KAMIKAZE TAXI

劇場公開日:

解説

組に反旗を翻した若いチンピラと、彼と逃亡を共にするペルー育ちの日系人との交流を描くロードムーヴィー。『復讐の天使/KAMIKAZE TAXI』のタイトルでOV作品として既に発売されていながら、スクリーン上映を望む多くのリクエストに応え、劇場公開となった。監督・脚本は「ペインテッド・デザート」の原田眞人。撮影は「家なき子(1994)」の阪本善尚が担当している。主演は「極東黒社会」の役所広司と、「平成無責任一家 東京デラックス」の高橋和也。ミッキー・カーチスが本作でキネマ旬報助演男優賞を受賞している。東京国際ファンタスティック映画祭'94正式出品作品。95年度キネマ旬報ベストテン第8位。(R指定)

1995年製作/169分/R/日本
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:1995年4月29日

ストーリー

悪徳政治家・土門の女の世話係になったチンピラ・達男は、自分の恋人・レンコと彼女の知り合いのタマを派遣する。しかし、SM趣味の土門にタマは重症を負ってしまい、そのことを組長・亜仁丸に抗議したレンコは、無残にも殺されてしまう。最愛のレンコを失った達男は激怒。土門に復讐を誓い、土門の寝室に隠されているという金を盗む計画を、テキヤ仲間と実行するのだった。一旦は成功したかに見えたその計画も、しかしすぐに亜仁丸の知るところとなり、達男は一夜にして自分の所属していた組から追われる身となってしまった。テキヤ仲間を殺され、一人逃亡を続ける達男は、夜明けの埼玉山中で一人の男と出会う。不思議な雰囲気を持ったその男は寒竹一将というペルー育ちの日系人で、“そよかぜタクシー”の運転手だった。達男はそのタクシーを拾って、一路伊豆へと走らせる。当初、お互いを怪しんでいた二人だったが、長い道のりの中、次第に心を開いていった。伊豆には、達男の母親の墓があり、いつか立派な墓を建ててやるという夢を持っていた達男は、盗んだ金でそれを実現させようとしていた。しかし、もう少しのところで亜仁丸の部下・石田に見つかってしまった達男は、所持していたピストルで石田を射殺して、再び寒竹のタクシーで逃げるのだった。達男は、レンコやテキヤ仲間を殺した亜仁丸にその標的を変え、彼を倒すために東京へ戻る。決死の覚悟で事務所を襲った達男だったが、亜仁丸は不在で計画は失敗。たまたま事務所にいたタマとともに寒竹のタクシーに戻った達男は、三たび逃亡の旅に出発する。ひとまず温泉地に落ち着いた三人は、そこで自己開発セミナーを体験し、その後で、達男とタマは寒竹の父にまつわる忌まわしい話を聞く。より一層絆を深めていく三人であったが、地方の組織の者に発見されてしまい、四たび逃亡の生活が始まる。亜仁丸が都内のバーで趣味のサックスの演奏をしているとの情報を得た達男は、単身そのバーへ乗り込んで行く。しかし、亜仁丸を射程に捕えたその瞬間、亜仁丸のボディガードによって反対に射殺されてしまうのだった。残された寒竹は達男が残した金を貰って、一度はペルーへ帰る決心をするが、グリンガを殺せなかった自分の過去を達男の無念に重ね、遺志を継ぐことを決意。一人で土門の邸宅へ乗り込んで行った。ボディガードらを次々に倒し、土門の寝室に押し入った寒竹は、その男がかつて自分の父親がいたカミカゼ特攻隊の元上官だったことを知る。恐怖心をそぐためのシャブをやらなかったことで、特攻出来なかった寒竹の父を卑怯者呼ばわりする土門は、その息子に何が出来るかと寒竹をも罵る。そして、寒竹が隙を見せた一瞬、土門は彼の上に飛びかかった。だがその時、一陣のカミカゼが土門を吹き飛ばし、彼を死に至らしめる。さらに寒竹は屋敷を訪れた亜仁丸も倒し、ふたつの復讐を遂げるのだった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

映画レビュー

4.0風と竹

2024年4月21日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

楽しい

怖い

 組と癒着している政治家土門に、女を世話していた達男。しかし女が怪我を負わされ、それに抗議した達男の愛人が組長の亜仁丸に殺される。達男は仇を取るために、仲間と土門から大金をせしめる。しかし仲間は組により殺され、達男は追われる。逃走途中、達男はペルー育ちの日本人である寒竹のタクシーに乗り込み。
 OV作品だったが、リクエストにより劇場公開なったとのこと。確かに中盤まではOV作品の雰囲気でしたが、終盤がぜん面白くなりました。こういう日本人がいたのかもしれません。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
sironabe

2.02人の特攻隊

2022年2月19日
Androidアプリから投稿

なんとなく政治色強めに感じるが、ロードムービーとしては普通に面白い。
ただ、ラストの神風は微妙だったかな。暴風雨の中で襲撃してればああいう風が吹くかもしれないが、無風からのあれは流石に神がかり過ぎかな。それが良いのかもしれないけど。
終わり方はけっこう好きかも。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
カミムラ

3.0センデロルミノソ

2021年11月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

途中から舞台に立ち上がる社会的なテーマが強すぎて、ヤクザのどんぱちや強奪がショボくなる。片岡礼子は可愛いが、どうしてこの女はいるのか、そばに座っているお飾りに過ぎずいなくてもよかっただろう。

ミッキーカーチスも最初はよかったが、登場がすくなく、空気が軽すぎた。サックス吹いてなんじゃいな。奇妙な関係の矢島健一の出番、そっくりそのままミッキーカーチスとの攻防丁寧にかくかたちでもええんちゃうかなと、もっとミッキーが表現するところをみたかった。
コンドルは飛んでいくみたいな音色の楽曲はよかった。染谷将太風の高橋和也。ミッキーカーチス56歳、まだ殺気ある

コメントする (0件)
共感した! 0件)
filmpelonpa

4.0バブルによって日本人は変わってしまった

2020年4月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1995年公開
本作冒頭でその前年が日本の政治的混乱について紹介している
何故その映像が始まるのだろうか?
本作もまたバブルをテーマにした映画であるからだろう
自民党が初めて下野した細川政権の誕生と、その金まみれの汚職による崩壊もまたバブルが産んだ産物であったと今から見れば良く分かる
バブルの徒花は日本の精神を蝕んでしまったのは間違いない

上から下まで日本人全てがバブルによって舞い上がり精神の深いところまでが汚染された
その頃に日本人は何か変質してしまったのではないのか?

そして海外で育った日本に戻ってきた日本人のほうが日本人の精神を保っていたのでは無いのか?
冒頭で差別されていると説明される日系人達の方が、日本人らしい日本人なのではないのか

これが本作のメッセージであり、テーマであったと思う

右翼的政治家、ヤクザ
極めて日本的な存在であるはずのものが、バブルを経たのち、彼等が日本人に見えなくなっている

政治家は金にまみれている
ゴルフ場で新しいヤクザの担当が韓国語を解するのか試したりするのだ
彼の屋敷も極めて日本的だ
しかし中身は嘘で塗り固められた人間だ
恐らく日本人ですらないのかもしれない

ヤクザはビジネス化しており戦前のヤクザの世界とは切り離され、会長はジャズを愛好してサックスをクラブで演奏する程だ

1995年の少し前だったか、千葉県のある巨大物流センターを視察したことある
各所に掲示してある表示板が日本語と英語でないどこかの言語で書かれていた
何語なのか質問すると、ポルトガル語だという
その物流センターではブラジルの日系人達が多数働いていたのだ
バブルの好況による極度の人手不足が、このような光景を既に生み出していたのだ

東京の居酒屋で注文を取りに来た半纏を着た若い店員が日本語を話せずエキゾチックな顔立ちで、日系人だったり外国人であることに気付かされ驚いたのもこの頃が初めてだった
いまでは当たり前の光景だ

本作では日本の美しい光景を意識して撮影している

その中で寒竹は本当の日本人らしさを示していくのだ

神風タクシーとはかってスピード違反上等のタクシーのことをそう呼んだそうだ
寒竹のタクシーの社名はそよかぜタクシーだ
そして神風特攻隊、ペルーの猛烈な季節風と絡みあわせて物語を紡ぎ出し、テーマを持たせただけでなく、それを娯楽作品として面白く成立させている
監督のその技量はものすごい力だ

ラストシーンにはカタルシスまであるのだ
朝日の逆光の中に佇む寒竹は侍の姿そのものだ

ケーナの音は尺八に似ている
異なる風土で奏でる曲調はまるで異なっていても、寒竹の吹くケーナは侍が尺八を吹くのと変わりはしないのだ

紛れもない傑作なのは間違いない

コメントする (0件)
共感した! 0件)
あき240