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クローネンバーグ監督なのに、こじんまりまとまった、そこそこ洒落たマフィアのお話でして、最初、見はじめた時「あれ?本当にクローネンバーグかな?」と思ったりしました。でも、冒頭の理髪店で首をナイフでざっくり切るところやら、5本指をザクザク切ってしまうところなどは、やはりグロのポイントを押さえてました。銃ではなくて、ナイフを大胆に使うところが恐ろしく、悲鳴を上げるような痛さが伝わってきます。
ロシアンマフィアがイギリスにどうして存在するのか?、よくわかりませんでしたが、そのファミリーの雇われ運転手のニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)が、バイクの故障で立ち往生したアンナを車で送って行くことになります。このニコライが悪人なのか善人なのかわからず、最初ははらはらします。
ロンドンの風景は全体的に寂しく、物語は決して明るくはなく、マフィアに徹したストーリーでもありませんが、登場人物はそれぞれ個性があり、見応えがありました。ヴィゴ・モーテンセンは危険な香りがするのに、奥に優しさを秘めており、ストーリーの鍵を握ってました。ナオミ・ワッツのバイクにまたがる姿もかっこよかった。
大衆浴場の場面はすごかったです。ヴィゴ・モーテンセンが素っ裸のところを襲撃され身体を張った演技でした。おそらく、ベッドを共にしない限りお目にかかることはないだろう大切なものも、ちらりちらりと。役者って本当に大変なんだなあと実感しました。(キリルの代わりに、殺られそうになるだろうなあと予想はしてましたが)
セミオンは最初はいいお爺さんぽかったのに、マフィアのボスでした。14歳の少女をレイプしたということですが、ちょっと年が離れすぎで無理があるように思い、イメージが湧きませんでした。
クローネンバーグ監督の『危険なメソッド』というフロイトとユングの関係を描いた映画があるのですが、その映画もクローネンバーグにしては、おとなしくて普通ぽかったです。その作品にも、ヴィゴ・モーテンセンとヴァンサン・カッセルが出ておりました。(ヴァンサン・カッセルも個性派なので一度観たら忘れない風貌ですね)
クローネンバーグって、いろんなスタイルの映画をさらっと作れる人なのもしれない!(『スキャナーズ』シリーズ、『ビデオドローム』『ザ・フライ』などのちょっとヘンな?映画のイメージがあったのですが)