白雪先生と子供たち
劇場公開日:1950年1月29日
解説
中野六中の教師森岡昇の原作『太陽は子供の上にも』より「花の日月」「あきれた娘たち」の八住利雄が脚色し、監督は「美貌の顔役」の吉村廉。撮影も同じく「美貌の顔役」の峰重義の担当。主演者は「晩春」の原節子「花の日月」の山口勇「虹男」の宮崎準(準之助あらため)「美貌の顔役」の関千恵子、瀧花久子らと劇団青い鳥の茂崎幸雄、小濱崇らである。なお企画は「愛染草」「花の日月」の土井逸雄で、日本教職員組合との協力作品である。
1950年製作/89分/日本
配給:大映
劇場公開日:1950年1月29日
ストーリー
東京都のはずれにある明風小学校の校庭の片隅には子供たちが色々と遊んだり学んだりする池がある。この池を管理している六年二組を担任する女教師雨宮加代子は、最近しきりとこの池の鯉が盗まれ、しかも同時に児童達の間に野蛮な言葉がはやりメンコやベイゴマの賭け事をする児童のある事を知り心傷めていた。組の級長服部良夫は母のはまと二人きりの貧しい暮しであった。はまはPTAの有力者原島政道の染料工場の小使として働いているので、その恩義を深く感じ気の進まぬ良夫に原島の息子敏彦に宿題を見てやるように言い含めていた。ある朝雨宮は浮浪児の常治が敏彦始め一部の児童に悪影響を与えている事を知った。日曜日のひっそりした校庭で良夫は常治が鯉を盗んでいるのを発見し常治と争った。その日当直だった雨宮は、このことは先生に任かしてくれと良夫にいいふくめ、常治を説得して自分の下宿に連れて行った。常治はそれから雨宮の計らいで、二組に出入りすることになったが、学力の低下はどうすることも出来ず改めて三年を受持つ橋本先生の組に編入することになった。橋本は表面は、雨宮の教育方針に厳しい批判の言葉を投げかけていたが心の底では、真摯な情熱をたたえ何かにつけてその行動をかばっていた。ある日雨宮が病気で休んでいる時、敏彦が自治会での決定事項を破る行為をしたため良夫は母の立場を案じながらも意を決して雨宮に敏彦の行為を告げた。敏彦は深く良夫を恨み、母のはまも恩人の子に対して何をするかと良夫をせめた。そのころ原島が寄附した理科室の顕微鏡が何者かの手によって盗まれた。雨宮は常治を連れてこの教室に入って来た時、常治が顕微鏡に異常な関心を持っていた事を思い浮べた。それに前後して常治は勝気な雨宮の妹千絵に反撥して彼女の下宿を飛び出したのであった。そして常治が教室に忍び込んだが、常治の手には白い野花が握ぎられ、それを顕微鏡で見ようとして来たのだが、既に顕微鏡は盗まれている。その様子を見た雨宮は犯人が常治でない事を知って一安心した。原島の染料工場が再開したので汚毒物が池に流れ込み、清く澄んでいた池が濁り鯉は次々と死んでいった。児童達は抗議したが原島は雨宮が児童達をそそのかした仕業と誤解して受附けなかった。児童達はそれ故泥だらけになって池を守ろうとした。雨宮はPTAに協力を求めたが、その結果雨宮を辞職の決意に追い込ませた。だが悔悟した敏彦は池の中にぶち込んだ顕微鏡をとりに行き、良夫をこまらせるため自分が盗んだと白状した。そしてあくまでも池を守ろうとする純心な児童達の姿に原島の心も動かされた。やめようとする雨宮をひきとめる児童達のさけびに雨宮は感動され「あなた達がいる限り、先生は決してやめないわ」と言った。児童達の協力と友情によって学校も明るくなった。校庭の池も再び清澄な水をたたえ始めた。