劇場公開日 1951年12月7日

「緩急つけた演出の妙」馬喰一代(1951) たいちぃさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5緩急つけた演出の妙

2022年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

神保町シアターにて鑑賞。(夜7:15~の回)

三船敏郎・京マチ子・志村喬の『羅生門』俳優らが喧嘩したり支え合ったりしながら、北海道北見を舞台に、緩急つけられた人間ドラマが展開する木村恵吾監督作品。

まず冒頭、「出演者」ではなく、「役と人」というテロップから、ほのぼのした感じ。
そして、北海道の広い草原を馬がたくさん走って来るが、馬の背中で酔いつぶれて登場する三船敏郎を見て、「馬に乗った『酔いどれ天使』?」などと思ってしまう(笑)

そして、三船敏郎は馬喰(馬を育てて売る商売人)なので泥まみれで髭面だが、三船に負けないぐらい髭面の汚れた顔の金貸し男が出てくる。最初、志村喬とわからないほど…(笑)

馬喰のヨネさん(三船敏郎)は馬20頭を売って懐が温まったのだが、啖呵を切りながら金をバラまいたり、金貸し男の小坂(志村喬)のいかさまバクチで巻き上げられて、スッカラカンになってヨネさんは帰宅。彼には病弱の妻と幼い息子がいる。

そして、「博打⇒大乱闘⇒馬疾走」という激しい[動的場面]が続いたかと思えば、一転してヨネさん妻が危篤の[静的場面]となるあたりは見事。妻が亡くなって、せせらぎを流れていく紙風船シーンは、山中貞雄監督の『人情紙風船』のようだった。

その後、ヨネさんは幼い息子が欲しがっている三輪車のために3人勝ち抜き相撲をする親心を見せる。
そして、[幼い息子が三輪車乗るシーン]⇒[寂びれた三輪車を映す場面]⇒[大きめの下駄が映る場面]というシークエンスで【時の流れ】を描いて見せるあたりは見事。
このシークエンスのあとには、息子が大きくなっている。

その後も、三船敏郎に惚れている女(京マチ子)、競馬シーン、金貸し男の選挙活動などなど様々なエピソードを見せながら、クライマックスへ……。

三船敏郎がギラギラした眼で獰猛な雰囲気を醸し出しており、さすが。
ただ、もう少し、京マチ子との恋愛エピソードを膨らまして描いてもよかったのではないか……というあたりの物足りなさがチョット惜しい気がした。

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たいちぃ