馬喰一代(1951)

劇場公開日:

解説

原作は中山正男。「牝犬」の成澤昌茂と木村恵吾のコンビにより脚色、「牝犬」に次ぐ木村恵吾の監督作品。撮影は「東京悲歌」の峰重義。出演者は「完結 佐々木小次郎(1951)」の三船敏郎、「源氏物語(1951)」の京マチ子、「牝犬」の志村喬、「麦秋」の菅井一郎などの他、市川春代、星光、杉狂児、光岡龍三郎、小杉義男、水原洋一などである。

1951年製作/113分/日本
原題:Life of a Horse-Trader
配給:大映
劇場公開日:1951年12月7日

ストーリー

昭和五年の秋の北海道北見高原を十数頭の馬を追って行く二人の男があった。今しも一頭の馬が軍を離れて凄い勢いで突っ走り始めた。それを追って巧みな投縄で引きとめた一人の男は馬喰仲間でも「北海の虎」と異名をとった乱暴男の片山米太郎だった。その日の馬市で彼は馬を売払って相棒の鳥取太郎と共に久しぶりで相当の金を懐にしたが、これをねらっていた元馬喰、いまは高利貸になった小坂六太郎は、米太郎を賭博にさそって、小料理「桃代」ですっかりその金をまきあげてしまった。「桃代」の酌婦ゆきは六太郎の誘いにもなびかず、ひたすら米太郎を想っていたが、彼には家にはるのという従順な女房と大平という可愛い倅があったので、会えば借金を催促されるゆきをひたすら敬遠していた。賭博で金をすった米太郎は病気のはるのの薬も買えない有様だったが冬になって例年の如く山仕事に出稼ぎしていたときはるのの危篤で呼び戻された。はるのの遺言通り米太郎は賭博と喧嘩を断って大平とはるのの貯金で飼った駿馬ミノルの成育をたのしみに苦しい生活を続けていた。その大平は早や小学校の六年生になり、学校の成績も抜群で、札幌の中学校へ入学したい志望だった。米太郎は大平も馬喰にするつもりだったがゆきや六太郎のすすめでミノルを北見競馬に出場させ、大平の学資を得ようとした。ミノルは見事優勝したが、無理な競争がたたってその場で死んでしまった。頭髪に霜を置きめっきり弱った父を置いて行くことに大平は後髪をひかれる思いだったが、ついに心のとどいたゆきが米太郎の面倒を見ることになり、大平も父にはげまされて札幌へと旅立って行った。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5緩急つけた演出の妙

2022年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

神保町シアターにて鑑賞。(夜7:15~の回)

三船敏郎・京マチ子・志村喬の『羅生門』俳優らが喧嘩したり支え合ったりしながら、北海道北見を舞台に、緩急つけられた人間ドラマが展開する木村恵吾監督作品。

まず冒頭、「出演者」ではなく、「役と人」というテロップから、ほのぼのした感じ。
そして、北海道の広い草原を馬がたくさん走って来るが、馬の背中で酔いつぶれて登場する三船敏郎を見て、「馬に乗った『酔いどれ天使』?」などと思ってしまう(笑)

そして、三船敏郎は馬喰(馬を育てて売る商売人)なので泥まみれで髭面だが、三船に負けないぐらい髭面の汚れた顔の金貸し男が出てくる。最初、志村喬とわからないほど…(笑)

馬喰のヨネさん(三船敏郎)は馬20頭を売って懐が温まったのだが、啖呵を切りながら金をバラまいたり、金貸し男の小坂(志村喬)のいかさまバクチで巻き上げられて、スッカラカンになってヨネさんは帰宅。彼には病弱の妻と幼い息子がいる。

そして、「博打⇒大乱闘⇒馬疾走」という激しい[動的場面]が続いたかと思えば、一転してヨネさん妻が危篤の[静的場面]となるあたりは見事。妻が亡くなって、せせらぎを流れていく紙風船シーンは、山中貞雄監督の『人情紙風船』のようだった。

その後、ヨネさんは幼い息子が欲しがっている三輪車のために3人勝ち抜き相撲をする親心を見せる。
そして、[幼い息子が三輪車乗るシーン]⇒[寂びれた三輪車を映す場面]⇒[大きめの下駄が映る場面]というシークエンスで【時の流れ】を描いて見せるあたりは見事。
このシークエンスのあとには、息子が大きくなっている。

その後も、三船敏郎に惚れている女(京マチ子)、競馬シーン、金貸し男の選挙活動などなど様々なエピソードを見せながら、クライマックスへ……。

三船敏郎がギラギラした眼で獰猛な雰囲気を醸し出しており、さすが。
ただ、もう少し、京マチ子との恋愛エピソードを膨らまして描いてもよかったのではないか……というあたりの物足りなさがチョット惜しい気がした。

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たいちぃ

4.0男冥利につきる「米太郎」役

2021年6月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

笑える

幸せ

一流の馬喰、でも下駄売りのヨイショにのせられて山ほど下駄を買ったり、喧嘩や博打好きでいつもお金がない米太郎。単純で女の気持ちも分からないけれどいい奴で可愛げがある人。息子が欲しい自転車は、怪我をおして相撲で勝ち取る!若い三船敏郎ゆえのぴったりの役柄だった。脇にまわった京マチ子=ゆきは拗ねたり優しかったりが可愛らしく純情だった。

子役にあまり関心ないけれど、米太郎の息子役の大平は本当に本当に良かった。勉強が好きで、父親に言われたら喧嘩の仕返しにも行くし、父親の体を揉んであげたりご飯の心配したり。父親より心の機微がわかって、おばちゃん(ゆき)はお父ちゃんのこと好きなんだよと言ったり。男の子に弱い私はすぐに涙ぐんでしまいます。

相撲場面の三船敏郎のふんどし姿はかっこよかった。自然な筋肉で全身バランスがとれていて惚れ惚れした。汽車を追って馬駈ける爽やかな姿、そして線路に耳をあてる姿。朴訥で滑舌も良くないけれどそんな三船敏郎だからこその米太郎、適役だった。

志村喬はいい役回り!この人が居るだけでお芝居がしまる。そして若い左ト全。かなりおじいちゃんになってからしか知らなかったのですごーいと思った。若くてもおじいちゃんでもおんなじ感じなのがすごーいだった。

父子で大事に育てた愛馬の活躍と最期は、涙無しでは見ることも聞くこともできなかった。広大な北見。そこでもソーラン節を歌うんだなあとなんだか懐かしい気持ちでいっぱいになった。豪快に大地を馬で駈ける情景は晴れ晴れとして胸がときめいた。まさに北海道!

おまけ(にしては長い)
米太郎の妻が死の床で、あなたにどつかれても(米は単細胞で酒飲みで手が先に出る男)全然痛いことなかった、と言います。愛の告白であり愛されていたことはわかっていた、という意味です。ゆきも米に叩かれても構わないと言うことで自分の思いを伝えます。そして落語の「お直し」(志ん朝)でも、けころとして働く妻がそういったことを仕事上、客に言い、陰で控えている夫にひどく妬かれます。好きな人に叩かれることは愛情表現であると男女共に本当に思っていた時代があったんだ。驚きました。快感を得るため両者了解の上でのサドマゾ関係であればどうぞ。でなければ、言い訳か甘やかしです。痛いのは誰だって嫌です。

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talisman
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