務官に米倉真樹
教団顧問弁護士の二本松に江守徹
教団を訴えていた被害者側弁護士夫妻を殺害した大木珠男に高橋和也
教団信者のナカムラに山本太郎
教団信者のエイジに木下ほうか
教団幹部に隆大介
教団の班長のキタムラに高橋長英
ナカムラの妻に朝岡実嶺
大木の共犯者に佐藤亮太
大木の母に小野敦子
襲撃する信者に岩田清
襲撃する信者に江戸松徹
襲撃する信者にジーコ内山
襲撃する信者に島村日出人
襲撃する信者に棚橋ナッツ
襲撃する信者に婆裟羅天明
襲撃する信者に火乃健太
襲撃する信者にヨコスカ潮也
トロと呼ばれる地方警察の刑事に伊集院光
トロの先輩刑事に不破万作
トロに呼ばれてやって来た出前持ちにラッキィ池田
トロ刑事とカラオケバーでダンスを踊ったミドリに早乙女朋子
刑事に内木場金光
刑事に川崎博司
刑事に鈴木俊哉
刑事に戸田知新
刑事に宮坂ひろし
映画の中の映画の刑事に渡辺哲
映画の中の映画の犯人に有薗芳記
報道陣に伊藤俊人
報道陣に諏訪太朗
TV局の編成局長の真行寺に津川雅彦
弁護士の大山に仲谷昇
救急隊員に阿南健治
救急隊員に遠山俊也
大山弁護士夫人に稲川実代子

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野川新栄

3.0若き西村雅彦さんが準主役級の活躍

2025年5月1日
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鑑賞方法:映画館

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ねこたま

1.5つまらなさにショック

2025年4月30日
iPhoneアプリから投稿

伊丹十三もこんな駄作を作ってたんだなと。マルサの女」を初めとする傑作を愛する身としては非常に残念だった。劇場公開時に見逃してたのだが、見ないままでいればよかったと後悔した。

ギャグ&シリアスのギャグが全然面白くない。滑ってる。満員に近い劇場でもクスリとするこえすら上がらない。
元来ギャグ&シリアスはバランスが難しい。この映画の場合はつまらないギャグによってシリアスシーンの緊張感を削いでいる。

また無駄なシーンも多い。「夢オチ」のシーンとか。あるいは犯人の逮捕シーン&自供シーン、あれは必要か? この映画は「マルタイの女」だろ。犯人の苦悩とか関係あるか? ラストのあれも気が利いてると思ったんだろうか。超絶的にダサいだけだ。

無駄なシーンが多いため敵からの攻撃が遅すぎる。しかもだ、「その攻撃有効か」というのが頻発してる。最後のほうで車に乗った女優を襲うところ、あれなんであのまま犯人グループは帰っちゃうの? 崖から突き落とせばいいじゃん。刑事は倒れてるし。意味がわからん。

細かいこと言うと「非番の刑事が拳銃持ってるか?」とか「護送車の窓がそんなんで割れるか?」とかあれこれ出てくる。伊丹十三と言えばディテールのこだわりに定評がある人だと思ったが。

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水原秀策

4.5伊丹監督らしく自身の経験をユーモラスにエンターテイメント作品に昇華させているのは流石です。

2025年4月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

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楽しい

興奮

2月21日(金)からTOHOシネマズ日比谷さんで開催されている「日本映画専門チャンネル presents 伊丹十三 4K映画祭」(監督作品を毎週1作品、計10作品上映)も遂にラスト!そして完走!最後の作品は『マルタイの女』。

『マルタイの女』(1997/131分)
伊丹十三監督10作品目にして遺作。
『ミンボーの女』(1992)公開直後に同作を快く思わない組関係者に襲撃された際に自らが警察の警護対象者(=マルタイ)になった経験から着想された作品。

すでに海外ではケビン・コスナー主演『ボディガード』(1992)、クリント・イーストウッド主演『ザ・シークレット・サービス』(1993)などの傑作が公開されていましたが、伊丹監督らしく自身の経験をユーモラスにエンターテイメント作品に昇華させているのは流石です。

主人公・磯野ビワコ(演:宮本信子氏)の命を狙う側に当時社会問題なっていた新興宗教を選ぶところが社会派監督の真価を発揮、実に攻めていますね。

本作では三谷幸喜氏が初期段階に脚本に参加。
伊丹組の常連に加えて三谷組の常連、西村雅彦氏、近藤芳正氏らが新たにキャスティングされているのも新鮮ですが、伊丹監督からちょうどバトンを受け継ぐかたちで同年『ラヂオの時間』(1997)で三谷氏が監督デビューしたのは運命的なものを感じますね。

残念ながら本作が監督の遺作。
監督デビューの『お葬式』(1984年)から本作までの約10年は、バブル景気前の高揚感にはじまり、狂乱のバブル好景気に踊り、バブルが弾けて急速に日本が停滞した超激動期。
常に独自の感性で「お葬式」「グルメ(ラーメン)」「マルサ」など先見性、メッセージ性がある題材を時代の空気に合わせて選好、演出方法など試行錯誤しながら、年に1本ペースで製作、いずれもがヒット若しくは世間の興味を引いていたのは、尊敬の念を覚えます。

もし監督が今でもご存命でしたら果たしてどんな作品を撮り続けていたでしょうか。
数多の社会問題に鋭く迫りつつ、娯楽作品として分かりやすく表現、耳目を集めて作品を通じて世の中が良い方向に向かうことが多々あったかもしれませんね。

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矢萩久登