ゴキブリたちの黄昏
劇場公開日:1987年
解説
人間に忌み嫌われながらも逞しく生きるゴキブリたちの姿を、実写とアニメーションを合成しながら描く。脚本・監督はこれが第一回作品となる吉田博昭、撮影は三隅研次がそれぞれ担当。
1987年製作/105分/日本
配給:ヘラルド・エース
劇場公開日:1987年
ストーリー
サイトウさんは広告会社に勤めるデザイナー。30歳を越えているがまだ独身で、女っ気はない。趣味はプラモデルづくりと料理で、特に料理に関しては異常に熱心だった。ところが後片付けにはまるで興味がなく、台所には食器があふれ、サイトウさん家はゴキブリたちにとって天国だった。サイトウ家に棲みついているゴキブリは、情熱的な美少女ゴキブリのナオミ、その許婚者でシティボーイのイチロー、スポーツマンのタカシ、ひょうきんな評論家のヤスオ、ナオミの親友のパセリ、ゴキブリ神話に詳しいナオミの祖父、ゴキブリ国の有力者であるイチローの父、イチローの母、教授と呼ばれるゴキブリたちのリーダーなど。その他に人間との戦争に生き残った老兵たちがいた。サイトウ家の食事というとコシヒカリのご飯に、新鮮な肉や魚、ドイツ製のデリカテッセン、ノルウェーのサーディン、ボルドーのワインなど豪華版。ここに棲むゴキブリたちにとって食を求めてさ迷う時代は終わり、生活の質の向上を求める時代に入っていた。ナオミとイチローが結婚を間近に控え、アパートの国(モモコ家)からハンスというゴキブリ青年が逃亡してきた。ナオミは一目でハンスに魅せられてしまう。ハンスはさまざまなトラブルを残して帰国したが、ナオミもその後を追った。ところが、ハンスの国はゴキブリにとって地獄だった。ゴキブリ嫌いのモモコのために罪もない者たちが、“ゴキブリホイホイ”の中で家族の名を叫びながら死んでいく。そんな危機の中でゴキブリの指導者ナイロスは“人間が絶滅した後、ゴキブリの「千年王国」が実現するのでそれまで頑張ろう”と説く、人間による殺戮と飢えの中でナオミとハンスは愛し合った。一方、サイトウ家ではイチローが必死になってナオミの行方を捜しており、決して結婚式を取り止めようとはしなかった。ところが、式の前夜、ひょんなことからモモコとサイトウさんが出逢い、恋仲になった。偶然モモコと共にサイトウ家へ帰国したナオミはイチローと再会し、ショックで一時的に記憶を失った。翌日、イチローとナオミの結婚式は“死の饗宴”となった。ゴキブリ嫌いのモモコがサイトウさんとディナーを終えた後、イチローたちの姿を見つけ、“死のスプレー”を吹きつけたのである。ナオミとイチローは命からがら逃げたが一瞬何が起こったのかわからなかった。教授は「サイトウさんに会ってみよう」と言ったが、翌朝、死体となって発見された。モモコはサイトウさんにとって何年ぶりかの女で、「愛しているならゴキブリをなんとかして」と言われて何もしないわけにはいかない。そしてゴキブリのホロコースト(皆殺し)が始まった。次々に殺されていくゴキブリたちの運命のカギは、「謎のゴキブリ神話」の中に隠されていた。そしてナオミは子供を産み、子孫を残すのだった。