太平洋ひとりぼっち

劇場公開日:

解説

堀江謙一の実録からなる原作を、「雪之丞変化(1963)」の和田夏十が脚色、コンビの市川崑が監督した青春もの。撮影は「太陽への脱出」の山崎善弘。

1963年製作/96分/日本
原題または英題:My Enemy,the Sea/Alone Across the Pacific
配給:日活
劇場公開日:1963年10月27日

ストーリー

一九六二年五月一二日深夜西宮港を、二人の親友に見送られてヨットに乗り移った青年がいた。堀江謙一、この二二才の青年のあやつるヨットは、“マーメイド号”という、長さ五・八メートル、幅二メートルのもの。風のみで走るように設計された船は、三十九時間も大阪湾内を浮きつづけたあげくやっと北風に乗り、大阪湾を乗りきることができた。が海の荒れが彼を待っていた。食べものは吐く、ヨットはキリキリ舞い、しかしその代償として、最も恐れる巡視艇にみつからずにすんだ。彼の行為は日本の法律では許されず密出国となるのだ。悪天候と体力の消耗、それに狐独との戦いは、人間の限界を越したものである。憧れの太平洋に出た日、台風三号に襲われた、大きな巻き波にふりまわされるヨット、苦しい戦いは、堀江青年の苦心の錨操作できりぬける事が出来た。二日二晩の苦悩は彼に母国への郷愁と、孤独感を残した。飲めない酒に心をまぎらわそうとするのも、そのためだ。食事はカン詰を副菜に、水不足のため、ビールで飯を焚いた。ハワイを過ぎた頃、マーメイド号は一万トン程の貨物船に出会った。無精ヒゲで真黒にやけた小さな日本人が片言の英語で渡りあう姿に船上の人々は驚嘆の目をむけた。パスポートの提示を要求されて、危うくこぎ去った堀江青年、緑色の海原、目指すサンフランシスコに近づいたのだ。碁盤の目のようにまたたいている街の灯、長い光の列を目前に、「お母ちゃん、僕きたんやで」青年堀江謙一は操舵席に両足をふんばって立ち、大声で叫けんだ。百日に及ぶ太平洋征服の夢が今実現したのだ。

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映画レビュー

3.5ヨットへの愛

2024年3月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ヨットが好きなんだな。

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karasu

4.0密室劇になりそうでならない凄さ。

2022年10月16日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

原作付きでそちらを読んでいないので的外れだったら申し訳ないが、普通にシチュエーションから考えたら密室劇になりそうなものだ。 それを回想シーンを挟むことと、びっくりするくらい多くのカットを組み合わせることで窮屈さを感じさせないような演出がされていると思う。 時代的に勿論フィルム撮影でしょうから、どんだけ時間と金かかってんのか?!と観ていて血の気が引いた。すごいカットの量‥‥。 両親共この映画をリアルタイムで観ていたようなので、裕ちゃんだし、ヒットした映画のようですね。 浅丘ルリ子も激カワだし、市川崑の映画人としてのド根性も感じられたし、大満足です。

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胃袋

3.5本作のテーマはヨットの航海を描くことではありません

2020年6月28日
Androidアプリから投稿

1962年、23歳の堀江謙一青年が世界初の単独無寄港での太平洋横断を、小さなヨットで成し遂げた実話を映画化したもの 彼が帰国後に出版した手記が原作 よって94日間の独りでの航海を描くわけですから、登場人物が一人だけの映画になってしまうのは確定しています 出港するまでの、経緯を回想シーンで入れる、雄大な海洋シーンを観せる、もちろん嵐とかシケとかの自然の猛威のシーンをいれるなどといった工夫をこらしても、猛烈に退屈なシーンが連続するだろうことも同じく確定しています この難しい仕事を、さすが市川崑監督が乗り越えて見せています 回想シーンには森雅之、田中絹代を父母に据え、浅丘ルリ子を妹に、学校の先輩にハナ肇、船大工に芦屋雁之助を配して、観客の印象を強くしています 撮影も工夫があり、出港までの国内シーンは、屋外シーンでは曇天を選び、室内撮影では照明を暗くして彩度も落とした陰々滅々な雰囲気で撮影しています 領海内は悪天候です それにより外洋に出たときの、眩しい陽光、大海原と開放感との対比を大きく見せています またサンフランシスコ到着前は寒流による霧のシーンを挟むことで、パスポートを持たずに日本を出国しアメリカに入国しようとする不安を表現しています もちろん演技もそれに合わせてあります 航海中は石原裕次郎だけの独り芝居です モノローグだけの芝居です これで大半の時間を持たせることが必要になります 容易なことではありません しかし、さすが大スターは写っているだけで画になっています モノローグと演技も、関西訛りで滑舌をわざと良くない一般人のものにしています 態度も腰の低い普通の青年にしてあります そして航海の始めの頃の張り切った口調、中盤の航海が進まない焦燥感と孤独感に心身滅耗状態に陥っているところを棒読み風での表現、終盤の成し遂げた充実感と疲労感のある口調と演技の使いわけをしてみせています サンフランシスコ入港シーンは実際にロケ撮影していて素晴らしいです 金門橋をくぐり抜け、アルカトラズ島を横に見て湾内を進むシーンは感激します カタルシスがあります 今ではグルメスポットの観光地で有名なフィシャーマンズワーフの西側の方にある桟橋に沿岸警備隊に曳航されたように見えます 本作のテーマはヨットの航海を描くことではありません 敗戦して占領下に置かれ自信喪失していた日本の自信回復です この航海の丁度10年前1952年に日本は独立を回復したのですが、まだ日本人は自信を回復してはいませんでした しかしこの青年は誰も成し遂げたことのない単独無寄港太平洋横断に挑戦することで日本人の自信回復を目指そうとしたのです だから米国を目指したのです サンフランシスコは日本が独立を回復をしたサンフランシスコ条約締結の地だからです だから無意識にそこを目指したのです サンフランシスコでなければならなかったのです そして中盤では、丁度20年前ここから南に1000キロのとこでミッドウェー海戦があり、そこで多くの海の先輩が犠牲になったと長い黙祷をしたと美しい夕焼けに染まる大海原のシーンで語られます サンフランシスコでは好奇の目で集まる米国人達の顔を大勢アップで写して、世界に再挑戦していく緊張を表現しています 市川崑監督はこの航海の本当の意味をキチンと読み解き映画に仕上げみせていることがわかります 本作公開の翌年1964年、東京オリンピックが開催されています 前回の東京オリンピック自体、敗戦で焼け野原になり自信喪失した日本が、復興をとげ再度国際社会に乗り出していこうという、日本人全員が自信を回復する意味を持つ祭典でもあったのです その意味で、この航海は東京オリンピックの先取りしたものと言えるのです 本作を撮った市川崑監督が、1964年の東京オリンピックの公式映画を撮影し日本映画空前の大ヒットを記録したのは偶然ではなく、必然であったのです

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あき240

3.5数々の障害を越えて挑戦を続ける若者

2013年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、CS/BS/ケーブル

興奮

総合70点 ( ストーリー:75点|キャスト:60点|演出:65点|ビジュアル:65点|音楽:65点 )  滑舌悪いし科白棒読みだし、昭和の大物俳優といわれる石原裕次郎ってその人気と名声とは裏腹に演技は相当下手なんじゃないだろうか。周囲の共演者の演技がまともなので余計にそれが目立つし、その実力で場面の解説までされると作品全体の質が低く感じる。波にもまれる船の映像もたいしたことはないが、制作時期を考えればこれは仕方がない。  だが自分のやりたいことをとことん追求するという実話を基にした物語はなかなか面白い。航海途上に起きた失敗談や苦労話を折りませながら孤独に耐えてサンフランシスコを目指す。そして許可がとれなかったり周囲の支持を得られなかったり船を作ったりお金を用意したりといった、航海前の障害を時折見せてくれる。今ならばこのようなこともより良い映像と演出で描けるかとも思うが、それでも一人の若者が実行した冒険を楽しむことが出来た。

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Cape God