火宅の人

劇場公開日:

解説

家庭を捨て、新劇女優と同棲するなど、自由奔放な作家の生き方を描く。檀一雄原作の同名小説の映画化で、脚本は「逆噴射家族」の神波史男と「上海バンスキング(1984)」の深作欣二の共同執筆。監督は深作欣二、撮影は「夜叉」の木村大作がそれぞれ担当。主題歌は、嵯峨美子(「火宅の人」)。

1986年製作/132分/日本
原題または英題:House on Fire
配給:東映
劇場公開日:1986年4月12日

ストーリー

作家、桂一雄は、最初の妻リツ子に死なれ、後妻としてヨリ子をもらった。ヨリ子は腹ちがいの一郎をはじめ、次郎、弥太、フミ子、サト子と5人の子供を育ててきた。昭和31年、夏、一雄は新劇女優、矢島恵子と事をおこした。8年前の秋、彼女が知人の紹介状を持って訪ねて来て以来、その率直さに心魅かれていたのだ。恵子はその後、一雄の忙しい時に原稿の清書を手伝ったりしていた。26年に「長恨歌」で直木賞を受けた一雄は、受賞の喜びよりも恵子の嬉しげな笑顔の方が、心に残る。だが、指一本触れたことがなかった。そんな時、一雄の身辺に凶事が重なった。一昨年の夏は、奥秩父で落石に遭い助骨3本を骨折。昨年の夏は、次郎が日本脳炎にかかり、言葉も手足も麻痺してしまう。そして今年の夏。一雄は太宰治の文学碑の除幕式に参列するための青森行に、恵子を誘ってしまった。ヨリ子は次郎の事があってから、怪しげな宗教の力にすがるようになっていた。一雄はある局面に向って走り出した。40年前、一雄の母は、神経衰弱の父と幼い妹二人を残して、年下の大学生と駆けおちしたのである。青森から帰った一雄から、全てを打ち明けられたヨリ子は、翌日家出した。一週間すぎても連絡はない。一雄は若々しい恵子との情事のとりこになっていった。ある嵐の夜、ヨリ子は一生、次郎と子供たちのために生きる覚悟を決めたと戻ってきた。入れ替わりに一雄は家を出、浅草の小さなアパートで恵子と新しい生活をはじめる。一郎がそのアパートに空巣に入るという騒ぎ、恵子が某怪人物に溺愛されているとの噂に、嫉妬に狂った一雄が京都公演中におしかける事件などの後、恵子が妊娠した。堕胎を決意した彼女は、一雄に同行を求めるが、彼にはそんな時間の余裕はなかった。その夜、二人は派手な喧嘩をした。逃げるように東京を離れた一雄は、五島列島行の連絡船にとび乗った。彼はそこで、京都で怪我をした時介抱してくれた女性、葉子に再会した。義父に犯された暗い過去を持つ彼女は、10年ぶりに里帰りしたのだ。葉子は、あてのない一雄の旅の道連れとなったが、クリスマスの夜、求婚されていた華僑への返事を、これ以上のばせないと一人で旅立って行った。東京へ戻り、久々に正月を家族と過ごすことになった一雄のもとに、次郎の死が知らされる。次郎の葬儀の日、恵子から一雄の荷物が届けられた。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第10回 日本アカデミー賞(1987年)

受賞

作品賞  
監督賞 深作欣二
脚本賞 神波史男 深作健太
主演男優賞 緒形拳
主演女優賞 いしだあゆみ
助演女優賞 原田美枝子
音楽賞 井上堯之

ノミネート

主演女優賞 松坂慶子
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映画レビュー

3.5この時代だからか…

2020年10月18日
iPhoneアプリから投稿

悲しい

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うーさん

4.0文芸エンターテイメント

2020年3月4日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

檀一雄原作・深作欣二監督86年。

70年代に実録ヤクザ映画で一時代を築いた深作監督は、80年代にはオールスター映画や文芸大作に抜擢されることが多く、今考えるとそれは違うだろうという方向性なのだが(90年代にまたバイオレント映画で気を吐くのを見れば明らか)今作はどうか。

面白い!無頼派の原作を上手く自身の得意なエンタメに引き寄せ、役者の魅力を引き出し、見どころもちゃんと作ってる。
大雨の中いきなり家に帰ってくる妻のシーン。愛人と悶着し部屋で大暴れする一連のシーン。どれも見事ですわ。
緒形拳のリアリティある優柔不断さ、ズルさ、弱さの演技が素晴らしい。原田美枝子・松坂慶子のおしみの無い裸体良し。しかし最後はいしだあゆみがさらってしまう。

正直深みはないが、文芸エンターテイメントとして完成度の高い作品でした。

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散歩男

4.0いしだあゆみの演じる妻と子供達の母は、自分を置いて消えない母だと確信できたとき物語は完結するのです

2019年10月22日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

深作欣二監督ながら、今村昌平監督作品のような味わいがありました
もちろん単に緒形拳が九州弁で登場するからではありません
これほど男と女の心情のひだを繊細に撮れる監督だったのです
抒情的なシーンも美しく心を打ちました

無茶苦茶な男です
登場する女性は全て泣くシーンがあるのです
しかし観終わった時に残されているのは、主人公への共感と感動だったのです

男は無意識に自分にとっての理想の母を求めるものです
子供にとってではなく、自分にとっての理想の母を、実は女性に求めているものなのです

母とは、子供が何をしても無限に許してくれる存在なのです

そうして主人公に限らず男は誰しも母が消えて無くなるかもしれない不安を打ち消す為に、つい女性を試めしてしまうものなのです

次郎が日本脳炎に罹患した時、男は妻が子供に取られると確信し、彼女に逃げられる前に、自ら先に逃げ出したのです
というより無理にでも逃げるように仕向けたのです
戻ってきたならまた、逃げるように努力したのです
冒頭で語られた彼の子供の時代のトラウマがそうさせるのです

そして両親に見捨てられているのかも知れないと次郎がその病状の中で理解した時に起こした行動に彼はようやく自分が何をしていたのかに初めて思い至ったのです
次郎がやったことは自分がやっていることと同じなのです

そして石神井公園のラストシーン
いしだあゆみの演じる妻であり、同時に子供達の母は、自分を置いて決して消えない母だと彼が確信できたとき、この物語は完結するのです

私には物凄い共感があり、納得と得心のいく結末でした
彼が彼女から逃避しようと焦燥する不安は雲散霧消したのです

あなたが女性なら、この妻のような男の愛し方をできるのでしょうか?

あなたのなさること、わたし何でもわかるんです
そして笑顔

完敗だ、この女の深い愛にはもうかなわない
お釈迦様の手のひらから逃れられない孫悟空みたいなものだ

男に、心の奥の奥まで自分という女性に依存していたことを、本当に自分が愛していたのは誰なのかを心の底から、男に言葉でなく理解させたのです

その様な男の愛し方を、あなたはできますか?

自転車で走り去るいしだあゆみの笑顔の力は、それほどの、男の疑心を完膚なきまで破壊する力を持つものでした
映画「駅station」で彼女が冒頭の鉄道での別れのシーンで見せた笑顔のおどけた敬礼にも匹敵する破壊力でした
それほどの強烈な印象を残す素晴らしいラストシーンもそうないのではないでしょうか

なるほど日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめ数々の賞を総なめにするのも当然です

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あき240

4.0いしだあゆみの奥さんが面白い。

2019年6月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

いしだあゆみの奥さんが面白い。

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もーさん