踊りが禁じられたバロック時代(?)の小国。それでも踊りが大好きな王女オーロラ姫と、姉の踊りにいつもうっとりしながら見ている弟ソラル王子。一見平和そうな王国ではあったが、干ばつと洪水のため財政難に陥っていたのだ。王の側近はとんでもない策略家。「税金を上げるか」「他国との戦争をするか」「王女を政略結婚させるか」という選択肢で王に忠言するが、平和を愛する王は泣く泣く可愛いオーロラ姫の結婚相手を探すことに同意する。
主人公のオーロラ(マルゴ・シャトリエ)はまだバレエ学校に入ったばかりの16歳ですが、周りには本物エトワールのニコラ・ル・リッシェなどで固められ、踊りに関しては圧倒されます。ストーリーはリアル指向の宮廷ものから一転してファンタジー映画となるところも面白いし、結婚相手を探すための舞踏会がとても面白い。ベリーダンスのような踊りを披露する中東(?)の国、明らかに日本を表現しているジパンゴ王国は白塗りの舞踏集団、などなど。その出し物を見たオーロラが舞踏会に参加できない弟のために踊りをコピーして見せてあげるところも素敵なのです。
王妃毒殺計画や、軍事クーデターのようなおぞましい部分は直接描写を避け、あくまで優雅で美しい部分で魅了される。ドレスの胸の部分から剣を抜くようにして脱ぎ、さっとバレエ用の衣装に切り替わるシーンには毎回ドキリとさせられるというオッサン的鑑賞になりました。なぜいきなり踊り出すのか・・・ミュージカル映画に慣れているので歌が踊りに変わっただけだと思えばなんともないし、いきなりファンタジーになる展開だって伏線が効いていたので気にならなかった。
しかし、『エトワール』というドキュメンタリー映画を撮った監督だけに、やはりストーリーで魅せるまでには至らない。童話のような内容の脚本には割り切って臨めば平気なのですが、終盤の急展開は寛容な気持ちで鑑賞するほうがいいのかもしれません。
【2007年4月映画館にて】