貸間あり
劇場公開日:1959年6月2日
解説
井伏鱒二の原作を、「グラマ島の誘惑」の川島雄三と「海から来た男」の共同執筆者・藤本義一が脚色し、川島雄三が自ら監督したコメディ。撮影は「愛情不動」の岡崎宏三。
1959年製作/112分/日本
原題または英題:Room to Let
配給:東宝
劇場公開日:1959年6月2日
ストーリー
大阪のある町の風変りなアパート屋敷の住人たちの物語である。二階に陣取る与田五郎は四カ国語に通じ、小説、論文、翻訳の代作引受け業とコンニャク製造、キャベツ巻の大家である。根が善良単純なため、彼に恋心を抱く同宿人の津山ユミ子を怒らせたり、遂にはチャッカリ学生江藤の罠にかかり、九州まで連れ出されて大学受験の替玉をやらされる。彼の親友がこの士地で温泉旅館をやっているのを知り、五郎は漸く己の生業をこの旅館に求めた。しかし、アパート屋敷からユミ子が跡を追って来るという知らせに、五郎はあわてて逃げ出す始末だ。ユミ子は青春を陶芸一筋に打ち込む三十娘で、生来の勝気故に五郎との恋が実を結ばない。が、隣室の洋さんから五郎の気持を聞き、九州へ五郎を追跡する。洋さんは五郎の元上官、奇癖に貸間札をつることがある。お千代さんの送別会、ユミ子と五郎の取持ちと大活躍する好人物である。お千代さんは恋人との結婚費用を稼ぐため、アパートを根城に旦那三人を交替制でたらい廻ししている相当な人物だ。このお千代を脅迫しては五郎にとっちめられているハラ作は猥セツ物チンレツ容疑で刑事に追われている。洋酒ブローカーの島ヤスヨは権田を情夫に持ちながらちょいちょい五郎に色目を使う絶倫ぶり。だが密売で挙げられた。この屋敷の持主は独り暮しの御隠居さん。不老長寿、強壮ゼリーの薬に飛びついたり俗気十分である。奥の間に住む古物商の宝珍堂もこの愛用者でゼリーを密かにヘソに塗ってはいるが、効目なく若い女房に悲鳴をあげている。この屋敷の賄い一切を引受けているのがおミノ婆さん、お千代から記念に貰ったテレビを止宿人たちに観せて銭を取ろうという勇ましい婆さんである。このように変り物の集団のキテレツな生活にも春が来て、冬が訪れる。人間の品位、仮面などをさらりと捨てた男女の物語ではある。