天下の御意見番

劇場公開日:

解説

「美男の顔役」の小国英雄のオリジナル・シナリオを「維新の篝火」の松田定次が監督した時代劇の娯楽篇。撮影もコンビの川崎新太郎。

1962年製作/92分/日本
配給:東映
劇場公開日:1962年1月31日

ストーリー

外様大名と旗本が年始の挨拶に登城する正月二日、旗本鮫洲重左衛門と松江城主堀尾因幡守の行列が先を争って大喧嘩を始めた。本多、青山、酒井の三老中が大名びいきのため、重左衛門は閉門五十日のうえ半知取り上げ、一方の因幡守は謹慎三日という片手落ちの断が下された。「天下の一大事!」と名物男一心太助が駿河台の大久保邸に駈け込み、重左衛門は切腹寸前、彦衛門に助けられた。怒ったのは旗本六方組の面々で、加賀爪甚十郎らは因幡守邸に殴り込みをかけようと戦闘準備を開始した。いきり立つ一同を説得した彦左は、直接家光にこの片手落らの裁きを諌めようと思うが若年寄松平伊豆守にさとされた。折も折、彦左邸へ大阪の米問屋灘波屋の娘お遊が押しかけ女房としてやってきた。灘波屋は大阪の陣で将軍に援助した恩人だから、追い帰すこともできない。その頃、吉原の妓楼では因幡守を中心に、熊本城主加藤待徒、唐津城主寺沢志摩守、本多家の家老竹内金兵衛が倒幕の密議をこらしていた。女中からそれを聞いた太助と六方組の面々は帰途、金兵衛を捕えた。ところが敵もさる者、重左衛門の赦免と引きかえに、旗本の駕篭登城禁止という手に出た。お遊の思いつきでタライ登城に鼻をあかされた上野介らは、彦左が無役のため事毎に楯つくのにちがいないと思い、十万石大名の役目に当たる大手三門の警備役を仰せつけ、金しばりにしようと図った。苦境に追込まれた彦左に十万石を投じてくれたのは、家光の叔父で副将軍水戸頼房である。彦左は命をかけて大名と旗本の確執を取り除こうと決心した。ある日、因幡守の横車をはねつけたことから、彦左は切腹を命じられた。駿河台の屋敷で別れの戦場鍋に舌鼓をうっていると、仲間に入れてくれと二人の旗本がきた。家光と伊豆守である。家光は金兵衛の自白書から閣老の陰謀を知り、彦左に詑びにきたのである。伊豆守も自分の信念が閣老に利用されたことを知り家光の供をしてわびに来たのであった。一向に知らぬ太助は「旗本も知らぬ将軍に旗本の気持がわかってたまるか!将軍は、バカヤローダ!」とわめき散らすのだった。家光の眼が涙で光った。「爺よ、許せ」の言葉に彦左の肩が大きくゆれた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0丘さとみさんを偲んで

2024年8月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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丘さとみさん
本名 菱田美恵子
2024年4月24日アメリカのカリフォルニア州の自宅にて心疾患により88歳で他界
兵庫県宝塚市出身
芝居好きの母の影響で幼い頃から宝塚歌劇団や映画に親しむ
市立尼崎市高校在学中高2時にディズニー映画『シンデレラ姫』日本公開記念として主催された「和製シンデレラ」コンテストで優勝
副賞として当時庶民にとって海外旅行は夢のまた夢の時代に渡米しディズニー社を訪問するなどシンデレラのキャンペーンガールとして活躍
高校卒業後東映にスカウトされ芸名を丘さとみとして専属契約
大友柳太朗主演『ご存じ怪傑黒頭巾 第二話 新撰組追撃』で映画デビュー
中村錦之助や大川橋蔵などの相手役として活躍
大川恵子櫻町弘子とともに「花の東映三人娘」と呼ばれるようになる
時代劇を中心に『裸の太陽』『素晴らしき娘たち』など現代劇にも出演し高く評価される
東映退社後にはテレビドラマ中心に活躍
結婚を期に引退するが離婚後芸能界復帰
『わが青春のイレブン』にて端役だが14年ぶり映画出演
再婚後再び芸能界から遠ざかる

丘さとみさんを偲ぶ意味で今作を選んだ理由は彼女が珍しく地元関西弁で演技しているから

東映時代劇傑作DVDコレクション第50号付属DVDで鑑賞

監督は『七つの顔』『丹下左膳 濡れ燕一刀流』『維新の篝火』『右門捕物帖 紅蜥蜴』『めくらのお市 地獄肌』の松田定次
脚本は『生きる』『宇宙人東京に現わる』『家光と彦左と一心太助』『椿三十郎』『乱』の小国英雄

オープニングクレジットで配役紹介はなぜか最初が脇役の片岡千恵蔵
2番目が主演の月形龍之介
最後は市川右太衛門で締める
東映時代劇ではありがちだが達筆すぎて役名が読みにくい

混みように痺れを切らした外様の松江城主が旗本の鮫洲を追い越した為に無礼の言い合いに
挙げ句の果てに駕籠ごと松江城主を担ぎ上げ橋から川に放り投げる豪快ぶり
山形勲にそういう豪傑な役は珍しい

大阪からわざわざ彦左に結婚を申し込みにやってきた米商人の娘お遊
お遊の父は大坂夏の陣で食料に困っていた徳川軍に大量の米の差し入れをした彦左にとっては命の恩人という縁
お遊の圧に「やれやれ」とタジタジの表情の彦左演じる月形龍之介が面白い
天下の御意見番顔負けの訴えをすることで将軍家光を改心させ彦左切腹の窮地を救うわけだから彼女はかなり重要な位置付け

大久保彦左衛門といえば一心太助
彦左は実在した人物だが太助は架空の人物とはっきりしている
しかし彦左の墓の隣には太助の墓があるらしい
それだけこのキャラクターが愛された証拠
大久保彦左衛門の講談に初登場し人気を博した一心太助
戦前映画に初登場した際に演じたのは片岡千恵蔵で戦後最も多く演じたのは中村錦之助

この時代の普通の東映時代劇としては少々異色
水戸黄門など確かに善玉も演じる月形龍之介ではあるが山形勲までそちら側
他の旗本のメンバーにしても菅貫太郎はいるし悪玉の子分でよく出る顔ぶれ
悪役もよく演じる薄田研二は今回お得意の好々爺ぶり
そうなると敵対する外様大名のリーダー格に原健策で大久保彦左衛門を消したい老中に小沢榮太郎と少々物足りない
片岡千恵蔵や市川右太衛門演じる役は立場上は彦左の片棒を担ぐわけにはいかずむしろ千恵蔵演じる松平伊豆守は大久保彦左衛門を疎ましく思う老中本多上野介側の知恵者
その独特のピリピリ感の人間関係は東映時代劇でなかなか経験できない
最後の最後で男をあげて面目躍如でホッとする

ちなみに「あっぽ」という関西弁はアホの幼児語として本当にいまでもあるらしいがあまり聞かない

配役
彦左衛門の直談判を咎める「知恵伊豆」と呼ばれるキレ者の若年寄の松平伊豆守に片岡千恵蔵
家康から『天下の御意見番』のお墨付きを得ている三代将軍に仕えた頑固一徹の老旗本の大久保彦左衛門に月形龍之介
彦左衛門に信頼を寄せる江戸幕府三代将軍の徳川家光に北大路欣也
彦左衛門の妻になろうと押しかける大阪米商人の娘のお遊に丘さとみ
大久保家に出入りする魚屋で威勢の良さから江戸の名物男で情報通の一心太助に松方弘樹
外様大名を優遇し彦左衛門ら旗本たちの反発を招く幕政に重きをなす老中の本多上野介に小沢榮太郎
旗本を軽視する外様大名の代表格で重左衛門と揉め事を起こす松江城主の堀尾因幡守に原健策
旗本の三浦小次郎に戸上城太郎
旗本の神谷伊織に徳大寺伸
旗本の坂部三十郎に菅貫太郎
本多上野介側近の青山図書頭に三島雅夫
徳川家を蔑ろにして堀尾らとともに倒幕の密談を交わす熊本城主の加藤侍従に沢村宗之助
旗本の近藤登之助に尾上鯉之助
堀江家用人の竹内金兵衛に香川良介
旗本の兼松又四郎に南郷京之助
島津宰相に明石潮
寺沢志摩守に北竜二
町の女に赤木春恵
お遊の付き人で太助に一目惚れするもいつも口喧嘩が絶えないお仲に桜京美
堀尾家家臣に高松錦之助
番士に中村時之助
旗本の金丸大学に月形哲之助
旗本の水野十郎左衛門に津村礼司
旗本の渡辺半蔵に加藤浩
町人に尾上華丈
町人に団徳麿
奏者番に中村錦司
酒井備後守に有馬宏治
宗和に伊東亮英
鮫洲家供先に藤木錦之助
高家に丘郁夫
高家に那須伸太郎
男衆に大里健太郎
加賀爪家用人に源八郎
坂田加賀守に関根永二郎
町人に島田秀雄
町人に疋田圀男
町人に大東俊治
町人に若井緑郎
仲居に富永佳代子
町の女に大江光
町の女に山田光子
お花に高橋漣
太夫に菊村光恵
太夫に紙屋みどり
太夫に玉喜うた子
外様大名の堀尾因幡守との喧嘩により幕府から厳しい罰が言い渡される旗本の鮫洲重左衛門に山形勲
大名贔屓の幕府にいきりたつ旗本軍団「六方組」の大将格の加賀爪甚十郎に木村功
大久保家使用人の笹尾喜内に薄田研二
本多上野介の策により窮地に陥った彦左衛門に同情する将軍家光の叔父の水戸頼房に市川右太衛門

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野川新栄

2.5大久保彦左衛門

2022年1月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

外様大名と旗本がイザコザを起こし、老中は大名寄りの裁定を下す。
旗本の怒りを察知した、天下の御意見番、大久保彦左衛門(月形龍之介)は一心太助(松方弘樹)や押しかけ女房のお遊(丘さとみ)らと将軍家光(北大路欣也)に迫る。
安心してみていられる東映時代劇。

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いやよセブン