イースタン・プロミス
劇場公開日 2008年6月14日
解説
「ヒストリー・オブ・バイオレンス」のビゴ・モーテンセン&デビッド・クローネンバーグ監督が、ロンドンを根城に暗躍するロシアンマフィアの犯罪を描いたサスペンスドラマ。病院で助産婦をしているアンナ(ワッツ)は、駆け込み出産をして死んでしまった少女が持っていたロシア語の日記を手がかりに少女の身元を探し始める。だが、彼女が辿り着いたのはロシアンマフィアによる人身売買、売春の実態だった……。共演にナオミ・ワッツ、バンサン・カッセル、アーミン・ミューラー=スタール。
2007年製作/100分/R18+/イギリス・カナダ・アメリカ合作
原題:Eastern Promises
配給:日活
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ビゴモーテンセンのハマり役。その佇まいがヤバい。無造作に指を処分する。素手どころか全裸でも敵を倒す。その男、凶暴。バカ息子のバンサンカッセルの情緒不安定な目、ゴッドファーザー・アーミンミュラースタールの一見柔和な表情、その世界が表現されている。ホラーな演出は好みではないが、銃によらないナイフでの格闘も悪くない。
終盤の展開はどうも納まりが悪い。ナオミワッツの伯父を助けるほど彼女に惚れ込む流れでもない。取り立てられたビゴがさらに上を目指す下剋上的な動機かと思ったがそれは外れた。潜入捜査という展開はその説明になっているが、であれば、哀れな14歳の恨みを晴らして欲しく、そこがまるまるカットだと不満が残る。必殺仕事人でも遠山の金さんでも良いが、ベタに徹底的に悪を葬って欲しかった。最後のキスシーンからラストショットへの流れは、ストイックさから遠ざかる展開で、ビゴの魅力を減じたように思える。
2019年2月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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主人公たちはロシア語と英語のチャンポンだし、一体ここはどこ?と、飛び込み鑑賞だったため異国の地に放り出されたような心境となりました。おまけにチェチェン人やらグルジア人やらが登場して、ヨーロッパの国名が飛び交っている。ようやく、ロシアン・マフィアが暗躍するイギリス版『ゴッドファーザー』の雰囲気になると、この映画の趣旨がわかってきた・・・
クローネンバーグ作品の印象といえば、変態チックで難解ではあるけど、人間の鬱屈した本性を見せられている気分になって、結局のめり込んでしまう。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』ではさらに社会派要素まで加わって一級のサスペンスにもなっていた。首を切るというおぞましい描写、どこまで主人公のモーテンセンを落としてくれるのかと別の意味でドキドキしていたら、なんとクライマックスではサウナでの全裸格闘シーンというサプライズを持ってきた・・・
興味深い点は、ロシアのヤクザはナイフしか使わないこと。そして、刺青で悪の経歴がわかり、身元も推し量ることができること。ヤクザが履歴書を書くわけにもいかず、「黙って俺の体を見ろってんだ!」と言わんばかりにパスポート感覚で彫りまくっている。これも見事な伏線とはなっていました。
アカデミー賞等にモーテンセンがノミネートされるほど俳優陣の演技は良かった。せっかく“法の泥棒”のファミリーとして認められたのに、結局は裏切られるという裏社会の非人道的なところも重々しく、映像よりもそのストーリーにノックアウトされる。だけど、「実は潜入捜査官だった」というどんでん返しは想定内だったし、その後の展開もハッピーエンドに向かわせたいのか破滅へと導きたいのかさっぱりわからない。あの赤ん坊にしても、クリスチーヌなのかどうかはわからないのだ。とにかく、潜入捜査官である必要性が全くない映画なのに・・・さては策に溺れてしまったか。
2016年11月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ロシア系移民の父を持つイギリス人女性Anna。助産師として働く彼女が、女児を出産後死亡した少女の身元を探る過程で、ロシアンマフィアと接触することになります。
"Eastern"とはイギリスから見た東欧、主にロシアを意味しています(監督談)。登場する"vory v zakone" (thieves-in-law) は実在する組織とのこと。ロシア人だけでなく、チェチェン人にトルコ人と、Londonの闇に根を張る東欧諸国の犯罪組織が描かれています。
"Eastern Promises"を=人身売買と訳しているのは日本語だけのようです。恐らく直接そういった意味はないと思います。"Fry's Turkish Delight"というお菓子の、60's以降の英国版CMは、"Full of eastern promise"という言葉と共に、ちょっと「オトナの」お菓子というイメージで作られています。"Eastern"という言葉に、エキゾチックでミステリアス、危険な甘い香り的な意味合いを込めていたのだと思います。
イギリスに拠点を置くマフィアにとって、東欧の少女達は魅力的な資源。寒々しい東欧の母国で少女達が夢見た、果たされない約束。
主人公Nikolaiの本心はどこにあるのか。どうやって良心を保っているのか。彼の辿った人生は全て身体に彫られたタトゥーにより一目で分かるのに、中身は誰にも分からない。大変魅力的に演じられていました。
最初から最後まで釘付けの作品でした。
追記
本作を生涯ベストとする中東欧系アメリカ人(文学/言語学者の卵)も、タイトルを人身売買という意味では捉えていませんでした。
2014年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
物語は普通に面白いです。自分の正体を隠しただ一人マフィアに潜入して戦う姿がかっこようですね。その理由が、いわゆるきれいごとばかりの正義ではなく、また誰かの復讐のためではなく、むしろそれは己のため。その辺が自分にとって斬新でした。
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