零戦燃ゆ

劇場公開日:

解説

第二次世界大戦で活躍した名機零戦の誕生から散華するまでを、それに関わった人間たちの運命と共に描く。原作は週刊文春連載中の柳田邦男の同名小説。脚本は「日本海大海戦 海ゆかば」の笠原和夫、監督は「エル・オー・ヴィ・愛・N・G」の舛田利雄、撮影も同作の西垣六郎がそれぞれ担当。

1984年製作/128分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1984年8月11日

ストーリー

銀色に輝く新型戦闘機・零戦の勇姿に魅せられて横須賀海兵団に入団した浜田正一と水島国夫は、それぞれ浜田は航空兵、水島は整備兵と別な道を歩み活躍していた。入団してから2年後、昭和16年12月8日、日本は連合軍に対して無謀な戦いを挑んだ。浜田と水島は台湾・高尾基地にいた。日本海軍はハワイ真珠湾に奇襲をかけ、航空兵力による初の大戦果をあげた。高尾基地から飛びたった浜田たちの零戦の大編隊は五百カイリを越えて、フィリッピンのクラークフィールド基地を攻撃した。その零戦は“ゼロファイター”と呼ばれ、連合軍に悪魔の如く恐れられた。浜田は連合軍の戦闘機を次々と撃墜していった。昭和17年6月4日、米軍はアリューシャン列島アクタン島で、不時着した零戦を完全な形で手に入れた。伝説化していた零戦の秘密のベールが次第に剥がされていった。6月5日、ミッドウェイ海戦で日本海軍は大敗した。空母、赤城・加賀・蒼竜・飛竜が沈没。歴戦の搭乗員の大半を失った。内地に帰った水島は、吉川静子と知り合う。死んだ父親が作っていた零戦が空を飛ぶのを見たい、という静子の願いを、水島と浜田はかなえてやった。そして二人は、ラバウル航空隊へと転属していった。昭和18年4月8日、山本五十六長官のブイン、パラレ方面への前線視察護衛隊を、浜田たちは命じられる。だが山本長官の行動は全て米軍に筒抜けで、浜田たちの必死の反撃も虚しく山本長官機は撃墜されてしまう。山本長官の死は伏せられ、生き残った浜田たちには何の咎めもなかったが、海軍の出処進退の伝統によって浜田たちには連日の出撃が命じられた。死に場所をえるようにとの上層部の配慮であった。仲間たちは次々に死に、水島は浜田が使い捨ての将棋の駒のようにボロボロになって殺されてゆくことに激しい怒りを覚えるのだった。その浜田はF4Uによって火ダルマにされ辛くも脱出、命だけは助かったものの全身に大火傷を負い、二度と零戦に乗れない身体になってしまった。母親のイネは温かく息子の帰りを待っていた。しかし、戦うことのみにとり憑かれている浜田は手術をうけ、再び零戦に乗る。水島はそんな浜田を救うため、愛する静子に浜田との結婚を納得させる。静子の愛だけが浜田を救えると信じたのだ。昭和19年6月米軍はサイパン、テニアン島を占領、大空には零戦をはるかに上回る性能のグラマンF6Fヘルキャットが登場、零戦は特攻機として砕け散るしかなかった。空の守りがなくなった日本の空に世界最強のボーイングB29の編隊が襲いかかってきた。昭和20年3月、米軍が沖縄に上陸。4月戦艦大和沈没。6月沖縄陥落。静子が筑城航空隊の浜田のもとに行こうとしたその日、B29の編隊が名古屋を空襲してきた。女学生を誘導する静子の視界を白い閃光が覆った--。静子の死を水島からの手紙で知った浜田は、唯一機、米軍機の大編隊へと最後の出撃をするのだった。

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映画レビュー

3.5日本の特撮は、零戦と同じ運命を辿ったのです

2020年9月24日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1984年の公開
零戦をメインの題材にした映画は、もう一つ1966年公開加山雄三主演の「ゼロファイター大空戦」があります
本作でも加山雄三は冒頭登場します
零戦開発の海軍側の主務者として、最新鋭戦闘機の零戦を主人公達に見せる役です
まるでその作品から本作への引き継ぎに登場したかのようで心憎い配役です

1940年の正式採用から終戦に至るまでの5年間で、零戦の位置付けがどう変わっていったのか
それを整備兵とエースパイロットの二人の同期の目を通して描いています
それは同時に太平洋戦争に於ける日本の栄光と敗退の物語そのものとなります
零戦を軸として、それを良く整理して展開されてあり、脚本は手堅くこなれていたと思います

ただ主人公の二人、ヒロインとも演技が駄目過ぎで困惑してしまいました
堤大二郎も橋爪淳も目線すらおかしく目力も無く演技になってすらいません
早見優は可愛いだけでこれも演技以前です
なんら現代と変わらない十代の女性がこのような運命となるのだという共感を得るための配役なのでしょうが、彼女が写るだけで画面の空気は現代になってしまっています
日本生まれでハワイ育ちの女優を配役する何らかの意図があったのかも知れませんが、全く活かせてません

特撮は川北紘一さん
円谷英二、有川貞正、中野昭慶の東宝特撮の系譜に連なる正統なる後継者です
この人が平成のゴジラシリーズの第二作目以降
、平成モスラシリーズ二作、この全ての特撮を担った方です
本作と同年の5月には「さようならジュピター」の特撮も彼の手になるものです

特撮は、過去の東宝の戦争映画の特撮シーンを流用したものが多く、新しく撮影したものは、特撮シーンの四分の一程度の分量ほどでしょうか

大スケールのラジコンを飛ばしているのは、実際の大空を背景にしているので、結構良い出来です
伝統の繰演によるB-29迎撃シーンは出色の出来映えで、東宝特撮の先輩達や、亡き円谷英二も喜んでくれるものだと思います
しかしその他の特撮はどうか?
進化なしです
どうかすると退化すらしています
1960年の「太平洋の嵐」の特撮の方が優れていたかも知れません

2001年宇宙の旅は1968年、スターウォーズは1977年の作品です
そして本作は1984年なのです
一体その間何をしていたのでしょうか?

そして本作の前年1983年にはブレードランナーが公開されていたのです
彼我の差は、太平洋戦争の末期のようになっているのです

戦争映画もSF映画も特撮という意味では変わりありません、同じです
モーションコントロールカメラなどの欧米の特撮技術の革新は本作にはなんら取り入れられていません
本作はガラパゴスになった東宝特撮の伝統芸だけで撮られているのです

1950年代から1960年代の半ばまでの期間、日本の特撮は、世界最高峰を誇り無敵の存在だったのです
それが、まるで本作で描かれた零戦のように次第にライバルに劣る時代遅れの存在になってしまっていたのです
日本の特撮は、零戦と同じ運命を辿ったのです

ラストシーンで零戦が火葬されます
それはまた日本の特撮の火葬であったのかも知れません

本編の美術班が作った実物大零戦のクォリティーが素晴らしいだけに、一層惨めです
情けないです
悔しいです

そういうことから、本作をあまり高くは評価できません
コクピット内部、エンジンの細部、引き込み脚の細部まで精密に作りこんだ零戦の実物大セットのクォリティーの高さに星一つオマケです

特撮の川北紘一さんを責めているのではありません
円谷英二の死後、その技術の研究発展を欧米に求めて来なかった特撮現場全体の責任は確かにあります
しかし欧米の特撮技術への研究と投資を怠り、そして特撮に対する意欲や見通しを持たなかった映画会社やプロデューサーの責任の方が遥かに重いのです
むしろ川北紘一さんは古い残された特撮技術でこれだけの仕事をしてみせたのです
まるで零戦の特攻みたいなものだったのです

本作のラストシーンは日本特撮の敗戦を象徴していたのです

川北紘一さんは、その後平成ゴジラ・モスラシリーズをして日本特撮の復興を推進していくのです

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あき240

2.5零戦を燃やす

2020年8月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

海軍の戦記はもうネタがなくなり、零式戦闘機の開発秘話を期待したのだが不発。
それにしても音楽が独特で意味不明。

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いやよセブン

4.0零戦の栄光と影

2016年8月10日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

30年も前の映画にしては、戦闘機の飛行シーンはなかなか。ちょっと場違いみたいな音楽とか、説明的な字幕とか、なるほど ひと昔前の特撮っぽい。でもちゃちい感じはなかった。「永遠の0」とかより、零戦の航空性能が全面に出ててワクワクした。
人間ドラマもわかりやすいし、感情移入しやすい。大和魂とか、神がかってる戦闘機とか、日本のヒロイズムが全面に出てる感は否めないけど…。
真珠湾から終戦までのあいだに、初めのうちは世界最高峰だった零戦も、連合諸国の技術力に追い抜かれていく。それでも零戦を信じ、空へ消えていったパイロットたち。そして彼らの死が、同様な死に場所を求める同胞たちをまた、同じ場所へ導く。それを止めようとする整備士の気持ちが、なんとも胸に響いた。

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みほきち