サード

劇場公開日:

解説

一人の少年院生が、少年と大人の狭間を彷徨しながらも、成熟に向って全力で走り抜ける姿を描く、軒上泊原作『九月の町』の映画化。脚本は「ボクサー」の寺山修司、監督は「日本妖怪伝 サトリ」の東陽一、撮影は川上皓市がそれぞれ担当。

1978年製作/103分/日本
原題または英題:A Boy Called Third Base
配給:ATG
劇場公開日:1978年3月25日

ストーリー

関東朝日少年院は三方を沼で囲まれている。鉄格子の中で、少年達は朝早くから点呼、掃除、食事、探索等の日課を黙々とこなす。元高校野球の三塁手として活躍した通称サードもその少年達の一人であった。しかし、数日前、上級生のアキラがサードの優等生ぶりが気に入らずケンカをしかけたため、二人は単独室に入れられていた。ある日、サードの母が面会にやってくる。退院後の暮しをあれこれ心配する母に、サードは相変らず冷淡な態度を示すのだった。少年達が待ちこがれる社会福祉団体SBCがやってくる。三ヵ月に一度やって来るこの日だけが、若い女性に接する事ができるのである。SBCとのソフトボールの試合中、一人の少年が院に送られてくる。サードの仕事仲間で数学IIBだけが取得の、IIBと呼ばれている少年である。ある日、農場で一人の少年が逃走した。誰とも口をきかなかった、緘黙と呼ばれる少年である。その騒ぎにまぎれて院の生活に馴じめないIIBも逃走を図るが、やがて連れ戻される。サードはそんなIIBを殴り倒す。走っていくなら何処までも走れと、無言で語るサードの表情には、確固とした決意が読みとれた。サードの頭の中に在るのは、ここへ護送される途中に垣間見た、祭りの町を走り抜ける夢であった。彼が「九月の町」と名付けたその町は、彼が少年から大人へと成長する時に、彷徨しながら通りすぎる青春であった。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第2回 日本アカデミー賞(1979年)

ノミネート

作品賞  
脚本賞 寺山修司
主演男優賞 永島敏行
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映画レビュー

3.5道を踏み外した少年の走り続ける足

2021年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

少年院送りになった高校生が主人公の内省的な青春映画の佳作。少年院の中の生活が興味深く描かれていて面白く観た。軽率と無知の未熟さが、性とお金だけに関心が行く高校生の危うい姿を率直に描いている。東陽一監督のドキュメンタリータッチの堅実さと冷静な視点が生かされた乾いた演出が良かった。全体のイメージは暗い映画でも、寺山修司の脚本の面白さもあり、この脚本と演出のバランスが内容と合っていて、映画として不思議な魅力がある。

施設内で喧嘩などのトラブルがあった時に、少年たちで会議を開き解決策を模索するところがいい。たどたどしい弁論大会の様相ではあるが、実直で飾らない少年たちの素直な考えが語られている。冷静にさえなれば、どんな少年たちにも相手を説得させるだけの常識や理性があるのだ。それと主人公のかつてのクラスメイトが少年院に収監されてから事件の内容が描かれる構成も、映画の語り方として上手い。時系列通りの単調な構成では、ドキュメンタリータッチが勝ってしまう。主人公が置かれている状況からその時何を考えているのかに映画らしい表現がある。
主人公は、野球のサードをしていた。独房にあたる静思室で彼は変な夢を見る。自分がサードを守っていると相手チームのランナーが続いてホームベースへ向かう。そして、いざ自分がバッターボックスに立って打つと、ホームベースが無くなっていて、再び走り続けなければならない。道を踏み外した少年の先が見えない将来に対する不安がイメージとして映像化されたラストシーン。走る足のショットがいい。

  1978年 10月12日  ギンレイホール

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Gustav

1.0間がやたらと長い。

2021年11月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

間がやたらと長い。

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くそさいと

2.0永島敏行の若い身体を見る映画

2021年3月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

昭和の雰囲気はわかるけど…
みんな役者として演技が下手すぎ(笑)
寺山修司の脚本あまり意味はなかった

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mamagamasako

4.0ポスト団塊世代を使って全共闘世代が自分たちの苦悩を表現した映画です

2019年10月4日
Androidアプリから投稿

ATGの映画、寺山修司の脚本
それでイメージされる映画そのものです
前衛的な意味深なシーンや哲学的な台詞の世界です
しかし、その世界はねっとりとしていて一度はまりこむと抜け出てこれない力があります
この世界は体験すべき価値があると思います

永島敏行、森下愛子は良い配役で本作を成功に導いたと言えると思います
そして特に峰岸徹のヤクザは強烈な印象を残しました

少年院やサードが元いた高校の俳優達はみなポスト団塊世代です
しかし本作が訴えるのは、ホームベースという目標を失いいつまでもグランドをぐるぐると駆け回る他ないのだという全共闘世代のレクイエムです
サードの見る悪夢とは、60年、70年と安保改定を阻止できず、次々とランナーを返してしまった悪夢の中に永遠に閉じ込められたという意味でしょう
つまり少年院の中に居るかのようだという彼らの苦悩の訴えであったと思います

ポスト団塊世代を使って全共闘世代が自分たちのその苦悩を表現した映画なのです
これは1971年の藤田敏八監督の八月の濡れた砂と同じです

この構図は21世紀にまで連綿と続いており、老人達が若者達を使い彼らの妄執を未だに遂げようとしているのです

そもそもサードはホームベースから見れば左の孤塁なのです

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あき240