越後つついし親不知

劇場公開日:

解説

水上勉の同名小説を「関東無宿」の八木保太郎が脚色「武士道残酷物語」の今井正が監督した文芸もの。撮影は中尾駿一郎。

1964年製作/112分/日本
原題または英題:A Story from Echigo
配給:東映
劇場公開日:1964年5月9日

ストーリー

伏見大和屋酒造の杜氏は、遠く越後杜氏であった。日支事変の始った昭和十二年、瀬神留吉と佐分権助の二人は、農閑期を利用して出かせぎにきていた。留吉はおとなしい真面目な働き者で、年が明けると杜氏の大将格である船頭に抜擢されることになっていた。権助は評判の美しい嫁をもち、昇進もする留吉をねたんでいた。留吉より一足先に故郷に帰った権助は、留吉の兄伊助から、シベリア時代に女を抱いた話を聞くと、家への帰り道留吉の嫁おしんに慾情をそそられ、火葬場でおしんを犯した。この時からおしんには夫留吉や姑に言えぬ苦しみができた。一方留吉は、大和屋で年間を通して一番の働き者と表彰されたが、心ない権助の作り話に、おしんがコモ買人佐藤と関係していると聞かされ、痛飲するようになった。越後では、おしんが、権助の子を身ごもっていた。人の目につくことを恐れたおしんは、日夜子供をおろすことに心をくだいたが、とうとうそのままで夫留吉を迎える日がきた。三月親不知に帰って来た留吉は、佐藤とのことを問い詰めたがおしんの澄んだ目に愚しい疑いを恥じた。夫婦仲は、人がうらやむばかりであった。ある日おしんの妊娠を知った留吉は、大喜びだったが、産婆から妊娠したのは十二月だと知らされた留吉は十二月には、伏見に居り、あの権助が帰郷していたことを思い出した。激しい怒りに身をふるわす留吉。ついに水田で、おしんに問詰めると泥の中におしんを倒していた。近くの炭小屋の中、美しい白ろうのような死顔をみせるおしんを、留吉はいつまでもいとおしんだ。やがておしんの身体を蟻がむしばむ頃、おしんの死体をかまどの中に入れると、留吉は下山した。折りしも出征兵士として送られる権助を見た留吉は、権助をかき抱くと、谷底へと身を投げた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0ネクロフィリア

2020年7月11日
PCから投稿

昔、営業車で聴くラジオ番組で、いちばん楽しかったのが小沢昭一の小沢昭一的こころだった。スクリプトとお話小沢昭一、お囃子山本直純。と毎回言う。
老年の諧謔と煩悩と哀愁があった。毎回「~の心なのだ」で締めくくった。毎回、笑った。なつかしい。だが、小沢昭一が俳優をやっていた時代を知らない。

Netflixで観たアースクエイクバード(2019)という映画に佐久間良子が出ていた。わたしの世代よりずっと昔の人だが、とても珍しい人を見た気がした。今は平幹二朗との間の息子、平岳大が、同Netflix提供、BBCが製作したドラマGiri/Hajiに出演している時代である。
基本舞台の人のようで、テレビや映画には消極的だが、外国人に埋もれない立派な体躯をしていた。サラブレッドを感じる俳優である。

お姫さん女優でスタートした佐久間良子は、じっさいもお嬢さんのように育ってきた──らしい。品のいい顔立ちで、若い時分の未通女風を想像するのはたやすい。その良家の子女な見栄えが、東映の制作陣の性欲に火を付けた。東映のヤクザやポルノへ傾向と平行して、次第に翻弄されたり凌辱されたりの役へ傾向したようだ。
よく知らないが、この映画を昔観たことがあった。

風変わりな映画でよく覚えている。過失によって妻(佐久間良子)を死なせてしまった夫(小沢昭一)が、その屍体を温存しておくという話──ではないが、そこしか覚えていない。実相寺昭雄のようなカウンターカルチャーの映画ではないのに、エキセントリックな描写をしていた。

屍体を素っ裸に剥いてムシロに包んで、冷えないように焚火で暖める。夫は、妻が死んだことを認めることができず、一種の錯乱状態に陥っているわけだが、映画の狙いは当然エロだった。ただし屍姦を直接描写できるほど現代ではない。むしょうにたんたんとしたナレーションが「恐れていたことがおこった、彼女の体が腐敗しはじめたのである」とか何とか言って、ようやく焼却にする。
映画が旧さや白黒によって、描写が寡ない分、刺激された想像力はすさまじかった。

そのまことに気の毒な役で、佐久間良子をよく覚えていた。気の毒とは、役の上の気の毒さ、というより、女優として、東映の方針に翻弄された気の毒さである。前段で三國連太郎演じる粗暴な男に犯されたりもする。制作陣の性欲をもろにぶつける日本の伝統的Abused Womanを体現した暗い映画だった。

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津次郎

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