魔剣
劇場公開日:1953年11月17日
解説
五味康祐の芥川賞受賞作品『喪神』より、「暴力市街」の安達伸生が脚色監督している。撮影は「続丹下左膳」の竹村康和の担当である。出演者は「太平洋の鷲」の大河内傳次郎、「鬼伏せ街道」の山根寿子、「続砂絵呪縛 雪女郎」の長谷川裕見子のほか、関西歌舞伎の中村扇雀などである。
1953年製作/99分/日本
劇場公開日:1953年11月17日
ストーリー
夢想剣--その構えは一見隙だらけで闘志が見えない。しかも相手が斬りかかると、瀬波幻雲斎の大刀は反射的に鞘走って相手を倒してしまう。幻雲斎は幼時に孤児となり、自殺寸前を夢幻坊に救われ、その錬成によって一流の剣士となり、女心の儚なさと仕官の為手段を選ばぬ人間性の卑しさを痛感して修業一筋に生きてきたが、不遇な豊臣秀次に同情して指南役となった。秀次に仕える上臈・伊勢の局は幻雲斎の性格に魅せられていたが、伊勢が石田方の間者であることを見抜いた幻雲斎は、秀次が三成の陰謀によって失脚すると、彼を慕う伊勢をも振りきって大和多武峯に隠棲した。父を幻雲斎に殺された稲葉哲郎太は幻雲斎の庵を訪れて勝負を挑むが、彼の技の及ぶ所でなかった。哲郎太は一切を敵にゆだねて寝食を共にしながら夢想剣を学んだ。同じ庵に住むゆきは幻雲斎の養女で、やはり幻雲斎に斬られた剣士の娘だった。二人の間には恋が芽生えたが、哲郎太は父の仇を討たねばならぬ宿命を感じ、ゆきに励まされて修業に旅立った。時代は大きく旋回し、伊勢は今や関東方の間者として暗躍し、石田の侍に追われて幻雲斎と邂逅し、今は凡べてを捨て幻雲斎と共に居る事を願った。折しも哲郎太が戻って来た。二人は再び相対峙するが、何故か哲郎太はかかれなかった。幻雲斎は伊勢に哲郎太の仕官を頼み、ゆきと哲郎太を送り出すと見せかけて、矢庭に哲郎太へ斬ってかかった。一瞬、哲郎太の手が動いたとみると、幻雲斎が倒れていた。これこそ夢想剣の極意だったのだ。幻雲斎は哲郎太の成長に満足な笑みを浮べて息を引き取った。多武の峯の頂上にはその後も幻雲斎の菩提を弔う尼僧姿の伊勢の姿が見えたという。