ジャズ大名

劇場公開日:

解説

江戸時代末期、アメリカから駿河の国の小藩に流れ着いた黒人三人が、音楽好きの大名と出会い、城中でジャムセッションを繰り広げる姿を描く。筒井康隆原作の同名小説の映画化で、脚本は「近頃なぜかチャールストン」の岡本喜八と「南極物語」の石堂淑朗の共同執筆。監督は岡本喜八、撮影は「童貞物語」の加藤雄大がそれぞれ担当。

1986年製作/85分/日本
原題または英題:Dixieland Daimyo
配給:松竹
劇場公開日:1986年4月19日

ストーリー

南北戦争が終り、解放された黒人奴隷のジョーは、バーモント近くの激戦地跡で弟サム、従兄ルイ、叔父ボブの3人に出会った。彼らはニューオリンズから船に乗り、故郷のアフリカへ帰るため楽隊でもやって船賃を稼ごうと、ジョーが中心になって演奏を始めた。ボブのクラリネット、ルイのコルネット、サムの太鼓、ジョーのトロンボーンと、繰り返し演奏するうち、曲は軽快にジャズらしくなり、4人は夢中になって来た。4カ月たち、メキシコ商人にだまされた4人は、香港行の船の中だった。ある日、ボブが鳴らなくなったクラリネットを前に、病気で死んだ。ある大嵐のなか、三人はボートで船から逃げ出した。彼らのボートは、駿河湾の庵原藩に打ち上げられた。庵原藩の藩主、海郷亮勝は大の音楽好きで、家老の目を盗んではふところから篳篥を出して吹いている。彼には女らしい文子と、少年のように勇しい松枝という二人の妹がいた。ジョーたち三人は医師、玄斉のところに運び込まれる。亮勝は彼らたちにひとめ会いたいと願うが、家老の石出九郎左衛門は許してくれない。江戸幕府からは、黒人の処分は亮勝に任せるとの命令が入った。亮勝は城の地下座敷牢にジョーたちを入れる。江戸から世継ぎ誕生の知らせが来た。亮勝は喜ぶが、松枝のひと言でそれが不義の子だとわかる。監督不行届を恥じた九郎左衛門は、切腹をすると騒ぎだす。亮勝は切腹と交換にジョーたちと会うことにした。鈴川門之助を通訳に、亮勝はここに流れつくまでの話を聞いた。そして、サムが桶をひっくり返して、火鉢の火箸で叩き始め、ルイがコルネット、ジョーがトロンボーンとジャズ演奏を始める。亮勝はボブのクラリネットを直し、吹き始めた。格子戸を外した座敷牢は、一転、ステージに変わった。ジョーたちの演奏に、城中のものが鼓と横笛、算盤、薩摩琵琶、琴、鍋、釜、桶、三味線などで加わり、大ジャム・セッションが始まった。その上を、江戸に向かう討幕派、彼らと敵対する幕府の兵、百姓一揆たちが駆けぬける。亮勝が彼らのために城を開通させたのだ。やがて夜が明け、新政府軍、殿銃隊が朝もやの中に消えて行った。時は、明治元年!

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映画レビュー

4.5物語を放棄して突き進むジャズ演奏のカタルシス

2024年9月30日
PCから投稿

岡本喜八生誕100周年記念の上映会で、久しぶりにスクリーンで見直すことができた。しかも35mmフィルムでの上映! いま改めて観ても素晴らしい作品だし、岡本喜八の反骨精神は現代でも通用すると思うのだが、まあ、序盤の黒人たちが日本に漂着するまでは結構タルい。これは21世紀の感覚だからタルく感じるのではなく、昔からずっと何回観てもタルいのだが、監督の遊びココロをぶち込んだシーンであることは伝わってくるので、愛嬌はある。

とはいえ白眉なのは、やはりクライマックスの延々と続く演奏シーン。『江分利満氏の優雅な生活』でも違う形で試みられていたが、物語の定石をヒックリ返し、もはやどこに進んでいるのかわからないまま、ヘンなカタルシスが訪れて気がつけば涙ぐんでしまう。そして、そのアバンギャルドなちゃぶ台返しが、完全に「戦争なんてくそくらえ」という映画のテーマと直結しているのがすごい。

上映イベントでは、映画のエンドクレジットが終わるや、最高のタイミングでおじいちゃんおばあちゃんたちによるディキシーランドジャズバンドが客席から乱入してきて、そのままミニコンサートが始まるという心憎い演出で、あんなにシームレスに映画と生演奏が繋がった成功例を他に知らない。映画と音楽の最高の相乗効果を堪能しました!

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村山章

3.5ジャズと幕末というオシャレな組み合わせ

2024年10月21日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

原作未読です。
原作を忠実に映像化したということです。
一か月前くらいにBSで放送されたものを録画しておいたのがあったので視聴しました。

幕末の日本に、ジャズが入ってきたという架空の物語なのですが、なんだかどこかリアルでしたし、そもそも幕末とか江戸時代という設定に疑問を感じている昨今ですから、これは本当のことだったのかもしれない、という氣持ちで視聴しました。私がよくする視聴方法です。
リアリティがある描写ではありませんでしたが、斬新で印象に残る作品でした。

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Don-chan

3.0ナンセンスにカオス

2024年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

楽しい

 南北戦争で解放されたジョーたちは、故郷アフリカを目指す。しかしだまされて乗せられた船が難破し、駿河の庵原藩にたどり着いてしまう。藩主海郷亮勝は、篳篥(ひちりき)を吹く音楽好き。しかし、世継問題に幕末の動乱と悩みが多い。
 筒井康隆の原作は読んでません。作者や、出演者が好きそうなナンセンス時代劇。ラストは、笑えるカオス。財津一郎が楽しいです。
 琵琶がバンジョーのような音になるのが意外。篳篥の咥えるところにある葦舌(ろぜつ)が、クラリネットのリードになるアイデアも面白い。

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sironabe

カオスの中に響く平和

2024年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

岡本喜八 生誕百周年記念プロジェクト - その9

 原作・筒井康隆 x 監督・岡本喜八 という異能の組み合わせによる怪作です。時は幕末、国の行く末が不運急を告げる時。漂流ボートで日本に流れ着いた黒人ミュージシャンの影響でお殿様がジャズ演奏に目覚めてしまうというお話です。

 そもそもが突拍子もないお話なのですが、岡本監督の脚色で終盤それが更にアクセル全開になります。官軍・佐幕派が入り乱れて斬り合いをしている傍で、ええじゃないかの大群が押し寄せ、人種入り乱れたジャムセッションに三味線・琴・琵琶・横笛、更に、算盤・鍋釜・洗濯板までが混じり合い、更に何故かミッキー・カーチスさんがエレキギターで乱入すると、山下洋輔さんがピアノを弾き始め、タモリさんがチャルメラを吹くという出鱈目さです。そのカオスの竜巻きには

 「こんなバカバカしい世の中やってられるかよ」

という哄笑が響いていました。でも、その一方でなぜか、「こんなバカな映画を上映できるなんて、やっぱり平和は大切だなぁ」としみじみ感じたのでありました。

 そして、本作のエンドロールが終わった途端、客席通路にスポットライトが当たり、外山喜雄とデキシーセインツのバンドが華やかな演奏を繰り広げながら行進しステージに上がりました。そのタイミングと華やかさがカッコいい~っ。そして、それからのサービス精神あふれる演奏で本当に楽しいひと時を送る事が出来ました。最後の "What a wonderful world” ではウルッと来てしまう不覚。やっぱり平和は大切だぁ。

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La Strada

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