劇場公開日:1964年3月14日

解説

三島由紀夫の同名小説を「黒の爆走」の舟橋和郎が脚色、「眠狂四郎殺法帖」の三隅研次が監督した文芸もの。撮影もコンビの牧浦地志。

1964年製作/95分/日本
配給:大映
劇場公開日:1964年3月14日

あらすじ

東和大学剣道部主将国分次郎は、純粋に剣の世界に打ちこんでいた。剣に全生命をかける厳しいキャプテンの姿を、新入部員の壬生は神の如く、偶像視し、彼の行き方を学ぼうとした。国分の同級生で三段の賀川は、剣を愛し乍ら、適当に遊ぶタイプで、国分の息苦しい考え方と対照的であった。こうした部内の不満を一身に受けて、監督する木内もまた勝負で片がつく剣の世界を愛していた。強化合宿のシーズンがやってきた。合宿費用捻出のため、デパートにアルバイトに出向いた賀川が、勤務中禁煙の規則を破った。国分は部員全員を道場に集め制裁に処した。ますます国分に対して競争心をかられた賀川は、学内ナンバーワンと言われる伊丹恵理を使って国分を誘惑しようとした。恵理から国分が彼女の肉体を求めたことを聞き賀川はかすかな優越感に酔った。夏の強化合宿の日、国分の見事な統率力に反溌を持った賀川は、剣道部に厳禁されている水泳に誘った。ためらう部員に国分が恵理を誘惑したことを説き、偶像から下した。海に向って走る部員たち。唯一人、壬生だけは、国分を裏切れず合宿所に残るのだった。木内監督に見つかり賀川は即刻帰京を命じられた。責任をとってうなだれる国分の姿は壬生には敗北的にみえた。数日後の納会の日、ねぎらいの言葉を残して席をたった国分を追った部員の前に、胴を着け、竹刀を抱えて絶命している国分の姿があった。通夜の日、恵理は、賀川に語った事実は嘘だと告白した。

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映画レビュー

3.5 三島由紀夫の分身の物語

2025年10月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2025年は三島由紀夫生誕100年ということで、東京国際映画祭でも三島関連作品が数本上映されることに。一番の注目はポール・シュレイダー監督の「MISHIMA」の日本初上映だったのですが、残念ながらチケット発売日当日、専用サイトが混みあっているうちに売り切れに。そんな訳でもう1本観ようと思っていた本作「剣」を観に行って来ました。

主演は「眠狂四郎」シリーズで有名な市川雷蔵で、大学の剣道部主将である国分を演じていました。同じ”剣客物”ではあるものの、当然偃月殺法は登場しません。4年生になった国分は監督やOBの推薦で主将に選任されるものの、剣道一筋、純粋無垢、純潔を絵に描いたような人物で、剣道の腕は誰もが認めるものの、その性格は好き嫌いが分かれるタイプでした。国分と同級生にしてライバルの賀川(川津祐介)は、国分とは対照的にそこそこの遊び人。剣道では国分に敵わないし、国分の一徹さを嫌っている部分もあるものの、彼に対する友情とか憧れのようなものも持ち合わせている複雑な心境の模様。そんな賀川は、国分を”普通の男”にすることで自分と同じ土俵に立たせようと”ハニートラップ”を画策。付き合いのある同窓生の伊丹恵理(藤由紀子)と二人きりにさせることで、国分が”普通の男”か試す訳ですが、果たして国分は…
後半は夏合宿が舞台。海岸に近いお寺で合宿をする剣道部。”That's 体育会”とも言うべき猛練習を経て、国分にそこまで心酔していない部員にも自信が漲ってきたところで、賀川が禁止されていた海水浴に部員たちを連れ出し、物語は一気にクライマックスの悲劇に向かうという流れでした。

観終わって思ったのは、三島由紀夫の遺作となった「豊饒の海」の第2巻「奔馬」と通底する物語だったということ。剣道を舞台にしていることをはじめ、純粋無垢な青年を主人公にしていること、最終的にその純粋無垢ゆえに、環境に対応できなくなった主人公が自ら命を断つことなど、共通点がかなりありました。いずれにしても、本作の国分、そして「奔馬」の主人公・飯沼勲は、三島由紀夫自身の分身であるのだろうと思わざるを得ないところでした。

俳優陣ですが、やはり市川雷蔵がカッコ良く、それだけでも観に行って良かったと思わせるものでした。ハニートラップを仕掛ける伊丹恵理を演じた藤由紀子も、非常に魅力的でした。

そんな訳で、本作の評価は★3.6とします。

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鶏

3.5 藤由紀子は田宮二郎の妻

2025年2月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

2025年2月7日
映画 #剣 (1964年)鑑賞

大学剣道部主将の #市川雷蔵 はひたすら剣の世界に打ち込む。同級生の #川津祐介 は厳しい主将の考えに反発し合宿中に部員を誘って禁じられている海水浴に出かけたところ自殺しちゃいます

ストイックも度を越すとね

これが #三島由紀夫 の美学なんだろうな

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とし

2.5 大映4K映画祭

2024年7月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

市川雷蔵主演の白黒映画。
時代劇だと思って見に行ったら違ってた。
とある大学の剣道部での話。
真面目過ぎる主将が市川雷蔵演じる主人公。
今の感覚で見てしまうと、どうしても古いツマラナイ映画と感じてしまう。
この主人公の性格を成り立たせるには戦時中の話にでもしないとダメじゃないかなと思った。。
調べてみたら、作られたのは1964年なので戦争が終わって19年後。
当時の人達はどんな思いでこの映画を見ていたんだろう?
まだ戦争の記憶が色濃く残っていたと思うから、主人公の行動にも共感できたのかな。
もっと武士道精神とか、大和魂的なところを絡めてたら見てて納得できたかもしれない。

骨盤体操のイメージが強い川津祐介が出ていた。
めっちゃ若い顔だけど面影が強くて分かった。
劇中での彼の役を考えてみても、自分の行動が原因であんなことになったら一生トラウマが残ってしまう。
普通には生きていけない。。

衝撃のラストでした。
でも、どうしても似た感じの話があったよなって思ってしまう。。
ある程度の映画の本数を見てしまうと仕方の無い事なんだろうけど。。

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はりー・ばーんず

3.0 重厚な雰囲気の緊張感のある映画

2021年7月22日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

多くが大学の道場の撮影で剣道シーンは迫力があった。
通常、部員たちとのいざこざ、部活動以外で「遊び」「事件」がありそうなものであるが、多少出てくる程度で大きな展開にはならない。
あくまでも主人公の強く張り詰めた「志」と、ストイックな性格が映画全体を覆っている。
主人公の内面、弱音や強さは、言葉では表現されていないので、結末は意外であった。

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MJoe