Wの悲劇

劇場公開日:

解説

女優をめざす若い劇団の研究生が、ある事件に巻き込まれて主役を演じ、本当の女優になっていく姿を描く。夏樹静子原作の同名小説を、本篇の中の舞台劇におりこみ、「湯殿山麓呪い村」の荒井晴彦と「野菊の墓」の澤井信一郎が共同で脚本を執筆。監督は澤井信一郎、撮影は「愛情物語」の仙元誠三がそれぞれ担当。

1984年製作/108分/日本
原題または英題:The Tragedy of "W"
配給:東映
劇場公開日:1984年12月15日

あらすじ

劇団「海」の研究生・三田静香は、女優としての幅を広げるため、先輩の五代淳と一晩過ごした。翌朝彼女は、不動産屋に勤める森口昭夫という青年と知り合う。「海」の次回作公演が、本格的なミステリーに加え、女性であるがゆえの悲劇を描いた『Wの悲劇』と決定した。キャストに、羽鳥翔、五代淳と劇団の二枚看板を揃え、演出は鬼才で知られる安部幸雄である。そして、事件全体の鍵を握る女子大生・和辻摩子役は、劇団の研究生の中からオーディションによって選ぶことになった。オーディション当日、静香の親友・宮下君子は、芝居の最中に流産しかかり病院にかつぎ込まれた。子供を産むと決心した彼女を見て、静香は自分の生き方は違うと思う。摩子役は、菊地かおりに決定した。静香には、セリフが一言しかない女中役と、プロンプターの役割が与えられた。意気消沈して帰宅した彼女のもとに花束を抱えて昭夫がやって来た。静香がオーディションに受かるものと信じて祝福に来たのだ。彼の楽観さにヒステリーを起こす静香だったが、結局、二人は飲みに行き、その晩、静香は昭夫の部屋に泊まった。翌朝から、彼女は気分を切り変え、全員の台詞を頭に入れ、かおりの稽古を手伝うなど積極的に動く。一方、昭夫は静香に結婚を申し込むが、静香は女優への夢を捨てる気になれなかった。大阪公演の初日の幕があがった。舞台がはねた後、一人舞台に立つ静香を見た翔は、声をかけ小遣いを渡す。彼女にも静香と同じ時期があったのだ。その夜、お礼に翔の部屋を訪ねた静香は、ショッキングな事件に巻きこまれる。翔の十数年来のパトロン・堂原良造が、彼女の部屋で突然死んでしまったというのである。このスキャンダルで自分の女優生命も終わりかと絶望的になっていた翔は、静香に自分の身代りになってくれ、もし引き受けてくれたら摩子の役をあげると言い出す。最初は首を横に振っていた静香だったが、「舞台に立ちたくないの!」という一言で、引き受けてしまった。執拗なマスコミの追求も、静香はパトロンを失った劇団研究生という役を演じて乗り切った。翔は、かおりとの芝居の呼吸が合わない、と強引に彼女を降ろし、東京公演から静香に摩子役を与えた。静香の前に、事件のことを知った昭夫が現われた。「説明しろ」と詰めよる彼に静香は一言もなかった。東京公演。舞台袖で震えていた静香に、翔の叱咤が飛ぶ。静香の初舞台は、大成功をおさめた。幕が降りた後も鳴りやまぬ拍手と、何度も繰り返されるカーテン・コールが女優誕生を祝していた。客席の最後列では、精一杯拍手を送る昭夫の姿もあった。劇場を出た静香は、レポーターに囲まれるが、昭夫の姿を見つけ駆けよろうとする。そこに、事件の真相を知ったかおりがナイフを手に現われ、静香めがけて飛びこんできた。静香をかばい刺された昭夫は、救急車で運ばれた。数日後、引越しをするためアパートを出た静香は、昭夫に連れられてきた空家に立ち寄る。そこには昭夫がいた。もう一度二人でやり直そうという彼に、静香は、そうしたいけど今のボロボロの私よりもっと駄目になってしまうと言う。そして、芝居を続け、ちゃんと自分の人生を生きていくために一人でやり直すからと、涙をこぼしながら微笑んで去って行った。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第9回 日本アカデミー賞(1986年)

受賞

監督賞 澤井信一郎
助演女優賞 三田佳子

ノミネート

作品賞  
脚本賞 荒井晴彦
脚本賞 澤井信一郎
主演女優賞 薬師丸ひろ子

第8回 日本アカデミー賞(1985年)

ノミネート

話題賞 作品部門/俳優部門  
話題賞 作品部門/俳優部門 薬師丸ひろ子
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映画レビュー

3.5劇中劇と物語、薬師丸さんのキャリアが交じりあって

2025年5月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

斬新

薬師丸ひろ子さんが休業から復帰して第4作目。
薬師丸さんの角川映画への最後の出演作品でもあります。
未見でしたけれど、中々良かったです。

序盤は、「探偵物語」の時とあまり変わらない稚拙とも思える薬師丸さんの演技なのだけれど、映画の役の女優としての成長と平行して、薬師丸さん本人の演技も急速に成長していったような強い印象がありました。
これは、演技力なのか。それとも、本当の成長なのか。
劇中劇と映画の物語、そして薬師丸さん本人のキャリアが交じりあって、映画全体に不可思議な深みを感じました。

相手役の世良公則さんの抑え気味の演技も良かったです。

主題歌の「Wの悲劇」は、音域が広くて凄く難しい曲だと思います。
それまで、アイドルとして比較的歌い易い曲を与えられてきた薬師丸さんが、歌唱力を正当に評価されて挑んだ曲なのかもしれません。

観て良かった。
中々の名作だと思いました。

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ねこたま

3.0読んでから観ないと意味がない

2025年5月8日
PCから投稿

原作を舞台劇として、実際に起きている別の事件と並行して話が進む「入れ子構造」になっているので原作を読んでいないと面白さが理解できません。
事件が起きるまでが冗長で間延びしています。
サスペンスサイドより恋愛サイドに重点を置いた演出なのでスリラーを期待すると肩透かしです。

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越後屋

3.5そして女優になっていく

2025年3月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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くまっち

4.0三田佳子さんと三田静香の芝居が心に染みた

2024年11月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

先日放送されたBSの録画を視聴。

圧倒的な芝居をみた。
1番言いたいのは、三田静香(薬師丸ひろ子)の芝居に鳥肌が立った。
次に、翔に扮する三田佳子さんの迫力。
そして世良公則さんの魅力。
三田村邦彦さんも出演していて、なんだか三田だらけの作品を観たって感じ。

序盤はラヴ・ストーリー。
中盤の腹上死から涙腺にスイッチが入った。
芝居の世界の華やかさの裏の厳しさ、切なさ、悲しさ、夢に向かう情熱が心に染みた。
一人で再スタートすることを告白するラストも素晴らしい。
ジブリ作品のようなBGMが、暗い世界に優しく光を照らしていたように思う。

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どん・Giovanni