八甲田山

劇場公開日:

解説

新田次郎の原作『八甲田山死の彷徨』をもとに、大部隊で自然を克服しようとする部隊と小数精鋭部隊で自然にさからわず、折り合いをつけようとする部隊の様子を冬の八甲田山を舞台に描く。脚本は「続人間革命」の橋本忍、監督は「日本沈没」の森谷司郎、撮影は「阿寒に果つ」の木村大作がそれぞれ担当。

1977年製作/169分/日本
原題または英題:Mt.Hakkoda
配給:東宝
劇場公開日:1977年6月18日

ストーリー

「冬の八甲田山を歩いてみたいと思わないか」と友田旅団長から声をかけられた二人の大尉、青森第五連隊の神田と弘前第三十一連隊の徳島は全身を硬直させた。日露戦争開戦を目前にした明治三十四年末。第四旅団指令部での会議で、露軍と戦うためには、雪、寒さについて寒地訓練が必要であると決り、冬の八甲田山がその場所に選ばれた。二人の大尉は責任の重さに慄然とした。雪中行軍は、双方が青森と弘前から出発、八甲田山ですれ違うという大筋で決った。年が明けて一月二十日。徳島隊は、わずか二十七名の編成部隊で弘前を出発。行軍計画は、徳島の意見が全面的に採用され隊員はみな雪になれている者が選ばれた。出発の日、徳島は神田に手紙を書いた。それは、我が隊が危険な状態な場合はぜひ援助を……というものであった。一方、神田大尉も小数精鋭部隊の編成をもうし出たが、大隊長山田少佐に拒否され二百十名という大部隊で青森を出発。神田の用意した案内人を山田がことわり、いつのまにか随行のはずの山田に隊の実権は移っていた。神田の部隊は、低気圧に襲われ、磁石が用をなさなくなり、白い闇の中に方向を失い、次第に隊列は乱れ、狂死するものさえではじめた。一方徳島の部隊は、女案内人を先頭に風のリズムに合わせ、八甲田山に向って快調に進んでいた。体力があるうちに八甲田山へと先をいそいだ神田隊。耐寒訓練をしつつ八甲田山へ向った徳島隊。狂暴な自然を征服しようとする二百十名、自然と折り合いをつけながら進む二十七名。しかし八甲田山はそのどちらも拒否するかのように思われた。神田隊は次第にその人数が減りだし、辛うじて命を保った者は五十名でしかなかった。しかし、この残った者に対しても雪はとどめなく襲った。神田は、薄れゆく意識の中で徳島に逢いたいと思った。二十七日、徳島隊はついに八甲田に入った。天と地が咆え狂う凄まじさの中で、神田大尉の従卒の遺体を発見。神田隊の遭難は疑う余地はなかった。徳島は、吹雪きの中で永遠の眠りにつく神田と再会。その唇から一筋の血。それは、気力をふりしぼって舌を噛んで果てたものと思われた。全身凍りつくような徳島隊の者もやっとのことで神田隊の救助隊に救われた。第五連隊の生存者は山田少佐以下十二名。のちに山田少佐は拳銃自殺。徳島隊は全員生還。しかし、二年後の日露戦争で、全員が戦死。

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スタッフ・キャスト

監督
脚本
橋本忍
原作
新田次郎
企画
吉成孝昌
佐藤正之
馬場和夫
川鍋兼男
製作
橋本忍
野村芳太郎
田中友幸
撮影
木村大作
美術
阿久根巖
音楽
芥川也寸志
録音
吉田庄太郎
照明(ロケーション)
大澤暉男
照明(セット)
高島利雄
編集
池田美千子
竹村重吾
製作担当
小山孝和
助監督
神山征二郎
スチル
藤巻健二
全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第1回 日本アカデミー賞(1978年)

受賞

主演男優賞 高倉健
音楽賞 芥川也寸志

ノミネート

作品賞  
監督賞 森谷司郎
脚本賞 橋本忍
主演男優賞 北大路欣也
主演女優賞 秋吉久美子
助演男優賞 三國連太郎
技術賞 木村大作
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映画レビュー

5.0歴史に残る山岳事故の実話を映画化した、壮絶なストーリーと映像に圧倒される169分

2024年12月31日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

明治35年(西暦1902年)にあった登山史における世界最大級の山岳遭難事故の実話を映画化
登山ファンでなくても日本人なら知っておくべき負の歴史であると共に人として大いに学びにもなる名作です

八甲田雪中行軍遭難事件は日本陸軍が行った雪中行軍での出来事
北大路欣也さん演じる神田大尉率いる青森5連隊210人中199人が同行した三國連太郎さん演じる山田少佐のつまらないプライドと無知をベースにした判断ミスにより死亡
一方で高倉健さん演じる徳島大尉率いる弘前31連隊27人は周到な準備により全員生還

この事件による学びは
・自然をナメるな
・知らない事は軽視せず、経験者や知見者の協力を得よ
・間違っている事は例え目上の人にでも訴えよ
等々、普遍的な教えであり見応えがあります

監督の森谷司郎さんは巨匠 黒澤明監督の助監督をしていた人で黒澤組の人らしく、本作は実際に八甲田山での撮影を敢行し、マイナス数十℃の中で吹雪を待ったり、ダイナマイトを使って雪崩を起こしたり等とことんリアルな極寒雪中撮影にこだわり抜き、あまりの過酷さに脱走した出演者もいたそうです

そんな素晴らしい映像を収めた撮影は森谷監督同様、巨匠 黒澤明監督から一級のカメラマンと認められていた『劔岳 点の記』(2009)で自身でも山岳映画を監督している木村大作さん、映画というエンタメを超え、歴史的価値のある貴重な映像作品として後世に語り継がれる偉業を残されたと思います

そして健さんや北大路さんの脇を固める役者さん達もすごく良い
丹波哲郎さん、小林桂樹さん、藤岡琢也さん、大滝秀治さん、加山雄三さん等々、言い出したらきりがないほどの豪華キャスト
しかも北大路さんの奥さんを演じる栗原小巻さんがメチャクチャ綺麗だし、現地のガイドを演じた秋吉久美子さんもすごく可愛いくて印象的でした

いやぁ、久しぶりに超・超・見応えのある邦画を観ました、本当に昔の邦画は力強くて面白い!こういうのもっと作ってほしいですね

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Jett

5.0ハッコー💡だサン☀️

2024年10月29日
iPhoneアプリから投稿

寒すぎて麻痺して熱いーとかいいながら死んでいくとか
ホラー映画より怖い作品シリーズの最上位のやつです!
あとロケよくやったなしかし⛰️☃️ 死ぬよ🥶
この作品のおかげで一度は資料館に絶対に行こうと思ってますよ!

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お主ナトゥはご存じか2.1ver.

3.5雪山は怖い

2024年10月23日
iPhoneアプリから投稿

時々登山をするのであるが、雪山は怖くて登らない。この映画を見た影響か(笑)。
テレビでよくある遭難事故の再現ドラマみたいだが、豪華キャストにより格調高く作っている。

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ジョニーデブ

3.0時代が生んだ壮絶な人間ドラマだといえる。

2024年10月1日
PCから投稿

日本の冬季軍事訓練で最多の死傷者を出し、近代以降の世界最大の山岳遭難事故でもある、1902年(明治35年)の「八甲田雪中行軍遭難事件」を映画化した人間ドラマ。

高倉健と北大路欣也が、別々の連隊で、八甲田山の雪中行軍を命ぜられる。厳冬の過酷な気象状況、認識不足、指揮系統の混乱、装備不足、低体温症などに直面し、悲劇を招く。

3時間近い上映時間は、もっと短くできなかったかなと。本作は、明るい要素や、救いとなる点がほぼ無い。狂気に満ちており、観客に歴史的事件の現実を、強烈に見せつけている。

1977年の日本映画配給収入第1位を獲得した大ヒット作。
どれだけ理屈に合わなくても、上司の指示が絶対だという理不尽さが、組織自体の暴走につながるストーリーが、終身雇用と年功序列が今より支配的だった当時の日本社会において、広く受け入れられたのだと思う。

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瀬戸口仁