くれないものがたり
劇場公開日:1992年6月13日
解説
紅葉の古都・京都を舞台に、業を背負いながら堕ちていく男と女の姿を描く。赤江瀑原作『千夜恋草』の映画化で、脚本・監督は「MISTY(1991)」の池田敏春(脚本の竹橋民也は池田のペンネーム)。撮影は田口晴久がそれぞれ担当。
1992年製作/90分/日本
配給:パイオニアLDC
劇場公開日:1992年6月13日
ストーリー
北海道から修学旅行に訪れた高校生の法靖が、初めて香の匂いを聞いたのは、友人達と行ったストリップ劇場の舞台だった。SMショーの中で薫かれた香の匂いに酔ってしまった法靖は、河原でひと休みしたあと、ふと目にした観光地図の照葉寺という名前に魅かれ、ひとりでその寺に赴く。紅葉に包まれたその寺には盲目の男・春治と和服の女・耀子がひっそりと香を薫いていた。香の匂いに包まれた耀子の妖艶な美しさに惹かれる法靖。その香はストリップ劇場で薫いていた香と同じだった。だが、その匂いを聞いた法靖は気を失ってしまう。やがて寺から遠く離れた場所で目覚めた法靖は、自分の太腿に鞭で打たれた傷があるのに気づく。翌日、劇場の楽屋を訪ねた法靖は、ステージで香を薫いていた秋伍の手引で春治が主催する香席に座ることになる。秋伍は春治の実兄でバクチに手を出したばかりに香の世界から追放されたのだった。耀子は法靖が来てくれたことを喜び、その夜彼を照葉寺へ誘い、激しく愛し合う。そこで聞かされる耀子と春治の素性。春治を盲目にしたのは耀子であり、彼女はその罪をつぐなおうと、春治に付き添っていたのだ。だが、やがて香の世界にのめりこんでいった春治は性的不能となり、若い男の鞭打つ音にしか反応しなくなってしまった。法靖の太腿の傷は、春治の持つ睡りの香の匂いに酔わされてつけられたものだった。異常な愛欲の世界から耀子を救い出そうとあせる法靖。秋伍は、法靖が聞いた睡りの香の正体が“蘭侍”と呼ばれる幻の香であることに気付いていた。そして蘭侍欲しさから、秋伍は耀子を誘い、春治を殺害する。しかしその直後、耀子は秋伍をも亡き者にした。何も知らない法靖は、再び耀子と愛しあうが、翌朝彼女は一人、湖に身を沈めるのだった。