君よ憤怒の河を渉れ

劇場公開日:

解説

無実の罪を着せられた現職の検事が、執拗な刑事の追跡をかわしながら真犯人を追っていくアクション映画。原作は西村寿行の同名小説。脚本は「金環蝕」の田坂啓、監督は脚本も執筆している「新幹線大爆破」の佐藤純彌、撮影は「金環蝕」の小林節雄がそれぞれ担当。

1976年製作/151分/日本
配給:松竹

ストーリー

東京地検検事・杜丘冬人は、ある日、新宿の雑踏の中で、見知らぬ女から「強盗殺人犯」と騒がれた。水沢恵子と名乗る彼女は、なおも「現金20万円とダイヤの指輪を盗まれ、強姦された」と叫んだ。その場で緊急逮捕された杜丘を、別の男寺田俊明が「この男にカメラを盗まれた」と供述した。勿論、杜丘には身に覚えのないことだったが、証拠が揃いすぎていた。完壁な罠だ。杜丘は、家宅捜査の隙をみて逃亡した。新聞は“現職検事が凶悪犯”“社丘検事即日免職”と書きたてた。杜丘は水沢恵子を捜しに彼女の郷里、能登へ向かった。恵子は本名を横路加代といい、寺田は彼女の夫の横路敬二と判明した。だが、その時にはすでに加代は殺されていた。杜丘は、加代あての手紙から、横路敬二が、北海道の様似に居ることを知り、北海道に飛んだ。杜丘の逮捕状は「強盗犯」から「横路加代殺人容疑」にきりかえられた。その頃、警視庁捜査一課の矢村警部は、横路の経歴を洗い、彼がモルモットやハツカネズミを飼育し、製薬会社の実験用に売りさばいていたことをつきとめたが、杜丘との関係はでてこなかった。北海道様似で、杜丘は横路の家を見つけたが、そこには刑事が待ちうけており、杜丘は警察の手を逃れて、日高山中の林の中に逃げ込んだ。だが、その杜丘を、散弾銃を待った二人の男が追って来た。逃げる杜丘はある事件を回想した--。ホテルのレストランから飛び降り、即死した朝倉代議士。証人である政界の黒幕・長岡了介は飛び降り自殺だと言い、矢村警部は自殺説を主張し、杜丘は他殺説をとった。あの日、杜丘は朝倉の妾が経営している新宿の小料理屋に聞き込みに行った。そして、横路加代がいきなり--。矢村の追跡は執拗だった。その非常線を突破して、深い森の中に入り込んだ杜丘は、獣の罠に仕掛けてあった銃をとりはずした。その時、巨大な熊が、若く美しい女にいましも襲いかかろうとしていた。熊めがけて発砲した杜丘だが、その瞬間、銃も杜丘もはねとばされ、激流に落ちた。翌日、杜丘は、遠波牧場の寝室のベッドで目を覚ました。昨日、熊に襲われそうになった牧場の娘、真由美が、今度は杜丘を救ったのだった。真由美の父、遠波善紀は北海道知事選に立候補中だったので、一人娘が杜丘に好意をよせているのに困惑していた。が、彼の秘書の中山が警察に通報した。真由美は杜丘を奥深い山の中の小屋にかくまった。しかし、食料を運ぶところを矢村に尾けられ、杜丘は逮捕された。その時、いつかの熊が三人を襲い、矢村が負傷した。杜丘と真由美は矢村を介抱したが、気がついた矢村がなおも杜丘を逮捕しようとしたので、杜丘は再び逃げた。岩場の穴に逃げ込んだ杜丘と真由美は二人の愛を誓い合った。一方、遠波は、娘のために知事選をあきらめ、杜丘を逃がす決心をした。牧場の周囲は警察が包囲しているため、自家用セスナ機を杜丘に提供した。操縦のできない杜丘だが、命を賭けた。止めるようにと絶叫する真由美を後にセスナは本州へと飛びたった。セスナは東京付近の海岸に着水し、杜丘は、警察の裏をかいて東京に潜入した。その頃、真由美も牧場の仕事で東京に来ており、杜丘が新宿で警察に包囲されていた時、馬を暴走させ杜丘を救出した。やがて、杜丘は横路が何者かに強制収容された精神病院に患者を偽って潜入。長岡了介が院長・堂塔に命じて、秘かに新薬の生体実験をしているのをつきとめた。やがて院長は自殺。今では杜丘に協力している矢村とともに杜丘は、長岡を射ち殺した。そして、検事に復職するように、と言う伊藤検事正に「二度と人を追う立ち場にはなりたくない」といって断わり、真由美とともに去って行くのだった。

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映画レビュー

3.5高倉健、逃走中♪

2020年12月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

青山八郎によるサントラ曲「白いサスペンス」の破壊力!

無実の罪を着せらた高倉健の悲壮な逃亡劇にかぶせるにはあまりにも牧歌的で、良テンポ。文字で表すなら、「高倉健、逃走中!」が、「高倉健、逃走中♪」になる感じ。映画音楽の影響力を逆の意味でここまで思い知ることになるとは。

ただ、最初は何じゃこりゃ!と腰が砕けたこの曲、二度三度と繰り返されるうちにどうにも愛らしくなってくる。作品自体が何でもアリの自由な雰囲気なので、このサントラもありだなと寛容の精神が湧いてきて、しまいにはその魅力に取り憑かれてしまった。

ミスマッチな音楽は良くも悪くも作品の味として刻まれ、この映画を唯一無二のものにしている。この先、人生の苦境に立たされたら「白いサスペンス」を脳内再生して乗り切ろうと思う。

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オスカーノユクエ

5.0はじめて乗ったセスナ機で北海道日高地方から鹿島灘まで逃亡するとか、 詐病で精神病院に入院するとか、 終盤で政界の黒幕を独断で射殺する警察官とか、 それ以外にもつっこみどころが多過ぎる異色映画。

2022年12月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

興奮

萌える

動画配信で映画「君よ憤怒の河を渉れ」を見た。

劇場公開日:1976年2月11日

高倉健45才
原田芳雄36才
池部良58才
中野良子26才
大滝秀治51才
西村晃53才
岡田英次56才
倍賞美津子30才
伊佐山ひろ子24才
田中邦衛44才
阿藤快30才
佐藤純彌監督44才
西村寿行原作46才
永田雅一製作70才

この映画は1979年に中国で『追捕』というタイトルで公開され、文化大革命後に初めて公開された外国映画となった。公開は無実の罪で連行される主人公の姿と、文化大革命での理不尽な扱いを受けた中国人自身の姿を重ね合わせた観客の共感を呼び、映画は大変な人気を博した。中国での観客動員数は8億人に達したとされ、高倉健や中野良子は中国でも人気俳優となった。田中邦衛は中国においては「北の国から」の黒板五郎役よりも本作の横路敬二役で知られている。

また、後に佐藤純彌は『未完の対局』、『空海』、『敦煌』を中国で撮影し、高倉健は、今作品により高倉のファンとなった張芸謀監督の『単騎、千里を走る。』で主役を演じた。

呉宇森監督で福山雅治が出演しているリメイク版、
「マンハント(2018年)」は見たことがあった。
こっちの方をぜひ見てみたかった。

製作の永田雅一に関しては興味深いエピソードが多数あるが、
ここでは書けない。

映画冒頭から挿入歌「孤独の逃亡」がかかる。
なんだか調子外れな感じで居心地が悪い歌だと思う。

また、劇中でも意味不明のおかしなBGMが何回も挿入される。
そっちの方もむしろ無い方がいいような気がする。

映画は伊佐山ひろ子が
「強盗の犯人を捕まえて!」と叫ぶ声ではじまる。

警察官が向かうとそこには街角の公衆電話を使っている高倉健。
証言だけで何の証拠もないのに逮捕され連行される高倉健。

高圧的な私服刑事、原田芳雄が登場。

取調中の部屋に田中邦衛が証人として現れる。
「こいつがカメラを盗んだ犯人です!」と叫んだ。

一体どういう話なんだと困惑してしまった。

2つの事件に関して何ら身に覚えのない高倉健は自宅マンションの窓から逃亡する。

自らの身の潔白を証明するために北海道に向かった高倉健はそこで美しい女性、中野良子とその父、大滝秀治と出会う。

ここから高倉健は、政界の黒幕(西村晃)、精神病院の院長(岡田英次)、製薬会社の重役(酒井義広)を追い詰めていく。

高倉健に助けられ、その後は彼に献身的に尽くす中野良子が魅力的。

はじめて乗ったセスナ機で北海道日高地方から鹿島灘まで逃亡するとか、
詐病で精神病院に入院するとか、
終盤で政界の黒幕を独断で射殺する警察官とか、

それ以外にもつっこみどころが多過ぎる異色映画。

お芝居だし、
楽しめたのでこれでいいと思う。

満足度は5点満点で5点☆☆☆☆☆です。

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ドン・チャック

2.5グイグイ推進する勢いはあるが杜撰大味大雑把な上、音楽も酷かった・・・

2022年3月27日
PCから投稿

最初の内はミスマッチにもほどがある変てこな音楽や、着ぐるみのヒグマなどに苦笑失笑おお笑いしていたが、素人のセスナ操縦に至っては口をあんぐり・・・・。もうどうでもいい心境にさせられる。
ミステリーの謎解きも脚本的にはともかく、映像表現と演出的に稚拙杜撰な感じは拭えず、ラストクライマックスの〝正当防衛”場面においては無感情の不感症になっていた。

とはいえ、序盤だけでも楽しめたのだからそれで十分という気持ちも。

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resuwisshu311

2.5ダーヤラー、ダヤララー

2022年1月10日
iPhoneアプリから投稿

オープニングテーマから転けそうになるが、時折入ってくるピクニックモードの間奏が笑いを誘う。中国で大ヒットして、彼の地で高倉健や中野良子をスターにした映画と聞いていたが、ストーリーは各所で破綻しており、突っ込みどころが多数、ラストの短絡的な展開に唖然とする。不自然な動きをするエキストラや都合よく出没する熊のような猛獣を目にすると、この出来で世に出せた時代を感じてしまう。そこで濡れ場いるか?倍賞美津子の下着姿や中野良子の替え玉ヌードといった目の肥やし的なサービスに、やたらと銃口を向ける人たち、いきなりセスナを操縦するニュータイプぶりを発揮する高倉健、その後どうしたのか新宿西口を暴走する暴れ馬の群れなど、粗野で下品で雑な感じが味でもある。
ラストの都心の空撮で超高層が少ないこと。元大映社長の永田雅一氏の経歴に思わず見入ってしまう。

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Kj
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