鬼婆
劇場公開日:1964年11月21日
解説
「母(1963)」の新藤兼人がシナリオを執筆、監督した民話もの。撮影もコンビの黒田清巳。
1964年製作/103分/日本
原題または英題:Onibaba
配給:東宝
劇場公開日:1964年11月21日
ストーリー
時は南北朝、戦乱にふみにじられた民衆は飢え、都は荒廃し民は流亡した。芒ケ源に鬼女が住むと噂されたのもその頃である。芒ケ原に二人の女が棲んでいた。中年の女と、その息子の嫁は、芒ケ原に流れてくる落武者を殺し、武具類を奪っては武器商人の牛に売って生活を支えていた。それは戦争に男手をとられた彼女たちの唯一の生活手段であった。或る夜、若い男八が戦場から帰り、中年の女の息子が死んだと告げた。この話は二人の女にとって打撃であった。若い女は、今迄耐えていたものを、八の小屋で逢びきを重ねてまぎらわした。中年の女は、働き手を奪われる怖れと、嫉妬から、嫁をひきとめようとしたが効き目がなかった。ある夜、芒ケ原に六尺豊かな敗将が迷い込んだ。鬼の面をつけた敗将に道案内をこわれた中年女は、敗将を芒ケ原の大穴に突き落してその鬼面を奪った。芒ケ原に鬼が出没し始めた。若い女は恐怖にかられたが、八に逢いたいばかりに芒ケ原をひた走った。八に逢った女は小屋に戻って土間にうずくまる異様なものに気づいた。見れば鬼である。仰天する女に、「この面をはがしてくれ!」と哀願する声は、義母の声だ。鬼の正体は義母だったのだ。夜毎芒ケ源でおびやかされた恨みに勝ちほこる若い女は、男と会うことを許すという条件で、鬼面をはがしにかかった。しかし、面はぴたりと顔についてビクともせず、中年の女は悲鳴を上げた。木槌をとって面をたたく若い女の手の下を、血が流れていった。ようやくはがした面の下から、義母の顔が鬼の顔となって現われた。若い女は顔を見るなり義母の手を振りきると、狂気のように逃げていった。とれたとれた!と喜こぶ義母は、わけもわからず若い女のあとを追った。血のしたたる中年女は鬼婆となって芒ケ原を横ぎっていった。