駅/STATION

劇場公開日:

解説

オリンピックの射撃選手であり、警察官でもある一人の男と、事件を通して彼の心を通り過ぎていく女たちを描く。脚本は「冬の華」の倉本聰、監督は「仕掛人梅安」の降旗康男、撮影は「復活の日」の木村大作がそれぞれ担当。

1981年製作/132分/日本
原題または英題:Station
配給:東宝
劇場公開日:1981年11月7日

ストーリー

--1967年1月 直子-- その日、警察官の英次は雪の降り続く銭函駅ホームで、妻の直子と、四歳になる息子義高に別れを告げた。離婚を承諾した直子は、動き出した汽車の中で、英次に笑って敬礼するが、その目には涙が溢れていた。苛酷な仕事と、オリンピックの射撃選手に選ばれ合宿生活が続いていたことも原因であった。その頃、英次の上司、相馬が連続警察官射殺犯“指名22号”に射殺された。中川警視の「お前には日本人全ての期待がわかっている」との言葉に、犯人を追跡したい英次の願いは聞き入れられなかった。テレビが東京オリンピック三位の円谷幸吉の自殺を報じていた。「これ以上走れない……」英次にその気持が痛いほどわかった。 --1976年6月 すず子-- 英次の妹、冬子が、愛する義二とではなく、伯父の勧めた見合の相手と結婚した。英次は、妹の心にとまどいを覚え、義二は結婚式の夜に荒れた。その頃、英次はオリンピック強化コーチのかたわら、赤いミニスカートの女だけを狙う通り魔を追っていた。増毛駅前の風侍食堂につとめる吉松すず子の兄、五郎が犯人として浮かんだ。すず子を尾行する英次のもとへ、コーチ解任の知らせが届いた。スパルタ訓練に耐えられなくなった選手たちの造反によるものだ。すず子はチンピラの雪夫の子を堕すが、彼を好きだった。しかし、雪夫にとって、すず子は欲望のハケロでしかなく、英次が警察官と知ると協力を申し出た。雪夫は結婚を口実にすず子を口説いた。すず子は、刑事たちの張り込みに気づいていながらも、愛する雪夫を兄に会わせたく、隠れている町へ案内した。そして、英次の前に吉松が現れたとき、すず子の悲鳴がこだました。 --1979年12月 桐子-- 英次のもとに旭川刑務所の吉松五郎から、刑の執行を知らせる手紙が届いた。四年の間、差し入れを続けていた英次への感謝の手紙でもあった。英次は故郷の雄冬に帰ろうと、連絡船の出る増毛駅に降りた。風待食堂では相変らず、すず子が働いていた。雪夫は結婚したらしく、妻と子を連れてすず子の前を通り過ぎて行く。舟の欠航で所在無い英次は、赤提灯「桐子」に入った。女手一つで切り盛りする桐子の店だが、三十日なのに客も来ない。テレビでは八代亜紀の「舟唄」が流れている。「この唄好きなのよ」と桐子は咳いた。自分と同じく孤独の影を背負う桐子に、いつしか惹かれる英次。大晦日、二人は留萌で映画を観た。肩を寄せ合って歩く二人が結ばれるのに時間はかからなかった。英次は、初詣の道陰で桐子を見つめる一人の男に気づく。英次が雄冬に帰りついたのは、元旦も終ろうとしている頃だ。そこで、十三年ぶりに電話をかけて直子の声を聞いた。池袋のバーでホステスをしているという。雄冬の帰り、桐子は、札幌へ帰る英次を見送りに来ていた。その時、“指名22号”のタレ込みがあり、英次は増毛に戻った。手配写真と、桐子を見つめていた男の顔が英次の頭の中でダブル。桐子のアパートで22号は、英次の拳銃で撃ち殺された。警察に通報しながら22号をかくまっていた桐子。札幌に戻る前、英次は桐子を訪ねた。英次に背を向け「舟唄」を聞き入る彼女の顔に涙が流れている。英次は気づかない。英次は札幌行きの列車に乗った。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

監督
脚本
倉本聰
製作
田中壽一
撮影
木村大作
美術
樋口幸男
音楽
宇崎竜童
録音
田中信行
照明
望月英樹
編集
小川信夫
製作担当
徳増俊郎
助監督
山下賢章
スチール
石月美徳
殺陣
宇仁貫三
題字
益川進
製作協力
田中プロモーション
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受賞歴

第5回 日本アカデミー賞(1982年)

受賞

作品賞  
脚本賞 倉本聰
主演男優賞 高倉健
音楽賞 宇崎竜童

ノミネート

監督賞 降旗康男
主演女優賞 倍賞千恵子
助演男優賞 宇崎竜童
助演女優賞 いしだあゆみ
助演女優賞 烏丸せつこ
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(C)1981 東宝

映画レビュー

4.0人と人はめぐり会う、駅に停車する列車のように・・・‼️

2024年12月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、DVD/BD

泣ける

悲しい

幸せ

倉本聰が高倉健さんのために脚本を書き、降旗康男が監督した作品‼️この作品の健さんは刑事‼️しかも任務のためにオリンピックに出場できなかった射撃の名手の刑事‼️彼の11年に及ぶ人生模様‼️彼は妻のいしだあゆみさんと別れ、犯人の妹の烏丸せつこさんと出会い、居酒屋で倍賞千恵子さんと語り合う・・・‼️北海道の様々な駅、雪、居酒屋、そして流れる曲は八代亜紀さんの「舟唄」と、日本人にはたまらない映画ですね‼️その素晴らしい情緒とわびさびの美学‼️この作品以降、健さんと降旗監督のコンビ作が連作されるわけですが、良い意味でも悪い意味でも健さんの "不器用で誠実なだけのキャラ" が確立された作品だと思います‼️

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活動写真愛好家

4.0“熱いの一本!”に、友との語り合いが最大の酒の肴だった昔のことをしみじみと…

2024年11月19日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

この11月は高倉健の没10年 ということもあり、 彼の映画やドキュメンタリー番組を たくさん目にしていたので、 TV放映分のこの作品を再鑑賞した。 久々に観てみると、 個人の犯罪と国家の裁き、 裁いた相手への心の在り方、 そして、孤独と家庭への希求、 等々、色々な要素が散りばめられた作品 のように感じた。 そんな中、 特に主人公と居酒屋の女将のシーンでの “熱いの一本!” にしみじみと昔のことが思い出された。 私が学生時代に通っていた居酒屋では、 置いてあるお酒は、銘柄の明示の無い 日本酒と焼酎とビールくらい。 だから日本酒の注文の場合は 熱燗か冷やを言うだけだったし、 手頃な僅かなつまみだけで、 ただただ出される徳利を倒しながら 飲むばかりだった。 多分に、友との語り合いが 最大の酒の肴だったのかも知れない。 この映画の中での 語りの無いような語りの二人のシーンが 色々と考えさせる。 居酒屋のメニューに留まらず、 バリエーション豊かな世界が 果たして人間にとって 本当に幸せをもたらすものなのか、 そんなこともしみじみ考えながら 八代亜紀の“舟唄”に耳をそばだてた。

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KENZO一級建築士事務所

4.5健さんと、北海道の雪

2024年11月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

健さんは大好きだが、健さん映画は何か健さんを神格化し過ぎて 心なしか敬遠してしまう、健さんが晩年に近づくにつれて。 この映画も期待せずに見たが、予想してたよりは、楽しめた。 この頃の健さんは年齢的にも円熟みが出てる、その健さんを見れるだけで、 価値がある。それに雪。 理屈や道理ではどうしようもない人の情けなさも、雪が優しく包んでくれる。 倍賞美津子の役は、もっと、悪女だが根はいい女をリアルに演じられる女優のが 良かったかな、素人意見です。

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藤崎敬太

5.0健さんもう没後10年

2024年11月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

真面目に寡黙に生きる程に、関わる人間の哀しみが自身に積み重なっていくような健さんの演技に心震えました。 やっぱり健さんはかっこいい。 思いやりがあって、真っ直ぐで、不器用すぎる! 烏丸せつ子さん、可愛かった-

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トトラ