火垂るの墓(1988)

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劇場公開日:

火垂るの墓(1988)

解説・あらすじ

直木賞を受賞した野坂昭如の短編小説をスタジオジブリの高畑勲監督が映画化し、終戦間近の神戸を舞台に戦災孤児の兄妹がたどる悲劇的な運命を描いた名作アニメーション。昭和20年、夏。父が出征中のため母と3人で暮らす14歳の清太と4歳の節子の兄妹は、空襲によって家を焼け出され、母も亡くしてしまう。2人は遠縁の親戚の家に身を寄せるが、次第に邪魔者扱いされるようになり、ついに耐えきれなくなった清太は節子を連れて家を飛び出す。防空壕に住み着いた彼らは、2人きりの貧しくも楽しい生活を送り始めるが……。

1988年製作/88分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1988年4月16日

スタッフ・声優・キャスト

監督
原作
野坂昭如
脚本
高畑勲
企画
佐藤亮一
製作
佐藤亮一
プロデューサー
原徹
レイアウト
百瀬義行
キャラクターデザイン
近藤喜文
作画監督
近藤喜文
作が監督補佐
百瀬義行
撮影監督
小山信夫
美術監督
山本二三
色彩設計
保田道世
音楽
間宮芳生
音響監督
浦上靖夫
編集
瀬山武司
制作担当
上田真一郎
制作
スタジオジブリ
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(C)野坂昭如/新潮社,1988

映画レビュー

4.0ようやく鑑賞する気になれました。

2021年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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猿田猿太郎

5.0因縁の火垂るの墓

2025年6月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

子どもの頃、火垂るの墓が上映された。
母は子どもが見ても大丈夫そうな内容か心配になって、先に1人で鑑賞したらしい。そのくらい、アニメへの想いの強い人だった。結果、同時上映のとなりのととろだけを子どもに見せることを選択した。
このお話を聞いて以来、火垂るの墓を観ることは自分にとって特別な意味を持っていた。今回、初めて鑑賞した。

栄養を失っていく様子、栄養のないものを与え続ける清太、栄養がないものを欲してなくてもその甘いコーティングに舌が喜んでしまう節子、ドロップの缶の音にすら喜びが出てくる様はあまりにも辛かった。
空襲中に火事場泥棒をする清太、お腹が膨らんでたぬきみたいになった清太、あんまりにも醜かった。(たぬき映画「平成たぬき合戦ぽんぽこ」、あらためて見直したいと思った。)

清太はずうっと、胸に軍人の父親を入れていた。まさしく、父親のように父親がしてくれたように、節子に振る舞ったんだろう。甘味のあるものだけでなく、清太と節子が成長できたのは、母親の仕事だったんだろうなぁ。節子はお墓を作って、ほたると母親を弔えるくらいな強さがある。女性の強さ。

いつの時代にも響くものとして、栄養というキーワードが今回の鑑賞で一番感じいった。

それにしても、高畑監督、やっぱりすごい。

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まるのすけ

5.0初めて観た時、ラストシーンに愕然とした、背筋が凍った。

2025年5月18日
PCから投稿

死の灯りと生の灯り

焼夷弾は空から
蛍は地上を浮遊し
綺麗な光を放つ

誰もが自分の事に必死になる。
あの兄弟は空腹感から逃げる。
命の危険から遠く逃げる。

物語は生きる為の兄を見せる。
無邪気に遊びを探す妹を見せる。
戦争は終わりを告げ、平和な空。
楽しげな音楽が流れ女性が窓を開ける。

ただ、兄 清太の目は昨日と変わらない。
妹と共に空腹の今日を生きている。

驚愕したラストシーン
あの状況に震えた。

今も心から離れない。

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共感した! 1件)
星組

4.5”反戦を訴えるなら、戦争を起こす前に何をすべきかが問題だ”

2025年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

4月29日は「昭和の日」。昭和の時代を振り返る意味を込めて、スタジオジブリの高畑勲監督による映画「火垂るの墓」を鑑賞しました。会場は丸の内TOEIで開催中の『昭和100年映画祭 あの感動をもう一度』。今回で5本目の鑑賞となります。

本作は、言わずと知れた野坂昭如氏の原作小説をアニメ映画化したもの。冒頭で14歳の主人公・清太(声:辰巳努)が駅構内で亡くなるシーンが提示され、そこに至るまでの経緯が描かれる構成になっています。

物語の舞台は昭和20年4月の神戸。日本はすでに敗色濃厚な状況にありましたが、清太は依然として日本の勝利を信じ、海軍軍人である父を誇りに思う、ごく普通の少年として登場します。ところが、神戸が大空襲に見舞われ、家は焼け、母親も戦災により命を落としてしまいます。清太は4歳の妹・節子とともに遠縁の親戚の家に身を寄せるものの、そこの叔母と折り合いが悪くなり、2人で家を出て池のほとりの防空壕に移り住むことになります。
しかし、手元の食料もお金も底をつき、やがて節子は栄養失調により息を引き取ります。

まさに涙なくしては観られない物語でしたが、正直なところ、私は涙を流すことができませんでした。鑑賞後に思い返すに、あまりに過酷な”現実”を目の当たりにしたショックで、涙を流すという自然な反応すら身体が忘れてしまっていたのかもしれません。

その後、感情の整理の一助としてWikipediaの該当項目を読んでみたところ、高畑監督の次のような言葉が印象的でした。

「反戦アニメなどでは全くない。そのようなメッセージは一切含まれていない」
「本作は決して単なる反戦映画ではなく、お涙頂戴のかわいそうな戦争の犠牲者の物語でもなく、戦争の時代に生きた、ごく普通の子供がたどった悲劇の物語を描いた」

なるほど、この視点こそが、本作に他の反戦映画とは一線を画すリアリティを与えているのだと、改めて納得しました。たしかに、清太は多くの悲劇の当事者であるにもかかわらず、彼の言動からはストレートな「反戦メッセージ」は感じられません。特に、玉音放送を聞いておらず敗戦を知らなかった彼が、後にその事実を知った際に受け入れきれない様子には、反戦よりも、時代の中で取り残された個人としての孤独が強く浮かび上がります。

また、次のような高畑監督の言葉も心に残りました。

「この映画では戦争は止められない。映画で反戦を訴えるのであれば、“戦争を起こす前に何をすべきか”と観客に行動を促すことが必要だ」

たしかに、戦争が始まってしまってからでは、手遅れなのです。

以上、映画を観た感想に加え、多少の余談も含めてしまいましたが、世界情勢が日ごとに不穏さを増している現代においてこそ、本作は語り継がれるべき意義ある作品だと、改めて実感しました。

それにしても、「火垂るの墓」が「となりのトトロ」との2本立てで公開されていたというのは、日本映画史に残る“天国と地獄”のような同時上映ですね。

そんな訳で、本作の評価は★4.6とします。

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鶏