けものみち

劇場公開日:1965年9月5日

解説

松本清張の同名小説を、「大根と人参」の白坂依志夫と「君も出世ができる」の須川栄三が共同で脚色、須川栄三が監督した推理もの。撮影は「自動車泥棒」の福沢康道。

1965年製作/140分/日本
原題または英題:Beast Alley
配給:東宝
劇場公開日:1965年9月5日

あらすじ

中風で寝たきりの夫寛次を、女中勤めで養っている成沢民子は、客のホテル支配人小滝に誘われ、事故死をよそおい、夫の寛次を焼き殺した。そして民子は翌日、小滝の紹介で弁護士秦野と共に鬼頭洪太の邸を訪れた。中風で身体の不自由な老人鬼頭の世話をするため民子は選ばれたのだ。金にまかせた華美な生活、民子は鬼頭に身体をまかせながら、いつか小滝が忘れられない人となった。一方焼死事件に不審を抱いた警視庁捜査一課の久恒刑事は、当日現場付近に民子らしい女がいたことを聞きこみながら、民子のアリバイを崩せず、次第に民子の美しさに職業を逸脱したみだらな行為を迫るのだった。久恒の調査で、鬼頭は元満州浪人で、戦後莫大な金を手にし、政治を裏から動かし、右翼団体を握っている人物であり秦野とは、かつて鬼頭のもとで働いていた鉱夫の偽名で、本物の弁護士秦野は満州で行方不明となっていた。また小滝は左翼くずれで、満州から古美術を盗み秦野らに近づいて、一つのラインを形成していることが判明した。その頃政界では、ある殺人事件にまきこれた高速道路公団総裁香川が辞職し、新しい総裁が椅子についた。鬼頭のさしがねであることは当然ながら、確証がつかめず久恒はいらだった。だが鬼頭の手は久恒のうえにものびた。知りすぎた久恒は退職を勧告され呆然とした。そして数日後、久恒は鬼頭の用心棒黒部に殺害された。事件は複雑な人間関係を見せた頃、鬼頭が死亡、通夜の鬼頭邸で秦野が殺害された。民子は今さらながら、自分の置かれた立場に恐怖を感じた。小滝を訪ねた民子は、ある安宿に逢瀬を楽しんだが、入浴中、不意に乱入した黒部の手で石油をかぶり火だるまとなって死んだ。だがその黒部も、浴室の戸をいち早く閉めてニヒルな笑いを浮かべる小滝の策に、自ら滅んでゆくのだった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

監督
須川栄三
脚色
白坂依志夫
須川栄三
原作
松本清張
製作
藤本真澄
金子正且
撮影
福沢康道
美術
村木与四郎
音楽
武満徹
録音
伴利也
整音
下永尚
照明
石井長四郎
編集
黒岩義民
製作担当者
島田武治
助監督
西村潔
スチール
石月美徳
合成
三瓶一信
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映画レビュー

4.5成沢民子を演じるのは池内淳子氏。 本作ではヌードも辞さない体当たり演技を披露。

2025年5月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

興奮

神保町シアターさんにて特集企画『横溝正史と松本清張――映画で味わう至高のミステリー対決』(2025年5月3日~30日)開催中。
本日は『張込み』『黒い画集 ある遭難』『けものみち』の松本清張作品3作をはしご鑑賞。

『けものみち』(1965年/150分)
TVドラマ化も3度された松本清張氏の代表作。
戦後日本の政治・経済・裏社会の権力争いの渦中に巻き込まれつつも、自分の女としての価値に目覚め、男たちを手玉にとる主人公・成沢民子の生涯を描いた内容。
登場人物も当時実在した陰のフィクサーや場所、事柄をモデルに描かれており、山崎豊子作品のように切り込んでいます。

成沢民子を演じるのは池内淳子氏。
世代的にはホームドラマでの快活なお母さん役のイメージが強いですが、本作ではヌードも辞さない体当たり演技を披露。眉毛の描き方はじめメイクにも拘泥しながら、貞淑な女から徐々に悪女への変貌を上手く演じきっていますね。
松本清張作品は『霧の旗』『ゼロの焦点』『疑惑』『天城越え』など女性の情念を描く作品が多く、新人女優が本格派にステップアップする際にチャレンジ、何度もリメイクされる事由も分かりますね。

陰のフィクサー役は、これ以上の配役は思い当たらない小沢栄太郎氏、伊藤雄之助氏。
民子を虜にする謎の二枚目支配人を池部良氏、出世欲と民子に魅了され坂道を転がり落ちる刑事を小林桂樹氏とこちらも豪華。
『ウルトラマン』(1966)のハヤタ隊員役を演じる前の黒部進氏の悪役もインパクト十分ですが、幼少時代に観ていたら、ショックを受けていたでしょうね。

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矢萩久登

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