ヒルコ 妖怪ハンター

劇場公開日:

ヒルコ 妖怪ハンター

解説

塚本晋也監督がデビュー作「鉄男」に続いて手がけた監督第2作で、諸星大二郎の漫画「妖怪ハンター」を沢田研二主演で実写映画化。新進気鋭の考古学者・稗田礼二郎は学界で注目を集めていたが、ある学説を唱えたことで異端視され、その存在はほとんど忘れ去られていた。そんな彼のもとに、義兄で中学校教師の八部高史から「古代人が悪霊を鎮めるために造った古墳を発見した」という内容の手紙が届く。自分の学説が証明されると考えた稗田は八部の家を訪ねるが、八部は生徒の月島令子とともに謎の失踪を遂げていた。2人を捜すため学校へ向かった稗田と八部の息子まさおの前に、恐ろしい妖怪ヒルコが出現。妖怪退治の武器を手に立ち向かう稗田たちだったが……。1991年の初公開から30年目を迎えた2021年7月、レストア&リマスター版が公開。

1991年製作/90分/日本
配給:マコトヤ
劇場公開日:2021年7月9日

その他の公開日:1991年5月11日(日本初公開)

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

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映画レビュー

3.0真夏の白昼夢のようなジュブナイルホラーの怪作

2024年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

興奮

昭和40~50年代のオカルト少年にソッと寄り添った漫画家:諸星大二郎の妖怪ハンターシリーズが原作です。

妖怪ハンターという字面からTVアニメ版の「ゲゲゲの鬼太郎」や「地獄先生 ぬ~べ~」の様な特殊能力を持った主人公が人に危害を加える怪異を解決するようなものを想像してしまいそうですが、そうではありません。

このシリーズの主人公:稗田礼二郎(ひえだれいじろう)は学会から異端者扱いされる考古学者であり、神話や伝承に由来する異様な事例や奇怪な題材にばかり興味を示しては、フィールドワークで訪れた先々で怪異に巻き込まれます。
ところが神話や伝承に関する知識はあっても霊能力や超能力の類は持っておりませんので、基本的に目の前で起こる怪異を傍観するのみです。
なので『ハンター』といっても(狩り)というより奇怪な事例を(採取)、(コレクション)していくというニュアンスに近いです。

私は諸星大二郎作品が好きなのですが力不足ゆえにその作品の魅力を上手く表現できません。
ただ諸星大二郎ほど奇怪な物語を通して神話の時代へと続く人類の悠久の歴史に思いを馳せさせるスケールの作品を描ける人を他に知りません。
手塚治虫も「火の鳥」のように壮大なスケールの名作を残しましたが、それとはまた違った手触りをしているのが特徴です。(その違いを上手く表現できないのがもどかしいのです。)

すっかり映画の話を他所にしてしまいましたが、今作はそんな諸星大二郎の妖怪ハンターから「黒い探究者」を原作としています。ただ本作の持つ雰囲気は原作の持つ雰囲気とは似ても似つきません。

原作漫画がどちらかというと思春期が間近に迫った少年が独りで「自分は他の連中とは違うんだ」と読み耽りそうなのに対し、映画は社交的な子が友達数人と連れだって観に行き、頭からっぽにしてワーキャーはしゃぎながら鑑賞するような仕上がりです。(実際そんな客がこの映画を観に来たのかは知りませんが)

とにかく初っ端の「何?あのオッサン」呼ばわりされる主人公(沢田研二)の姿から原作の再現は期待するな!と宣告している映画ですので、こちらも割り切って鑑賞したわけですが、それにしても沢田研二をはじめとした出演者たちが渾身の顔芸を披露しながら、終始ワーワーギャーギャーと騒ぐ様に、個人的には少々胸焼けがしました。
そんな雰囲気のなかでも、自分の運命を悟り一人自決する室田日出男は格好いい気がするのですが、持っている鎌で校舎に傷を付けた事に何の意味があるのかは最後まで分かりません!

またヒロインを演じた女の子は年頃なのに、その青春の全てを投げ捨てているかのような渾身の演技を見せてくれます!が、その迫力には感動を通り越して、少しヒきます。
「仮面ライダーBLACK RX」などの東映特撮ドラマシリーズでよく顔を見る人ですので、こういう役はお手の物なのかもしれませんが、こんな映画のこんな役でここまでの力演を披露して、プライベートは大丈夫なのかしら?と心配してしまう程です。(本人は当の昔にいい大人になっている年代ですし、全くもって大きなお世話なのですが!)

ただ特撮ドラマもそうなのですが、こういった作品が今もなおファンたちの間で根強く語り継がれるのは、こういう出演者の捨て身の力演のおかげでも大いにありますので、やはりその作品への貢献度や役者根性には感服するばかりです。

そして原作がもともと扱っているテーマのスケール感の割に地味でアッサリしているため、そのまま映画にしても約90分の尺でさえ持て余す事になるのは明白です。

そこで何故「遊星からの物体X」へのオマージュ要素が加味されるのか?は疑問ですが、ただその結果産まれた今作のヒルコの不気味さはまさしく味があります…。
シーンによっては明らかにぬいぐるみをピアノ線で引っ張っているだけだったり、手を突っ込んで操るマペットなのですが(それもまた良し!)
妙にぎこちない動きで、そのくせ俊敏に迫ってくる様子は素晴らしいです。
原作のヒルコはハンガーのお化けみたいなデザインで、映画で再現するのは地味なうえ難しそうでしたので、そういう意味でも上手いアレンジだったかなと思います。

また映画が公開された後に描かれた原作:妖怪ハンターの中で、主人公の稗田が女学生に「沢田研二にちょっと似てない?」と噂話される一コマがあることから、原作者の諸星大二郎もこの映画を結構気に入っているでは?と思います。

映画の最後のアレも原作:妖怪ハンターの「海竜祭の夜」をはじめ、幾つかこういったデザインのモノが諸星大二郎作品には出てくるので、そこからイメージ引っ張ってきたのかな~とも思いましたが……いや、アビスだこれ!

と、原作からは遠く離れてはいるがギリギリ切れていない絶妙なラインで別の作品と混ざり合い産まれたトンでもないキメラ映画ですが、こういう映画も邦画の歴史の中には確かに存在しているんだ!という事実を受け止めるためにも、又ひと夏の思い出として見ておくのもアリな1本です。

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共感した! 2件)
モアイ

3.5このチープさが1番怖い 。

2023年12月29日
iPhoneアプリから投稿

学校を舞台にした原作物のホラー作品。
その中身は、塚本晋也によるエイリアン2+遊星からの物体Xだった。

舞台は外界と遮断された無人の学校。
主人公2人は、センサーの鳴動を頼りに暗闇の中に潜む化け物を探す。
鳴動が早まる。
そこにいたのは人間の顔から昆虫の足を生やしたおぞましい化け物だった。

このシチュエーション。
どこぞの怪談だったらネタとして見れるだろう。
でもこの映画、なにせ造形も演出も本気で怖いのだ。
だから映画として緊張感があって面白い。

間違いなく監督は遊星からの物体Xを本気でやりたかったんだろう。
人面蜘蛛の動きと造形、人間の頭部が分離するシーンのこだわりも尋常ではない。

更にシチュエーションはまさにエイリアン2だ。ここに更に和ホラーな要素が混ざり合っておどろおどろしさも増している。

低予算ながら、今見ても楽しめるエンタメホラー作品に仕上がってるのは流石だ。
同時代のゼイラムといい、この時代の作品は低予算でも果敢にハリウッドに挑んでいるのがまた良いのだ。

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共感した! 1件)
ジョイ☮ JOY86式。

3.5ジュリーは美しい。

2023年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

怖い

ホラーというかギャグというかコメディーというか、、。
妖怪ハンターというアニメっぽい副題。
鍋と茶こしの装置とかキンチョールとか。やっぱりコメディー?
でも、、
用務員さんはカッコイイし、稗田の妻のエピソードはちょっと悲しい。

妖怪は気味悪く良く動いているし、肌感があって質量を感じて凄く良い。

最後、工藤君の産毛がキラキラしてて美しかった。

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共感した! 1件)
くろすけ

4.0適度にホラー、適度にコミカル

2023年12月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

怖い

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GMKゴースト