悲しき口笛
劇場公開日:1949年10月24日
解説
「お嬢さん乾杯!」「花の素顔」の小出孝の製作で、竹田敏彦の原作を「緑なき島」の清島長利が脚色し、「若き血は燃えて」の家城巳代治の監督第二回作品である。キャメラは「オオ!!市民諸君」の西川亨の担当である。出演者は「海の野獣」「花の素顔」の菅井一郎「彼女は答える」の津島恵子、「踊る龍宮城」の美空ひばり「象を喰つた連中」の原保美の他、徳大寺伸、神田隆らがそれぞれ助演する。
1949年製作/84分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1949年10月24日
ストーリー
横浜桜木町には風太郎といわれる自中労働者が群がり、浮浪児たちと一緒にあっちこっちに散在していた。田中健三は駅前にぼんやりやってきたが、一人の妹ミツコを探すためであった。彼は最近外地から復員してきたばかりで、帰ってみれば家も焼けミツコの行方も分らなくなっていた。健三は以前音楽に志し、ミツコのために「悲しき口笛」という歌を作って戦地に出て行った。今こうなってみるとその歌が唯一のミツコを探すツナであった。そのころミツコはやはり風太郎と一緒に浮浪の生活をしていたのであった。健三は分けも分からなくなってぶらりぶらりと、あるビヤホールで無銭飲食をしたあげく、用心棒にさんざんたたかれたがこの時ビヤホールの一女性に救われた。たしかその名は京子といった。この様子をみたある商事会社の吉村が、健三の男を買って代金を払ってくれた上、いずこともなく自動車で連れ去ってしまった、一方京子は父親と二人きりの生活で、家とは名のみのボロ倉庫の中で暮していた。父は往昔の夢去らず、バイオリンを片手に幻想の曲を追っていたが、ほとんど収入の道はなかった。それでも楽団の仲間を尋ねあるいたが、ジャズのリズムの中にどうしても飛び入ることが出来ない性分であった。ところがある日ふとしたことから浮浪児のミツコが京子達の生活に仲間入りすることになった。それからというものは三人の生活が始まったが、父の修は飲んだこともない酒のために眼がつぶれてしまった。心配したビヤホールの店主安田は見舞いにきて、京子にあるアルバイトを世話するからといって多額の金をおいて行った。ミツコはミツコで歌の上手なのに自信をつけて風太郎の仲間をたよって歌を歌っては少しばかりの薬代を得ていた。このいじらしい姿をみて京子は安田の仕事に赴いたが、いつぞや健三を救った吉村を一味とする密輸団の仕事であった。驚いた京子は逃げようとしたが逃げられず、船底に監禁されてしまったが、何時か京子が救った健三に偶然に救われ、漸く難を脱し健三の友人山口の家に二人で逃げのびた、ところが京子が家を出たまま帰らぬのあまり一寸した失敗のため父の修は家を焼いてしまって、ミツコと二人で京子を尋ねあるいた。京子は病気が全快するとすぐ家にもどったが家はなく、あっちこっちを探し歩るいたが、ビヤホールにミツコの姿を見つけた、とたんに密輸団の一味のものに押えられてしまう、しかし健三が自首したため間もなく一味は捕えられてしまった。数日後釈放になった健三は京子を尋ねた。そしてそこにミツコがいることに驚き且つ喜んで四人はしばらくの間声も出なかった。相模湖畔に楽しげに行く、健三、京子、老人の手を引くミツコ、そして山口夫妻の姿が「悲しき口笛」の合唱とともに明るく躍動していた。